
「SDGs未来都市」江戸川区と連携するクボタスピアーズ。その初優勝時のバナーを再利用する今回の試みは、スポーツの熱狂を一時的な消費で終わらせず、価値ある資産へと転換する独自の資源循環モデルである。
12月27日、秩父宮ラグビー場に循環の拠点が誕生
2025年12月27日、秩父宮ラグビー場での東京サントリーサンゴリアス戦にて、バリュエンスジャパンが運営する「HATTRICK」とクボタスピアーズ船橋・東京ベイによるアップサイクルプロジェクトが実施される。
本イベントの目玉は、チームが悲願の初優勝を果たした2022-23シーズンに実際に掲出されていた大型バナーの再利用だ。この歴史的な素材を用い、選手の直筆サインが入った「三角コインケース」を製作するワークショップや、数量限定のトートバッグ販売が行われる。役目を終えた装飾品に新たな命を吹き込む、スタジアム発のサステナブルな試みだ。
情緒的価値を「プロダクト」に封じ込める
本プロジェクトが一般的な廃材利用と一線を画すのは、素材に宿る「物語」の扱い方にある。通常、スタジアムを彩るバナーは閉幕後に産業廃棄物として処理される。しかし、HATTRICKはこれを「ファンの宝物」へと昇華させた。
「あの優勝の瞬間にスタジアムにあった布地」を、ファン自らの手で裁断・加工し、日常使いできる小物へと変える。単なる環境配慮としてのリサイクルではなく、ファンの熱量を物理的な形として残す「体験型エンゲージメント」の構築こそが、他社にはない独自性である。
バリュエンスが追求する「価値の再定義」
この取り組みの根底には、バリュエンスジャパンが掲げる「世の中から発生する廃材にあらゆる視点から価値を付加する」という哲学がある。同社の事業は、環境省の「デコ活」推進事業にも採択されており、単なるゴミの削減を超えた、国民の新しいライフスタイルの創出を目標としている。
「ともに、挑戦者の持続可能な未来をつくる。」というミッションのもと、アスリートの挑戦の証を次代へと繋ぐ。この一貫した姿勢が、スポーツ・エンターテインメント業界における循環型社会の形成を加速させている。
サステナビリティを「喜び」へ変換する手法
ビジネスパーソンが本件から学ぶべきは、社会課題の解決をいかにして「顧客のベネフィット」に直結させるかという視点だ。
環境負荷の低減を「義務」として押し付けるのではなく、ファンが「欲しい」と思うストーリーに変換して提示する。この「ワクワク感」を入り口にした設計こそが、持続可能なビジネスモデルを成立させる鍵となる。資源を回すだけでなく、人々の想いを循環させる。これこそが、これからの循環型経済において企業が目指すべき一つの完成形といえるだろう。



