
通販ビジネス界を揺らす炎上が起きている。震源地はまたしても「令和の虎」界隈から起きた。発端となったのは、YouTube企画「通販の虎」に出演する桑田龍征氏が、11月13日にXに投稿したひと言だ。
「へぇ…。許可もしてないのに、こんな資料作って通販の虎の志願者に営業してる会社があるんだって」
投稿には驚きを隠さないニュアンスが漂い、添付されていた資料には、桑田氏自身の写真のほか、三浦会長や西尾社長など、番組周辺で知られた顔ぶれがずらりと並んでいた。いずれも本人の許諾はなく、全員が“初見”だったという。
資料は広告会社アドレアが使っていた営業用のものとされるが、その中にひときわ目を引く人物がいた。「Nontitle」「REAL VALUE」で知られる起業家・青木康時氏だ。資料では、青木氏が“企画プロデュース”として堂々と紹介され、番組を想起させる文言の中心に配置されていた。
青木氏「知らなかった」 しかし資料の完成度に広がる“違和感”
騒動が広がると、青木氏はすぐに謝罪文を投稿した。「資料の存在は初めて知った」「プロデューサーとして載っていたことにも驚いた」青木氏はそう強く否定し、あくまで構想段階の意見を求められただけだと説明した。
だがここで、SNS上では別の火種が生まれ始める。
資料は「構想段階」と呼ぶにはあまりにも完成されすぎていた。レイアウトは整い、番組の世界観と酷似した説明が並び、青木氏はプロデューサーの立ち位置で掲載されている。さらに資料は外部へ営業として持ち出され、企業へのアプローチまで行われていたことが噂されている。
“初見で知らなかった”という青木氏の説明は、資料の実態と立場上なかなか噛み合わないのではないかという指摘が、主に令和の虎界隈の社長たちからあがり、「関与していたのではないか」「主体者に近かったのでは」といった疑念が、早い段階から広がっていった。
SNSに寄せられた投稿の中には、「青木さんは本当に初見だったのだろうか」「初めて見たと言うには資料が仕上がりすぎている」という声も少なくなかった。資料の構造上、青木氏が完全に知らなかったという方が不自然ではないか、という指摘だ。
桑田氏は“積み重なった不信”を示唆 「3ヶ月に1回ザワザワが起きる」
やがて桑田氏は次のように投稿した。
「あなた(青木氏)と仕事していると3ヶ月に1回ザワザワすることが起きる。何度目? 今回で不信感が満杯になりました」
桑田氏の言葉には、今回の問題が“初めてではない”という示唆が込められている。これまでも青木氏の周囲で小さな火種が繰り返されてきたことを暗に伝えるような語り口だ。
「仏の顔も三度まで」。このフレーズを引用する視聴者も現れ、両者の間には以前から軋轢が存在した可能性が浮き彫りになった。青木氏の“初見”説明に対し、桑田氏が真っ向から疑義を呈する構図となり、視聴者の間にも賛否が分かれ始めた。
アドレアは全面謝罪 しかし消えない“主体者は誰か”という問い
翌日、青木氏とアドレアは公式サイトで謝罪文を発表し、無断引用を認め、資料の利用停止を明らかにした。著作権や肖像権に対する教育の徹底と、資料作成のチェック体制を見直すと説明した。同時に、構想段階だった番組の話は立ち消えとなったことも明らかにしている。
しかし謝罪文では、資料が完成形に至った経緯については詳しく触れられていない。誰が中心となって企画を設計し、なぜ青木氏がプロデューサーとして掲載されていたのか。その部分は、依然として霧の中にある。
数名の視聴者は冷静な目線を向ける。
「青木さんが本当に初見だったのかは本人と資料作成者しか知らない。憶測で断罪しても不毛」
「責任者だからといって、事実でないことまで背負う必要はない」
その一方で、「過去にも火種があったなら、今回も何かしら青木さんが関わっていたのでは」と疑う向きも強い。関与したが故に“名前が載った”、あるいは“企画の中心に置かれた”と見る立場だ。
“公開断罪”をめぐり議論が分裂 人間性をめぐる応酬に発展
一方、桑田氏の告発スタイルについても議論が起きている。
「状況確認もせず公開断罪したのは未熟だ」と批判する声もあれば、「むしろ公表しなければ問題は表に出なかった」と擁護する意見もある。
溝口勇児氏率いるWEIN/BACKSTAGE Group COOの西川将史氏は、桑田氏を擁護する立場の投稿や桑田氏のXで公開して青木氏を追い込む手口に強い拒否感を示した。
「文章の端々から品性の悪さが滲み出る」「公開の場で個人を断罪するのは最も安易」
という辛辣な表現で、青木氏を支持し、桑田氏の感情的な発信を批判した。
一方、桑田氏に寄り添う声もある。青木氏と関わったことで起きた“過去の火種”が何度も積み重なっていたのだとすれば、今回の怒りはむしろ当然だという立場だ。
騒動の核心は「初見」か「関与」か 真相はいまだ見えず
今回の件で浮上した最大の論点は、青木氏が本当に“資料の存在を知らなかったのか”という一点に尽きる。構想段階で関わっていたとされる青木氏に、完成形に近い資料が共有されていなかったとする説明は、状況証拠と照合すると矛盾が生じてしまう。
ただ、断言できる証拠は現段階ではない。資料の作成者や流出した経路、社内の意思決定フローなど、最も重要な部分は依然として外部から見えない。
結局のところ、青木氏本人と資料作成側しか知り得ない内部の真相が鍵を握っている。
“通販の虎”側は対応を検討 誓約書の精査へ
桑田氏は、誓約書の内容を踏まえた上で公式の対応を発表するとしている。騒動はアドレアの謝罪で一つの区切りを迎えたようにも見えるが、青木氏と桑田氏の溝が埋まる気配は現段階ではない。
令和の虎やリアルバリューの出演者たちは、それぞれ強い個性とブランド力を持つ。その影響力が大きいだけに、一度火がつけば事態は加速度的に拡大する。今回の事件は、その構造を象徴するような騒動となった。
視聴者や企業にしてみれば、通販の虎以外にも、消費者に向けて自社製品を訴求できる面白い番組が増えることはポジティブに捉えられるだろう。そもそも、ビジネス自体が、多くの場合がパクリあいであり、ときに切磋琢磨しながら、ときにガチンコのパワーゲームとなりながら、強者が生存していく舞台となる。
ただ、本来内部資料ですまされるレベルのものが公となってしまった以上、今回の件は青木氏やアドレアに非があることは間違いない。ライバルを搔き消したという点で、今回は桑田氏の初手からフル開示でいく対処の仕方の巧みさが目立つ結果となったとは言える。
それにしても、青木氏には前科があるというような桑田氏の言いぶりを見るに、今回の真相がどう転ぶのか。青木氏の“初見”という一言は、今後も何か炎上した際に、しばらく視聴者の間で検証され続けるネタになりそうだ。



