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あいみょん「きもすぎ」AIフェイク画像の衝撃 どこから違法で、なぜ止められないのか

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あいみょん
あいみょん 公式インスタグラムより

12月上旬、SNS上にあいみょんの“胸元が強調されたAI生成画像”が流れ始めた。本人の写真をもとに加工されたとみられるその偽画像は、実在の人物を写したかのような精度を帯び、静かにタイムラインへ紛れ込んでいった。

拡散速度が増すなか、あいみょんはXで短い言葉を投稿する。

「私が乳出してるみたいな画像めっちゃ出回ってるけどAIやで、きもすぎ」

その一文には、「これは本物ではない」と伝えざるを得なかった切実さがにじむ。
ファンからは「性的フェイクは加害」「事務所は法的措置を」との声が相次ぎ、SNS上では怒りと不安が広がった。

しかし今回のケースは、単なる迷惑行為では終わらない。
AIの悪用が進む現代では、こうしたフェイク性加害が社会問題として拡大しており、日本の法整備は明らかに追いついていない。

 

 

静かに広がるAIフェイク画像 誰でも被害者になり得る時代

今回の偽画像は、あいみょんさんの写真をもとに、胸元を強調するよう加工されたとみられる。
SNSのアルゴリズムを通じて拡散され、本人の目に触れるまでわずか数時間だった。

特定の人物の画像を手軽に加工し、リアルな偽画像を生み出すAI技術は、もはや専門家だけのものではない。スマートフォン1台あれば生成でき、悪意あるユーザーは匿名性の陰に隠れながら、著名人・一般人を問わずターゲットにしている。

「自分ではない姿が勝手に作られ、勝手に広がる」。
その不可逆性こそが、フェイク被害をより深刻なものにしている。

 

法的には何が問題なのか? 核心となる“肖像権侵害”

弁護士ドットコムニュースは、この行為が肖像権侵害に該当する可能性が高いと指摘する。
最高裁の判例では、人には

  • 勝手に容ぼうを撮影されない利益
  • 撮影された写真を勝手に公表されない利益

という二つの人格的利益が認められている。

今回の画像は、

  • 見れば本人だと認識できる
  • 本人が望まない性的ニュアンスが付加されている

という点で、本人の人格的利益を侵害しているとみられる。
重要なのは、画像を“作成した人”だけでなく、“投稿した人”“拡散した人”にも責任が及びうる点だ。

つまり、「リポストしただけ」では済まない可能性がある。

 

刑事罰はなぜ難しいのか?“グレーゾーン”の壁

では、刑事罰はどうか。
結論からいえば、今回の偽画像は 「ディープフェイクポルノ」には該当しない可能性が高い。

刑事処分が難しい理由として、

  • 性器の露骨な描写がなく、刑法175条の「わいせつ」基準を満たさない
  • 名誉毀損罪の成立には「事実の摘示」が必要だが、本件はその判断が難しい

といった点が挙げられる。

一方で、2025年10月には、生成AIを使った完全なわいせつ画像を公開した男性が逮捕されている。
つまり、性的フェイクすべてが処罰困難なわけではないが、今回のような性的ニュアンスの偽画像は、現行法ではとらえきれない領域にある。

この「法の隙間」こそ、悪質なフェイクを増やす最大の要因になっている。

 

世界で広がる“ディープフェイクス危機” 日本も主要ターゲットに

オックスフォード大学インターネット研究所の調査では、公開されているディープフェイクモデルの96%が女性をターゲットにしていた。
さらに、有名人だけでなく、フォロワー1万人未満の一般ユーザーも標的とされており、日本も多く含まれているという。

欧州では、子ども同士がクラスメイトの顔写真を使ってフェイクヌードを作り、いじめに利用するケースが急増。
精神的被害は、実写の性的被害に匹敵するとも報告されている。

韓国は2024年に罰則を強化し、フェイク画像の作成・流布だけでなく所持・視聴まで処罰対象に拡大。
米国でも「Take It Down法」が制定され、プラットフォームに48時間以内の削除対応を義務付けた。

対して日本はようやく鳥取県で児童向けディープフェイクを禁止する条例が可決された段階で、
全国的な規制はまだ存在しない。

 

“個人利用ならOK”は誤解 無自覚な加害者が生まれる構造

SNSでよく見られる

「個人利用だから問題ない」
「昔のコラージュと同じ」

という考え方は、現代では通用しない。

法律上の私的使用とは、自分または同居家族のみ、という極めて狭い範囲を指す。

1人でも友人に送れば「私的利用」ではなくなり、権利侵害となる可能性が高い。
さらに、クラウド保存やDMでの共有も、実務上は「ネット上での流通」とほぼ同義だ。

悪意がなくとも、軽い気持ちの生成や共有が、加害へ直結してしまう。
これは、学校現場のディープフェイク被害が増加している背景とも重なる問題だ。

 

あいみょんの「きもすぎ」が示した現実 AI時代の新しい性加害

本人の投稿は短い一文だったが、その反響は大きかった。
ファンからは「まじで性加害」「絶対に許されない」との声が相次ぎ、SNS上では“AIフェイク”への危機感が急速に広がった。

だが、問題は彼女だけではない。
同様の被害はすでに多数発生しており、法整備や教育が追いつかないまま、生成AIは加害のハードルを限界まで下げてしまった。

AIだから仕方ないのではなく、AIでも立派な人権侵害である。
その当たり前の認識を社会全体で共有しなければ、被害は加速度的に広がり続ける。

あいみょんの「きもすぎ」は、一人の被害者の叫びであり、同時に、社会への警鐘でもあった。

 

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ライター:

広告代理店在職中に、経営者や移住者など多様なバックグラウンドを持つ人々を取材。「人の魅力が地域の魅力につながる」ことを実感する。現在、人の“生き様“を言葉で綴るインタビューライターとして活動中。

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