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公益財団法人やまなし産業支援機構

https://www.yiso.or.jp/

〒400-0055 山梨県甲府市大津町2192-8

055-243-1888

公益財団法人やまなし産業支援機構 手塚伸|山梨の中小企業の未来、SDGsへの対応

サステナブルな取り組み SDGsの取り組み
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やまなし産業支援機構

山梨県には、産業用ロボット製造企業「ファナック株式会社」や、半導体製造装置メーカー「東京エレクトロン株式会社」など、高い世界シェアを誇るグローバル企業の裾野の広いサプライチェーンが存在します。これらの精密機械・機器製造技術が集積する山梨の中小企業・スタートアップ企業をハンズオン(伴走)支援するのが、公益財団法人やまなし産業支援機構です。理事長を務めている手塚伸さんは組織の役割を、中小企業の「伴走者」と言います。産学官金の連携ネットワークの形成から、SDGsやカーボンニュートラルに対する地域企業の取り組み支援など、山梨の新たな産業振興の在り方を追求し続ける手塚さんに、山梨の産業振興の現状と課題、今後の展望を伺いました。

悩める中小企業の伴走者でありたい

――

公益財団法人やまなし産業支援機構のミッションをお伺いします。

手塚

当機構は、山梨県の中小企業が抱える様々な課題解決に黒子役として伴走支援していくことを目的にしています。例えば事業を進める際に技術力や市場への売り込み方などにお困りであれば、その方面に詳しい専門家を紹介する。お金より人的支援です。特に近年は課題が複雑化・重層化して当機構だけでは解決できなくなっていますから、金融機関や商工会議所、商工会、県などに協力を求め、課題に応じた最適フォーメーションを組成して適切な人材を配置し、課題を解決できるまで伴走する仕組みを用意しています。

山梨には世界的企業のサプライチェーンが存在、中小企業は柔軟性を発揮して独自のポジションの確立を

――

山梨県の産業構造における中小企業のポジションについてはどうお考えでしょうか。

手塚

山梨県の産業の大きな特徴は、ファナック株式会社や東京エレクトロン株式会社などに関連する裾野の広い中小企業のサプライヤーが存在し、太いサプライチェーンを形成していることです。この中で、中小企業は大企業からの要求を受けるだけではなく、相当数の企業が、当社にはこういう技術があるからこれを使えばもっと良くなる、と提案できる関係を築いています。それをこれからも太くしていければよいと思います。

ただ中小企業の成長モデルは今後、転換していく必要があると考えています。これまでの成長モデルではいずれは中堅~大企業になる目標を持っていたと思います。しかし中堅大手になればサービスや商品を供給していく中でリスクマネジメントに注力していかねばなりませんし、そこにかかる人員や費用も膨大になってくる。ですから中小企業は中堅大手の持つ販売網やマーケティング能力、市場形成力などと連携し、その中で自社の柔軟性を発揮して技術を提供していくモデルを目指すのも1つの道だと思います。中核部品を作れる技術を提供し大企業と共に最終商品を作っていく立ち位置、対話型OEMやODM型の企業として進んでいくことも、これからの日本の中小企業の姿ではないでしょうか。

医療・ヘルスケア機器分野に活路、半導体・ロボット・精密加工技術と高い親和性

――

今後、山梨県の産業はどのように展開していくことが理想なのでしょうか。

手塚

1つは医療・ヘルスケア機器分野に力を入れることです。今後も高齢化が進むことが想定されますから、医療・ヘルスケア機器分野は堅調に伸びていくでしょう。特に山梨県下に多い半導体関連企業やロボット産業、生産機械産業の持つ精密加工の技術は医療・ヘルスケア機器産業と親和性があります。こうした産業から現在の医療・ヘルスケア機器の精度を飛躍的に高めることができるパーツやシステムが生み出されれば、産業の大きな発展に繋がるでしょう。現在、当機構内には長崎幸太郎山梨県知事の最重要施策であるメディカル・デバイス・コリドー推進センターが設置され、医療・ヘルスケア機器産業の振興を進めています。

また半導体産業については、これからも世界で需要が高まっていくでしょう。現在日本の半導体メーカーは世界の中で相対的な地位が低下し、政府は半導体立国再建戦略を考えていますが、そもそも、製造装置と共に関連製品を検査する装置がないと最終製品を作れません。その点山梨県には、半導体の製造装置や検査装置のサプライヤーが非常に多い。私たちとしては、こうした今後も成長が見込まれる産業を強く支援していかなければならないと考えています。

他にもカーボンニュートラル時代を見越して、水素燃料電池関連産業なども需要が伸びてくるでしょうから、こちらにも注目しています。

山梨県甲府市からの富士山の眺め
山梨県に高い世界シェアを誇るグローバル企業の裾野の広いサプライチェーンが存在する

最新の情報集積拠点を探索、企業間交流から新事業への展開に繋げる

――

それらの課題の中で、御組織はどのように関わっていくのでしょうか。

手塚

今までも大手企業と中小企業が交流する企業内展示会などを行ってきましたが、これからは例えば、自動車部品工業会など大手企業などとの複合的なネットワークを持つ組織とのマッチング会を開催することや、ビヨンドコロナを照準にした新たな展示会への参加費用の支援などが考えられます。

それらの企業間の交流からは新しい事業が生まれる可能性が高いことから、常にアンテナを高く立てて、情報の集まる場所を紹介していくことが私たちの責務だと考えています。

SDGsとカーボンニュートラルは連動、ローカライズして企業を先導

――

現在、世界的にSDGsが注目され各企業が対応に苦慮しています。特に今はヨーロッパを中心としたゲームのルール作り・デファクト作りの時代ですから、数年後には企業を取り巻く環境は大きく変化するでしょう。この変化の時代に中小企業はどのように歩んでいくべきなのでしょうか。

手塚

SDGsとカーボンニュートラルはある意味連動しています。基準づくりという側面から考えると、現在はヨーロッパが主導していますが、いずれアメリカや中国も前面に出てくるでしょう。

カーボンニュートラルでは温室効果ガスの捕捉を、サプライチェーン排出量をスコープ1、2、3に分類し計算しています。スコープ1は自社における燃料の燃焼や工業プロセスの排出量など、スコープ2は他社から供給された部品・商材に係る電気及び熱などに関する排出量です。少し前まではここまでの削減努力でことが足りていました。しかし今日では、スコープ3即ち、取引先における排出量、製品の仕様、輸送、廃棄などの末端の排出量まで含めていかなければなりません。

留意すべきは、今後はそれらの情報を開示しないと市場で評価されない時代になっていく。そうなるとサプライチェーンの中心にある企業は、サプライチェーンに連なる他の企業に対して「これを守ってくれないと近い将来取引を止めざるを得ない」と迫る話も出てくる恐れがある……。

SDGsに関しても、もちろん対応していかなければならないことですが、とはいえこれは国連が全世界に向けて定めたレギュレーションですので、私は各国や各地域で解釈をしていいと考えています。アメリカでこうしているから日本でもこうすべき、ではなくその地域なりのレギュレーションを示し、民間も公的機関も守っていくようにするのが重要でしょう。そしてこうしたレギュレーションを理解し、地域と企業が進みやすい方向へと案内するのも当機構の役目の1つだと思っています。

世界に類を見ない長寿企業大国・日本、山梨は「信用」でステークホルダーを結ぶ文化が根付く

――

日本は世界的にも類を見ないほど100年継続している企業が多い国ですが、それらの経営者さんにお話を聞くとSDGsへの取り組みは既にしてきている、と言われることもあります。

手塚

日本の多くの企業には江戸時代の商工業者から引き継ぐ経営理念が息づいています。今、一部にみられるような利益のみを優先する経営方針は戦後に生まれた、たかだか70年程度のもの。それ以前の日本的経営の大きな柱は、大事なことは家業を残すことではなくまず「信用」を残すことだった。息子が事業に対する適性を欠いているなら養子をとってでも会社を継続させることに苦心するのは、継続してよいものを造ることが何よりの信用になるからです。お客様により良い商品やサービスを提供していくために経営を継続していく。信用でステークホルダーを結ぶことが日本の企業文化であり、100年続く経営理念のバックボーンだと思います。山梨県の中小企業にはそれが深く根付いています。

――

最後に、山梨県の企業へのメッセージをお願いします。

手塚

長年現場を見ていて、他にはない確かな技術を持った企業が山梨県にはたくさんあると実感しています。当機構の役割はその技術をさらに高度化し、地域に伝えるお手伝いをすることです。もしまだ形になっていないアイデアがあったら、事業計画などなくても是非相談にお越しください。

また、これから特に中小企業は時代の変化に対応していく中で様々な課題に直面すると思います。100年続く企業も最初から必ずしも順風満帆だったわけではありませんし、また今の時代、必ずしも拡大を続けなければならないわけでもありません。常に挑戦する、そして変化に柔軟に対応できる良さをもって仕事を続けていただきたいと思います。

公益財団法人やまなし産業支援機構 理事長 手塚伸さん

◎プロフィール
手塚伸。1959年、山梨県甲府市生まれ。大学卒業後山梨県庁に入庁し、主に地域計画や地域産業計画に従事。2020年4月より現職。また山梨県立大学の特任教授として学生や社会人の指導も行っている。

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ライター:

1980年千葉県生まれ 筑波大学大学院博士課程中退(台湾留学経験有り)。専門は中国近代政治外交史。その他、F1、アイドル、プロレス、ガンダムなどのジャンルに幅広く執筆。特にガンダムに関しては『機動戦士Vガンダム』blu-ray Box封入ブックレットのキャラクター・メカニック設定解説を執筆(藤津亮太氏と共著)。

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