
「発注ミス」や「仕様変更」という現場の微差を理由に、毎日2億円分もの新品資材が捨てられている。この建築業界の構造的課題に対し、単なるリサイクルではなく「情報の可視化」による解決を提示するのが、株式会社タツミコーポレーションの視点だ。
建築資材ロス削減に向けた新たな挑戦
株式会社タツミコーポレーションは2026年1月20日、運営する建築資材マッチングプラットフォーム「Cherish(チェリッシュ)」の全国的な認知拡大を目指し、クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」にてプロジェクトを開始した。
同社によれば、国内の建築現場では色違いや寸法の僅かな相違により、未使用の資材が大量に産業廃棄物として処理されている。今回のクラウドファンディングは、単なる資金調達にとどまらず、業界外には見えにくい「資材ロス」の実態を広く社会に問い直す啓蒙活動としての側面を強く持っている。
「流動性」を生む独自のプラットフォーム設計
既存の建材流通は、多層的な卸売構造や複雑な配送コストが壁となり、一度「余剰」となった資材を再流通させることが極めて困難であった。Cherishが他社と一線を画すのは、そのボトルネックを解消する実務的な仕組みにある。
特筆すべきは、大型資材の搬送を可能にする「おまかせ便」の存在だ。重量物や長尺物が多い建築資材において、物流のハードルは極めて高い。同サービスは現場直送を実現することで、出品者の負担を最小限に抑え、二次流通の流動性を劇的に高めた。2024年の稼働以降、既に上場企業を含む1,200社以上が登録している事実は、利便性と信頼性の高さを物語っている。
「一度失われた価値」を再定義する哲学
この取り組みの背景には、代表取締役の重岡龍王氏が抱く、モノの価値に対する強い信念がある。 「“色が違う”という理由だけで、昨日まで価値のあった新品がゴミに変わる。その現実は、経済的にも環境的にも不合理だ」 重岡氏はそう語る。
同社の哲学は、単なる環境保護運動ではない。倉庫に眠る「デッドストック」をデータ化し、必要とする者へ繋ぐ。それは、一度価値を失ったモノに再び「光を当てる」という、資源に対する敬意に基づいた再評価である。この「捨てるのが当たり前」という文化を「活かすのが当たり前」へと転換させる姿勢が、多くの企業の賛同を得ている。
課題の「可視化」と「仕組み化」
タツミコーポレーションの歩みは、社会課題をビジネスチャンスに変えるための肝要な示唆を含んでいる。
第一に、「現場の痛みを解像度高く捉えること」だ。毎日2億円という具体的な数字でロスを可視化し、それが業界のどのプロセスで発生しているかを特定したことが、サービスの説得力を生んでいる。
第二に、「善意に頼らず、インフラとして機能させること」である。エスクロー決済や物流機能の整備など、取引の障壁を徹底して排除した。持続可能な社会の実現には、理想論だけではなく、既存の商慣習を上書きできるほどの「合理的な仕組み」が必要であることを、同社は証明しつつある。
自治体や教育機関との連携も見据える同社の挑戦は、一企業の枠を超え、日本の産業界全体が取り組むべき「資源循環」の試金石となるだろう。



