
ビジネスの最前線で「再生」が問われる今、バイクの心臓部を家具へと昇華させる異色の共創が注目を集めている。空間創造のプロ・船場とヤマハ発動機が仕掛ける、技術と情緒を循環させる新たなエシカルデザインの形とは。
バイク部品が「一品モノ」の家具に。船場とヤマハ発動機の共創
横浜・みなとみらい。この地に誕生した「YAMAHA MOTOR Regenerative Lab(リジェラボ)」は、単なる企業の展示場ではない。
ヤマハ発動機が自然や人間性の「再生(Regenerative)」を目指す実験場だ。ここで、株式会社船場はプロジェクト第2弾として、バイク部品を再構築した独創的なファニチャー群を世に送り出した。
かつてヤマハがプール事業から撤退した際の廃材をアップサイクルし、「日本空間デザイン賞2025」で金賞を受賞した第1弾に続くこの試み。今回は、同社のアイデンティティそのものである「モーターサイクル」の深部へと切り込んでいる。
隠れた「機能美」を主役に。他社と一線を画すアップサイクルの精度
他社の事例と決定的に違うのは、素材を単なる「廃材」として扱うのではなく、ヤマハが長年培ってきた「技術の結晶」として再定義している点だ。
例えば「鍛造テーブル」は、本来エンジンの過酷な環境を支える強靭な金属部品を、透明なレジンの中に封入した。あえて金属の質感を指で触れられるよう露出させた仕上げは、緻密な計算と職人技の融合だ。
また、名車「SR400」に施されてきた伝統のサンバースト塗装をテーブル天板に再現し、脚部には実際のフロントフォークを採用したモデルも存在する。これらは、単なるリサイクル品の域を超え、プロダクトが持つ物語を物理的に継承する「メディア」としての役割を果たしている。
「感動を支える裏側」を可視化する。モノづくりへの深い敬意
この取り組みの背景には、ヤマハ発動機が脈々と受け継いできた「感動創造」の哲学がある。バイクの性能を担保する精密な部品や、一部の熟練職人にしか成し得ない塗装技術は、普段ユーザーの目に触れることは少ない。
船場は、この「見えにくい価値」を空間の主役へと引き上げた。ハンドルを回すとピストンが往復し、爆発のタイミングでLEDが点滅する「ギアチェーン照明」には、エンジンの鼓動をドラマチックに伝えたいという、両社のモノづくりに対する並々ならぬ情熱が宿っている。
企業のレガシーを「資産」に変える。これからの共創の指針
このプロジェクトから私たちが学べるのは、自社の「当たり前」の中にこそ、世界に通用する価値が眠っているということだ。一見すると廃棄物や過去の遺産に見えるものでも、外部のクリエイティブな視点(船場)と自社のコア技術(ヤマハ)を掛け合わせることで、代替不可能なブランド資産へと転換できる。
「共感がめぐり、共創が生まれ続ける」というリジェラボのあり方は、効率至上主義から脱却し、企業の歴史や魂をいかに次世代へ繋ぐかという問いに対する、一つの鮮やかな回答である。



