
ヒンドゥー教徒にとって最も神聖な場所であるインド・バラナシのガンジス川。そこでクリスマスの日に「サンタクロースの帽子」と「際どい水着」で沐浴を試み、地元住民からブチギレられた日本人グループがいた。
日本中から「国の恥」と非難を浴びているこのお騒がせ集団だが、現地インドの報道を詳細に追うと、彼らが犯したかもしれない“もう一つの大罪”と、意外な“擁護論”が見えてきた。
特定された「空気が読めない」3人のインフルエンサー
現地で大ひんしゅくを買ったのは、以下の3名の日本人インフルエンサーだ。彼らのプロフィールと、そのいびつな関係性を紐解いていこう。
1. おれ坂口【坂口カメラ】(本名:坂口康太)
- 年齢・経歴: 27歳(1998年生まれ)。埼玉県立浦和高校から上智大学文学部新聞学科卒という高学歴を持つ会社員。
- 活動: TikTok(約9万人)やYouTube(約7万人)で活動。「カメラマン」として、後述する女性2人を有名にする「物語」をコンセプトに、いわゆる「ハーレムコンテンツ」を制作している張本人だ。
2. はまのあんず(本名同じ)
- 年齢・経歴: 23歳。神奈川県横浜市出身。元ビール売り子で、現在は水球チームのマネージャーも務める。TikTokフォロワーは31.6万人超。
- 特徴: スポーツ系コンテンツや自然体の発信が人気で、水着写真集も出している。MBTIは討論者(ENTP)。
3. レイラ(mishirudo)
- 年齢・経歴: 25歳。元看護師からコスプレイヤー・モデルに転身。SNS総フォロワーは80万人を超える。
- 特徴: 学生時代の「自分がブスだと思い込んでいた」過去からの「垢抜け」ビフォーアフター写真で話題を集めた。
【ナンパから始まった「ビジネス・ハーレム」
驚くべきは3人の関係の始まりだ。きっかけは、坂口がInstagramで彼女たちに送ったDM、つまりは「ナンパ」だったという。そこから動画コラボが始まり、現在は「女友達」という設定で、ディズニーランドや海外旅行(上海、フィリピンなど)へ繰り出す仲だ。動画内では恋愛関係を匂わせる演出もしばしばで、視聴者の関心を引いている。 要するに、高学歴男がプロデューサー気取りで、承認欲求の強い女子2人を侍らせて動画を撮る――そんな「ビジネス・ハーレム」集団が、今回の騒動の主役なのだ。
彼らは機内でも周囲を顧みず大声でYouTubeの話に興じたり、スラム街を「汚い」と蔑むなど、以前から旅行者としての資質を疑う行動が目撃されていた。「動画が撮れれば何でもあり」という彼らの浅はかなスタンスが、聖地での愚行に繋がったことは想像に難くない。
インド主要メディアはどう報じたか? 「被害者扱い」の不可解
驚くべきことに、インドのメディアはこの騒動を単なる「日本人のマナー違反」として断罪するだけでなく、複雑な文脈で報じている。主要各紙の論調を見てみよう。
The Hindu(高級英字紙)まさかの「日本人擁護」と「政権批判」
同紙は、この事件を「服装を理由にした日本人観光客へのハラスメント(Harassment)」と定義して報道。 記事では野党指導者のアキレシュ・ヤダヴ氏のコメントを引用し、「世界中がインドに来たがっている時に、客人に恥をかかせるとは何事か」と、地元の暴徒たちを批判している。
彼らにとってこの日本人は、現政権(BJP)下で蔓延する「不寛容な空気」や「モラル警察」を叩くための“格好の政治利用の道具”となったわけだ。
Deccan Herald(有力英字紙) 報じられた衝撃の「放尿疑惑」
一方で、同紙は地元住民の怒りの“真の理由”に踏み込んでいる。記事によると、住民側は日本人の一人が「聖なる川の中で排尿した疑いがある(accusing one of them of urinating in the river)」と主張し、激昂したと伝えている。
「水着がダメ」以前の問題である。もしこれが事実なら、彼らは聖地を公衆便所扱いにしたことになり、地元民に囲まれても文句は言えない。
Livemint / Dainik Bhaskar(経済紙・現地紙) 現場の怒りを詳報
「ここはスイミングプールじゃない、聖地だ!」 現地紙『Dainik Bhaskar』を引用したLivemintは、そんな地元民の怒声を伝えている。記事では、日本人がガイドを呼ぶように求め、警察が「誤解による口論」として仲裁に入った経緯を淡々と、しかし現場の緊張感を持って報じた。
NewsX(ニュースチャンネル)「虚偽の告発」説も?
動画ニュースでは、SNSで拡散された日本人が手を合わせて謝罪する映像を紹介。住民側の「放尿疑惑」について触れつつも、それが「虚偽の告発(falsely accused)によって嫌がらせが始まった可能性」も示唆している。
証拠がない中で集団リンチのような状況になったことに対し、ネット上では「友好国からのゲストに対して恥ずべき行為だ」という、これまた地元民への批判の声も上がっているという。
「郷に入っては郷に従え」ないバカは制裁を受けるべきだ
インド特有の「Atithi Devo Bhava(客人は神様)」という精神のおかげで、彼らは現地メディアから一部擁護され、警察にも守られて無事に帰国できた。 しかし、「郷に入っては郷に従え」という最低限のリスペクトすら持たず、土足で他人の信仰を踏みにじった彼らの罪が消えるわけではない。
「放尿疑惑」の真偽は藪の中だが、聖地でサンタ姿のドンチャン騒ぎをすればどうなるか、想像力が欠如していたことは事実だ。本音を言えば、政治利用や「お客様扱い」で守られるのではなく、現地でもっときつい「お灸」を据えられてきた方が、彼らの人生における本当の勉強になったのではないだろうか。
日本の恥を世界に晒した代償は、SNSの「いいね」では到底償えない。



