
宮崎県都城市。この地で、EV(電気自動車)の常識を覆す光景が現実のものとなった。2026年1月27日に開業した施設「KIRISHIMA GREENSHIP icoia」において、テラチャージが開始したEV充電サービス。何の変哲もない設備に見えるが、その中身を知れば誰もが驚くはずだ。そこで供給されるのは、あろうことか「焼酎のカス」から作られた電気なのだ。
ゴミか資源か。宮崎の空を汚さない「サツマイモ発電」の正体
この施設の最大の特徴は、運営電力の100%を霧島酒造独自の「サツマイモ発電」で賄っている点にある。焼酎の製造過程で必ず発生する「焼酎粕」や「芋くず」。かつては産業廃棄物として処理の対象であったこれらをバイオガスへと変換し、電気として蘇らせた。
この再エネの物語を、テラチャージの120kW急速充電器が「EVの動力」という形ある体験へ着地させた。来訪者がコーヒーを楽しみ、植物園を散策している間に、愛車には地域の恵みから生まれたエネルギーが満たされていく。これこそが、同社が掲げる「エネルギーの背景が見える充電体験」の真髄である。
なぜテラチャージか。機能以上にユーザーが惹かれる「文脈」の力
EV充電インフラの競争は激化の一途を辿っている。だが、単に「どこにでもある」だけの設備は、やがて価格競争に飲み込まれるだろう。テラチャージが他社と一線を画すのは、その土地の文脈に根ざした「ストーリー」を実装する力だ。
従来の充電は、どこから来たか分からぬ系統電力に頼らざるを得なかった。しかしここでは、目の前の工場で生まれたエネルギーが、ダイレクトに車へと流れ込む。この圧倒的な「地産地消」のリアリティは、環境意識の高い層にとって、スペック以上の強力な選択理由となり得る。
捨てれば「コスト」、活かせば「資産」。霧島酒造が貫く逆転の哲学
「もったいない」。霧島酒造の取り組みの根底にあるのは、日本人が大切にしてきたこの精神だ。1日数百トンに及ぶ廃棄物を、負の遺産ではなく、地方を支える貴重なエネルギー資産として再定義する。この発想の転換こそが、停滞する地方経済を動かすヒントになる。
テラチャージがこのビジョンに共鳴し、最先端のインフラを投じたのは必然と言える。インフラ側が供給側の哲学に歩み寄ることで、持続可能な社会は初めて「理想」から「日常」へとアップデートされるのだ。
ビジネスの勝機は「未利用資源」に眠っている
本プロジェクトから学ぶべきは、二つの成功法則だ。一つは、目の前の「無駄」を宝の山に変える再定義の視点。もう一つは、無機質なサービスに「物語(ストーリー)」を宿らせ、競合が追随できない情緒的価値を生む体験設計である。
「エネルギーの地産地消」を、もはや単なる美辞麗句で終わらせてはいけない。宮崎から始まったこのサツマイモ革命は、日本の脱炭素社会が向かうべき、一つの「正解」を提示している。



