
カプセルの製造過程で生じる「端材」を、単なる産業廃棄物としてではなく、農業を支える貴重な資源と捉え直す。三生医薬が進めるこの取り組みは、単なる環境保護の枠を超え、地域経済の新たな循環モデルを提示している。
地元の土を豊かにする「規格外カプセル」の再生
健康食品やサプリメントのOEM製造で国内屈指の規模を誇る三生医薬が、画期的なプロジェクトを始動させた。製造工程でどうしても発生してしまう形状不良や規格外の植物性カプセルを、地域農業に欠かせない「たい肥」へと再生させる試みだ。
同社が拠点を置く静岡県富士市周辺の企業と連携し、年間で約324立方メートルに及ぶ廃棄物の削減を見込む。これまでコストをかけて処理してきた「負の遺産」が、地元の畑を潤す「黄金の肥料」へと姿を変える瞬間である。
「前処理から農地まで」を繋ぐ独自の連携スキーム
この取り組みが他社と一線を画すのは、自社完結ではなく、地域の専門企業を巻き込んだ「面」での循環を構築した点にある。 まず、廃棄物処理を担う庵原興産が適切な前処理を行い、続いて富士宮市のアサギリが持つ高度なたい肥化技術によって、微生物の力で分解・発酵させる。
こうして出来上がったたい肥は、地元のホームセンターを通じて近隣の農家へと届けられる。 「つくる」側であるメーカーと、「処理する」側のリサイクル業者、そして「使う」側の農家が、地理的な近接性を活かして最短距離で繋がっていることが、このモデルの最大の独自性といえる。
製造現場の「つくる責任」から生まれた哲学
背景にあるのは、同社が掲げる「環境目標2030」と、ものづくり企業としての誠実な倫理観だ。 三生医薬が扱う植物性カプセルは、海藻由来の寒天やトウモロコシ由来のでんぷんなど、本来は口に入る安全な食品原料でできている。
「食べられる素材を、なぜ捨てなければならないのか」 現場の素朴な疑問と、代表の今村朗氏が重視する「心と身体の健康への貢献」という経営哲学が合致した。
製品の品質だけでなく、その「つくり方」や「終わらせ方」にまで責任を持つ。この一貫した姿勢が、従来の「焼却処分」という安易な選択肢を排除させた。
地域共創がビジネスの持続可能性を担保する
三生医薬の事例から学べるのは、サステナビリティとは決して遠い世界の理想論ではなく、足元の「地域」にこそ解があるという事実だ。 実際にこのたい肥を使用する地元農家からは、土壌の安定や輸送コストの削減を歓迎する声が上がっている。
また、そこで育った野菜が地元のスーパーやカフェで提供されることで、消費者は知らず知らずのうちに循環の環に参加することになる。 一企業の廃棄物削減が、地域の農業支援、さらには食の地産地消へと連鎖していく。
本業の周辺にあるステークホルダーとの対話から、新たな価値を掘り起こす。その泥臭くも合理的なアプローチこそが、これからのビジネスパーソンに求められる視点ではないだろうか。



