
「福岡県内で10名以上が、カンボジアで行方不明になっているらしい――」
SNS上で突如として広まり始めた、にわかには信じがたい噂。しかし現在、RKB毎日放送や朝日新聞などの報道により、これが単なる都市伝説ではなく、恐るべき現実であることが次々と裏付けられ始めている。過去2年間で、福岡県内在住の20代〜30代の若者約10人が、カンボジアに渡航したのち消息を絶っているのだ。
彼らは一体、どこへ消えたのか。その背後には、想像を絶する国際犯罪組織の影が潜んでいた。
「会社の経費で旅行代を出す」 途絶えた位置情報
多数のメディアが報じた昨年12月のケースは、あまりにも典型的な手口だった。福岡県在住の20代男子大学生は、「2泊3日で旅行に行く」と家族に告げて出国した。行き先はアジアの近隣国だったはずだが、同行したアルバイト先の友人がSNSで知り合った人物から「会社の経費で旅行代を負担する」と持ちかけられていたという。
家族と共有していたスマートフォンの位置情報は、予定の国への到着を一度は告げたものの、翌日にはなぜかカンボジアを指し示していた。その後、国内を転々と移動したのち、GPSは完全に沈黙。LINEも既読にならないまま、現在も音信不通が続いている。「とにかく無事で帰ってきてほしい」という母親の悲痛な願いだけが虚しく響く。
SNSで横行する「月30万円のバイト」「無料の海外旅行」といった甘い誘い。それに釣られて現地へ飛んだ若者たちを待ち受けているのは、詐欺組織による「かけ子」の強要、すなわち人身売買と強制労働だ。ネット上では「Netflixの詐欺ドラマを見たほうがいい。あれが現実だ」と警鐘を鳴らす声も上がっている。
現地駐在員が明かす「詐欺村」の異常な日常
事態の異様さは、日本国内に留まらない。現地カンボジアの日本人コミュニティもまた、特殊な環境下にある。
現地で唯一とも言える日本語学校(生徒数数十名程度)に子どもを通わせていた、ある日本人の父親は、カンボジアの“カオスな実態”について声を潜めてこう語る。
「現地の日本人学校に子どもを通わせている父親の多くは、総合商社やJICA(国際協力機構)などの政府関連機関で働く、いわゆる普通の駐在員です。でも、生徒数が数十名しかいないような本当に小さなコミュニティなのに、なかには『あの人は一体、何の仕事をしているんだろう?』と訝しがられるような、明らかに怪しい雰囲気の親御さんも混ざっているんです」
「狭いコミュニティですから、『実はあの人、振り込め詐欺グループの親玉なんじゃないか』なんて噂がヒソヒソと囁かれることもありました。堅い仕事の駐在員と、犯罪組織の人間かもしれない人物が、同じ学校の父兄として普通に顔を合わせている。善と悪がマーブル模様に入り混じった、なかなかにカオスで恐ろしい環境でしたね」
財閥すら詐欺グループ? 「他国から奪うのは問題ない」という歪んだ倫理観
なぜ、カンボジアにこれほどの巨大な詐欺ネットワークが根付いてしまったのか。現地の内情に詳しい事情通は、カンボジア特有のビジネス環境と倫理観の歪みを指摘する。
「先日、カンボジア現地の巨大財閥である『プリンスグループ』の代表が摘発されるという事件がありました。実質的に巨大な詐欺グループの隠れ蓑になっていたというわけです。しかし、驚くべきことに現地では『他にも有名企業が実は詐欺で儲けているらしい』といった噂が絶えません」
この事情通はさらに、根本的な問題として現地の“空気感”を挙げる。
「国民性と言っていいのかはわかりませんが、一部には『他国(外国人)からお金を騙し取っても、カンボジア国内に還元されるなら大きな問題ではない』という歪んだ認識が蔓延しているように感じます。警察や権力者との癒着も深く、詐欺ビジネスが巨大な産業として黙認されてしまっている。だからこそ、日本の若者たちがこれほど簡単に『使い捨ての労働力』として飲み込まれてしまうんです」
「自己責任」で片付けてはいけない第二の拉致問題
ネット上では、こうした事態を「第二の北朝鮮拉致みたいなものだ」と危惧する声も上がっている。 中国政府は自国民保護のためにカンボジア当局へ強い圧力をかけているとされるが、日本では「騙された方が悪い」「自業自得だ」という冷たい自己責任論が先行しがちだ。
しかし、これは単なる海外トラブルではない。巨大な利権と化した詐欺組織による、組織的かつ悪質な人身売買・拉致監禁事件である。
今日もまた、詐欺グループの甘い罠がSNSに投稿されているかもしれない。日本政府には、カンボジア政府への徹底した捜査協力の要請を含め、自国民保護のための毅然とした対応が急務として求められている。



