
11月15日の「生コンクリート記念日」に合わせ、フジプレコン株式会社(愛知県豊橋市)は、建築デザイン事務所ひとともり株式会社(京都府)と共同で、新建材ブランド「BYC(バイ・コンクリート)」の公式サイトを公開した。廃棄されてきた余剰コンクリートを再利用し、建築用タイルとして再生する取り組みを紹介する。
「捨てられるもの」から「使い続けられるもの」へ
「BYC」は、高速道路や鉄道などの社会インフラを支えるコンクリート製品を製造するフジプレコンが、製造過程で発生する余剰コンクリートを再利用して開発したタイルだ。これまで廃棄処分や埋め立てに回されていた材料を活用し、炭素排出の削減と廃棄物処理費の抑制を両立する。
素材の強度は通常の高強度コンクリートと同等の60N/㎟級で、耐久性にも優れている。仕上げには手作業のゆらぎをあえて残し、クラフト感と工業製品としての精度を共存させた。壁面や床面だけでなく、カウンターや外構にも応用できる柔軟なデザイン性を持つ。
職人の手仕事とサステナビリティの融合
建築家の長坂純明氏(ひとともり代表取締役)は「コンクリートは構造材でありながら、仕上げ材としての美しさも秘めている」と語る。プレキャスト製品を設計段階から建築意匠に取り入れることで、廃棄を出さない循環型建築を目指したという。
一方、フジプレコンの松林克法社長は「社会インフラを支える企業として、持続可能な素材活用を次の世代に伝えたい」と強調する。BYCは、余剰コンクリートを再資源化するだけでなく、素材そのものの可能性を再定義する建材ブランドとして位置づけられている。
建築の新しい景観をつくる
公式サイトでは、実際の施工事例も公開されている。住宅のキッチン壁面や店舗のカウンター、アプローチ階段など、用途に応じて15mm・30mm・60mmの厚みを組み合わせることで、多様な空間デザインを実現している。
「BYC」は、“By Concrete=コンクリートによる再生”を意味する。産業副産物を活かしたこの試みは、建材業界の脱炭素化や循環型社会への転換を象徴する動きとなりそうだ。




