
イラン全土で続く反政府抗議活動は11日までに一段と激化し、人権団体によると死者が500人を超えた。経済的困窮から始まったデモは、イスラム共和国体制の根幹を揺るがす文化的な反乱へと発展しており、米国のトランプ大統領は軍事介入も辞さない構えを見せている。
「三重のタブー」への挑戦:拡散する象徴的画像
今回の抗議活動で際立っているのが、SNS上で急速に拡散している特定のビジュアルだ。それは、ヒジャブ(頭髪を覆う布)を着用しない女性が、たばこをふかしながら、イラン革命の指導者ホメイニ師の写真を燃やすという画像や動画である。
専門家によると、この行為はイラン社会における「三重のタブー」を同時に破る、極めて急進的なメッセージを含んでいる。
- 体制の否定(写真焼却): 1979年革命の父であり神聖視されるホメイニ師の写真を燃やすことは、現体制の正統性を真っ向から否定する行為であり、最高レベルの侮辱とみなされる。
- 宗教的規律の拒絶(ヒジャブ放棄): 2022年のデモ以来続く、強制的な宗教的服装規定への抵抗を示す。
- 家父長制への反逆(喫煙): 保守的なイラン社会において、女性が公共の場で喫煙することは「ふしだら」と見なされ忌避されてきた。あえてその姿を晒すことは、伝統的なジェンダー観や「良き女性像」の押し付けに対する決別を意味する。
当初は物価高騰への不満から始まったデモが、今や「恐怖の克服」と「完全な世俗化」を求める運動へと変質していることを、これらの画像は物語っている。
死者500人超、大統領は「暴徒」と一線
人権団体HRANAによると、デモによる死者は参加者490人、治安部隊員48人に上り、逮捕者は1万600人を超えた。 イランのペゼシュキアン大統領は11日、国営テレビで「抗議は国民の権利だが、暴徒が社会を混乱させることは許さない」と発言。デモの過激化を、米国とイスラエルが「不安をエスカレートさせている」結果だと非難し、一般国民と「暴徒」を分断しようと試みている。
トランプ氏「支援の用意」、ネタニヤフ氏も呼応
米国のトランプ大統領は、イラン当局の弾圧に対し「米国は支援の用意がある」とSNSに投稿。市民への殺害が続けば新たな軍事行動に出ると警告した。 イスラエルのネタニヤフ首相も「イランが専制政治から解放されることを願う」と述べ、両国の連携を示唆した。
イランのガリバフ国会議長は、「攻撃されれば中東の全米軍基地が標的になる」と強く牽制している。
専門家「長期の内戦の懸念」
今後の見通しについて、静岡県立大学の塩崎悠輝准教授(国際関係学)は、革命の成立には長期の混乱が不可避であるとSNSで指摘する。「現体制を倒すための強力な武装勢力が不在であり、正規軍の離反がない限り政権移行は困難」と分析。
革命防衛隊等の激しい抵抗が予想され、長期の内戦や外国軍の介入、周辺国への波及の可能性が高いとの見方を示した。



