
全国で整体サロンを展開していた「Filament(フィラメント)」が、直営全店舗の閉鎖に至ったことが明らかになった。同社を巡っては、代表取締役社長である川島悠希氏による横領疑惑や、深刻な財務状況が告発されており、急成長の裏で経営の混乱が続いていた。
2024年末、株主である坂井秀人氏による横領告発に端を発し、2025年夏には全直営店の閉鎖に至った美容整体だった。この激動の1年を振り返り、告発者の坂井氏、そしてかつて川島悠希元社長のメンター的存在であった連続起業家・溝口勇児氏が相次いで胸中を明かした。
そこには、急成長企業の脆さと、絶縁に至った決定的な「事件」、そして再起への微かな可能性が示されていた。
発端は「横領疑惑」の告発
一連の騒動が表面化したのは、ちょうど1年前のことだ。実業家の坂井秀人氏(@hideto_sa)が、Filament社のM&A(企業買収)を検討した際の内情をSNS上で告発したことがきっかけだった。
坂井氏によると、当時の同社はグループ全体で100店舗以上を展開し、売上高は数十億円規模に達していたものの、実態は「資産がほぼ無く、あちこちに2億円超の負債があり、借入先も複雑」という火の車だったという。坂井氏は、通常M&Aの判断基準となる財務諸表(BS・PL)以前の問題として、代表による横領や放漫経営の実態を指摘していた。
その後、告発から約半年で従業員への給与未払いや取引先への支払い遅延が発生。資金繰りの悪化に歯止めがかからず、最終的に直営全店の閉鎖という結末を迎えた。
また坂井氏は、Filament騒動とは別件としつつも、今年5月にポーカー業界で横行していた「違法賭博のデジタル通貨」についても「消える」と断言していたことに言及。実際に半年後に警察が動き消滅したことに触れ、「これまでは自分の利益を考えて言えなかったことも、これからは自分が正しいと思うことを言っていく」と、今後の発信スタンスの変化を強調した。 坂井氏の一連の行動は、金銭的損失を被りながらも「膿を出し切る」という点では一貫しており、Filament騒動もその一つだったと言える。
溝口勇児氏が明かす「川島氏との絶縁理由」
一方、これまでFilamentの一連の騒動について沈黙を守ってきた連続起業家・溝口勇児氏が、ついに口を開いた。
溝口氏は、川島氏が上京した直後から約1年間、毎週のようにミーティングを重ねるなど、公私ともに支援していた時期があった。技術力とカリスマ性を高く評価していた溝口氏だが、会社が成長するにつれて川島氏の姿勢に変化が生じたと指摘する。
「従業員やスタッフ、顧客に対する姿勢が少しずつ変わっていった。必要以上に背伸びをし、事業そのものではない部分に力を使いすぎてしまっていた」 地方から出てきた若者が急に影響力を持ち、チヤホヤされることで陥る「勘違い」。溝口氏はその危うさを感じ取っていたようだ。
そして今回、両氏が絶縁に至った決定的な理由が初めて明かされた。溝口氏によると、彼が世話になっている人物が主催する大規模カンファレンスにおいて、川島氏が運営スタッフに対し暴言を吐き、出入り禁止処分を受けたことがきっかけだったという。その後、筋を通さなかった川島氏に対し、溝口氏は「付き合いきれない」として縁を切ったとのことだ。
「転ぶときは深い」それでも残された再起への道
全店閉鎖という最悪の結果に対し、溝口氏は「後悔も含めて胸が痛む」と吐露する。しかし同時に、川島氏に対し「ここで終わるタイプの経営者じゃない」とエールも送った。
「才能がある人間ほど、転ぶときは深い」 溝口氏はそう述べた上で、過去に謝罪を拒絶した経緯がありながらも、「本気でやり直す覚悟があり、もし頼れる先がないなら連絡をしてきて」と、条件付きで救いの手を差し伸べる姿勢を見せた。
まとめ
2024年末の告発から1年。200店舗の閉鎖、数億円規模の負債、そして顧客と従業員の混乱──。Filamentが残した爪痕はあまりに深い。 坂井氏による「正しさ」の追求と、溝口氏による「厳しさ」の中にある温情。二人のキーマンの発言は、若手経営者の暴走に対する戒めであると同時に、全てを失った人間がどう償い、どう立ち上がるべきかを問いかけている。
雲隠れが噂される川島氏だが、この「覚悟」を問う呼びかけにどう応えるのか。再生への道は、彼自身の行動にかかっている。



