
元日本代表DFの槙野智章氏(38)が、来季の藤枝MYFC新監督に就任する見通しとなった。
関係者の証言によれば、クラブとの交渉は最終段階に入り、監督就任に必要となるライセンス交付後にも正式発表される見込みだ。
Proライセンス取得直後の抜擢という異例の流れ
槙野氏は今年、監督業の最上位資格である「Proライセンス」を取得したばかりだ。この資格はJクラブや日本代表を率いるために必須とされるもので、取得直後にJクラブの監督へ就任するケースはきわめて珍しい。
藤枝MYFCは今季J2で15位。5年間をともに戦った前監督の退任が決まり、クラブは次期指揮官の選定を進めてきた。複数の候補が挙がる中、槙野氏の「高い言語化能力」「選手を動かす熱量」「組織に活気を生む存在感」が評価され、一本化されたとみられる。
引退後に示した“監督像”が現実へ近づく
現役引退会見で槙野氏は、自ら次のステージを「第二章」と表現し、将来的な監督就任への意思を明確に語っていた。
「サポーターを巻き込み、局面を変える監督になりたい」
「選手とともに目立てるチームをつくりたい」
その言葉は、単なる抱負ではなく、具体的なビジョンとして準備されていた。攻撃的なスタイルを志向し、戦況を動かす大胆な采配を特長とする「槙野スタイル」が、プロの舞台でどう表現されるのか注目される。
“魔境”と呼ばれる社会人リーグで積んだ現場経験
槙野氏が指揮を執ってきた品川CCは、神奈川県社会人1部リーグに所属するクラブだ。昇格争いが激しいこのカテゴリーでは、限られた練習時間で戦術をいかに落とし込むかが指導者の腕を問う。
ここで培ったのが、選手への言葉の届け方だ。
試合中の状況を明確に説明し、迷いなく動けるよう導く力。その言語化こそが、藤枝が最も評価したポイントだと言われている。
クラブにとっては、若い監督だからこそもたらせる熱量と柔軟性への期待もある。チームが新たなフェーズに進むタイミングと槙野氏のキャリアの曲線が、ちょうど重なった。
藤枝MYFCが求める“変革の推進力”
藤枝はJ2定着3年目を迎え、クラブとして次のステージ、さらなる順位向上、そして将来的なJ1昇格を視野に入れている。
槙野氏は、広島・浦和・神戸で積み上げた人脈を持つ。
そのつながりを活かし、期限付き移籍や補強の面でもチームに新しい風を吹かせる可能性がある。
選手を乗せることに長けたタイプでもあり、クラブは新しい化学反応を期待している。
Jリーグの舞台に戻る“お祭り男”が描く未来
槙野氏が再びJリーグに戻るのは、選手としてではない。
しかしピッチ脇で誰よりも熱く、誰よりも存在感を放つ姿が目に浮かぶ。
藤枝MYFCは、地方クラブとして着実にステップを上がってきたチームだ。そこに槙野氏の個性が加われば、J2の中でも際立つ存在になる可能性は高い。
正式就任はライセンス交付後となる見通しだが、その瞬間を待ち望む声は日増しに強まっている。
38歳、新監督。藤枝の新たな物語が始まりつつある。



