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高市発言で中国が“威圧外交”全開 両手ポケットの一瞬が日中関係を激震させた…

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外交緊張
DALLーEで作成

北京の冬の空気は、午後の冷え込みが一段と強くなる時間帯だった。外務省のロビーに足を踏み入れた金井正彰アジア大洋州局長の周囲には、すでに中国メディアが列を作り、静かなざわめきだけが満ちていた。

ほどなくして姿を現したのは、ズボンのポケットに両手を深く入れたままの中国外務省・劉勁松アジア局長。二人が顔を合わせた瞬間、報道陣のフラッシュが一斉に走り、その場の空気が一段と緊張を帯びたように見えた。夕方のニュースがこの映像を流すと、日本のSNSはたちまち騒然となった。

高市早苗首相による「台湾有事」発言を契機とした日中の緊張は、こうしたわずかな身振りや表情にまで敏感に反応を呼び起こすほど、ぎりぎりの段階に差し掛かっている。

 

 

北京ロビーの緊張、異例の“公開演出”

会談を終え、金井局長がロビーに現れたのは日本時間午後3時過ぎだった。広い空間に落とされる照明は冷たく、床の大理石が鈍く光っている。一般的には撮影すら許されないこの場所に、複数のカメラが並んでいること自体が、すでに異様な光景だった。

その静寂を破るように、劉局長がゆっくりと姿を見せた。両手はズボンのポケットに深く突っ込まれたまま。ぶぜんとした表情のまま金井局長の横に並び、何事かを語りはじめる。その声を聞き取ろうと金井局長が通訳に耳を傾けた瞬間、わずかに頭を下げるような角度になった。

この短い動作が、後に中国SNSで「日本側が謝罪した」と誤解を誘う映像として切り取られ、拡散していく。

撮影が許されないはずの空間で、あえて二人の姿をカメラの前にさらした中国側の意図は明白だった。高市発言への反発を示すだけでなく、「優位に立つ自分たちの姿」を国内外に宣伝したい。そのための“公開型の外交演出”だったとみられる。

 

「ヤンキーの威圧」日本のSNSを覆った怒りと不安

映像が流れたわずか数分後、日本のSNSには怒りと困惑の投稿が相次いだ。ポケットに手を入れたまま話しかける劉局長の姿は「相手に対する礼を欠いている」「完全に見下している」と受け取られ、「ヤンキーの威圧」「カメラが回っていることを知った上での演出だ」といった言葉が並んだ。

日本側の局長が通訳の声に耳を寄せる際にわずかにうつむいた場面も、「怒られてしょんぼりしているように見える」との声が多く、「日本人が中国高官に威圧されているようで不快だ」という反応もあった。

一方で、海外の所作との違いを指摘する冷静な声もある。アメリカなどでは司会者がポケットに手を入れたまま番組を進行することもあり、マナー違反とまでは言えないという見方だ。ただ、外交の場という文脈で見ると、相手をどう捉えているかが非常に象徴的に映る。この“差”こそがSNSを騒がせた原因だった。

 

中国が過剰反応する理由 内政と外交の交差点

今回の緊迫の根底には、高市早苗首相の国会答弁がある。台湾有事について「最悪のケースでは存立危機事態になり得る」と語ったことで、中国側は即座に「中国に対する誤った発言」と反発し、政府内で扱うレベルを一段引き上げた。

背後には、現在の中国が抱える複数の不安定要因がある。経済の減速、深刻化する不動産不況、アメリカとのデカップリング、欧州の規制強化。いずれも国内の不満を刺激しやすい問題だ。こうした時期には、政府として外向きの強硬姿勢を演出し、国内の結束を固めることが必要になる。

その意味で、「日本に抗議する中国」という構図は非常に利用価値が高い。今回のポケット映像はその象徴的な材料となり、中国のSNSや国営メディアでは、日本側が頭を下げたように“見える”場面だけが繰り返し拡散されていった。

 

エンタメ・観光・留学…静かに広がる影響

外交上の応酬は、日本社会にも波を広げている。中国政府はすでに国民へ日本への渡航自粛を呼びかけ、治安悪化を理由に留学の慎重検討まで要求しているという。実際に東京都内の中国人留学生向け予備校では、10件以上の留学キャンセルがわずか数日のうちに届き、関係者は「これまでにない動きだ」と話す。

影響は文化・エンタメにも及んでいる。人気グループJO1の中国イベントが不可抗力を理由に中止され、吉本新喜劇の上海公演も中止となった。映画の公開も相次いで延期され、「クレヨンしんちゃん」や「はたらく細胞」など日本の人気コンテンツが軒並み予定を見直している。

さらに中国公務員の対日出張も取り消されているとされ、人の流れも徐々に止まりつつある。これらの動きは表向き政治的理由によるものではないとされるが、タイミングの一致を見る限り、外交の緊張の影が落ち始めていることは確かだ。

現地に住む日本人への影響も深刻化している。日本大使館は17日夜、在留邦人に複数で行動するなど安全確保を徹底するよう注意喚起を出し、周囲の情勢に十分警戒するよう求めた。緊張が高まる中で、日常生活に不安が広がりつつある。

 

日本がとるべき姿勢とは?“挑発に乗らず、引かず”

こうした中で、日本政府は「高市首相の発言は従来の方針を変更するものではない」と説明する一方、行き過ぎた中国側の言動には抗議を行っている。中国の大阪総領事による過激なSNS投稿に対しても、日本側は公的に不適切だと指摘した。

この先、どこで緊張を落ち着かせるのか。その鍵は、日本がどこまで原則を守り続けられるかにかかっている。挑発に乗って強硬姿勢を返せば、事態はさらにこじれる。かといって、一歩引けば、中国は「圧力で日本は動く」と判断し、今後も同じ手法をエスカレートさせるだろう。

必要なのは、“乗らず、しかし引かず”という静かな外交だ。国際法と日中共同声明に基づいた立場を淡々と示し続け、時間を味方につける。その冷静さこそが、感情と演出で動こうとする相手に対抗しうる唯一の手段である。

 

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ライター:

広告代理店在職中に、経営者や移住者など多様なバックグラウンドを持つ人々を取材。「人の魅力が地域の魅力につながる」ことを実感する。現在、人の“生き様“を言葉で綴るインタビューライターとして活動中。

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