
「廃棄」を「資産」へ変え、多様な人材がその価値を磨き上げる。関西電力グループのポンデテックとCTCひなりが始動した使用済みPC再生事業の協業は、環境負荷低減とDE&Iの推進を同時に実現する、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の先進事例として注目を集めている。
リユースPC市場に新風。関西電力グループとCTCグループが協業
IT資産の有効活用が企業の喫緊の課題となる中、関西電力グループのベンチャー、株式会社ポンデテックと、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の特例子会社であるCTCひなり株式会社が、使用済みPCのリファービッシュ(再生)事業で手を組んだ。
本協業では、企業から排出されたPCの清掃・点検・部品交換といった実務をCTCひなりが担当。ポンデテックは長年培った再生技術の供与と工程設計、そして自社ECサイト「PC next」を通じた再流通を担う。大手資本のインフラとベンチャーの機動力が、IT資産の「静脈産業」において融合した形だ。
「標準化」が支える高品質な再生プロセス。他社と一線を画す独自性
本事業の特筆すべき点は、障がい者雇用という社会的な枠組みを、極めて高い「品質管理」の仕組みに昇華させている点にある。
PCの再生工程は細かな作業が多く、属人的なスキルに頼りがちだが、ポンデテックはこれを徹底的に標準化。専門的な技術支援と厳格な品質基準を設けることで、CTCひなりのスタッフが「戦力」として、新品同様のクオリティまで製品を仕上げる体制を構築した。単なる社会貢献としての作業委託ではなく、市場で勝負できる「製品」を生み出す生産ラインとしての独自性が、他社の追随を許さない強みとなっている。
「雇用と循環の共創」を掲げる、両社に共通する経営哲学
この取り組みの背景には、両社が共有する「資源と人の可能性を最大化する」という強い哲学がある。
ポンデテックの財津和也代表は、電子ゴミ(E-waste)の削減と、障がい者の安定就労を同時に解決する「新しい社会モデル」の構築を一貫して追求してきた。一方、CTCひなりもまた、多様な人材が能力を発揮できる職場づくりをミッションに掲げている。 「資源を捨てるのではなく、価値を与えて再び社会へ戻す。そのプロセスが人の成長を支える」。この一貫した思想が、今回の協業を単なる業務提携以上の「志」を持ったプロジェクトへと昇華させている。
現代のリーダーが学ぶべき、ESG経営を収益化する視点
本事例から学べるのは、環境(E)と社会(S)への取り組みを「コスト」から「付加価値」へと転換するデザイン力だ。
多くの企業がSDGsを掲げながらも、実事業との乖離に悩む中、両社は「PCの廃棄」というマイナスを「再生品の販売」というプラスに変換し、そこに「障がい者の職域創出」という社会的価値を組み込んだ。 ビジネスの現場に「正しさ」と「収益性」をどう同居させるか。その解は、既存の資産(使用済みPC)と、まだ見ぬ才能(多様な人材)を、技術と仕組みで結びつける創意工夫の中に隠されている。



