
俳優・勝村政信(62)が関係を持った30代の女性経営者との間で、不倫と性的被害を巡る深刻なトラブルが起きていた。
事件の構図を丹念に追うと、驚くべきことに、登場人物のすべてが“加害者”でもあり“被害者”でもあるという倒錯した実態が浮かび上がる。
不倫の始まり──「離婚調停中」という言葉の罠
勝村と女性A子さんが出会ったのは昨年12月。知人の紹介で知り合い、当初は「友人として飲みに行く間柄」だったという。
ところが、海外でのオフを終えた勝村が帰国した際、空港でA子さんに「これからずっと一緒にいよう」と告げた。A子さんは既婚者との関係にためらいを見せたが、勝村は「妻とは離婚調停中」「15年以上別居しており、不貞にはあたらない」と説明した。
その言葉を信じたA子さんは、次第に心を許していく。
この不倫関係と、後に発生する性的被害トラブルは「女性セブン」の取材で判明した。勝村は30年以上連れ添った妻と娘がいる“家庭人”である。番組で娘とのエピソードを語り、SNSで結婚報告をするなど、世間的には「家族思い」のイメージが強い。だがその裏で、新たな女性と密かな関係を築いていた。
この時点で、彼の「家庭」と「恋愛」は二重構造になった。つまり最初の一手からすでに、誰かを傷つける芽はあったのだ。
半同棲の日々、崩れていく均衡
交際が始まると、A子さんは勝村の自宅に通い、やがて私物を持ち込むようになった。化粧品、衣類、常備薬――少しずつ生活の痕跡が積み重なり、二人は“夫婦のような関係”に近づいていった。
勝村は彼女のために寝具を新調し、手料理を褒め、テレビ番組の裏話を語る。彼女もまた、仕事を終えるとまっすぐ彼のもとへ向かう日々を続けた。
だが、穏やかな時間は長くは続かない。
「彼は気分の波が激しいんです。些細なことで突然怒鳴ったかと思えば、次の瞬間に涙ぐんで謝る。冷蔵庫の扉が数秒開いたままだと、無言で近寄って閉めるような神経質さもありました」
勝村は役者としての矜持が強く、自身を律しようとするストイックさを私生活にも持ち込んでいた。
だがそれは、相手にも自分の理想を求める“支配”のかたちでもあった。
A子さんは一日に何十件も届くLINEに返事を欠かせず、夜には数時間のテレビ電話で“役者論”を聞かされる。未返信のままだと「なぜ返さないのか」と問い詰められた。
最初は“情熱的な人”と受け取っていたA子さんも、次第に心がすり減っていった。
「彼と一緒にいると、自分がどんどん小さくなっていく気がしました。笑っても、黙っても、どこかで地雷を踏む。いつのまにか、彼の機嫌で一日の気分が決まるようになっていた」
愛情と束縛の境界が曖昧になるとき、関係の均衡は音を立てて崩れる。
勝村は「離婚したら一緒になろう」と繰り返したが、離婚の話が具体化することはなかった。
A子さんの胸には、「私は何のためにここにいるのだろう」という虚しさが広がり始めていた。
性的被害の夜──沈黙の中で踏みにじられた尊厳
今年4月中旬の大雨の夜。勝村から「一番近しい友人たちと飲む」と誘われ、A子さんが会場を訪れると、そこには男性6人がいた。
俳優仲間や後輩たちを交えた気楽な集まり――のはずだった。
笑い声とグラスの音が重なるなか、A子さんは彼の“世界”の中に受け入れられたような気がしたという。
だが、その錯覚はすぐに打ち砕かれる。
終盤、勝村が会計で席を外し、A子さんがトイレに立った瞬間、事件は起きた。
「狭いテーブルの間を通ろうとしたとき、不意にお尻をわし掴みにされました。肛門に指が入るほどの力で押しつけられ、体が固まりました」
振り返ると、勝村の後輩俳優・Xがニヤリと笑ってうつむいていたという。
場の空気を壊せば、勝村の顔に泥を塗る――そんな一心で、A子さんは「そういうことはやめてください」と小さく告げるしかなかった。
帰り道、彼女は震える声で勝村に打ち明けた。
だが返ってきたのは、「え〜マジで。アイツやばいね」という軽い一言。
立ち止まりもせず、彼は「アイツのことよく知らねぇし!」と逆ギレし、玄関の扉をバタンと閉めた。
雨音のなか、A子さんはずぶ濡れのまま立ち尽くした。
翌日、LINEで改めて事情を伝えると、勝村からは《あなたが傷ついたのは僕の責任です。本当にごめんなさい》というメッセージが届いた。
だが、Xから謝罪の言葉はなく、A子さんは弁護士に相談。警察へ被害届を提出し、“わいせつ事件”として受理された。
この時点で、恋愛は完全に終わりを告げ、物語は法の領域へと踏み込んだ。
裏切りの連鎖──「味方」が敵になる瞬間
事件後も、勝村は当初「協力する」と話していたという。
だが事態が表沙汰になりかけると、態度は一変。弁護士を通じてA子さんに「今後一切連絡してくるな」と通達した。
しかも彼が選んだ代理人は、加害者とされるXと同じ弁護士だった。
A子さんは「彼もXの行為を容認したのだと思った」と泣き崩れた。
勝村は「Xに電話をかけ、事実を認める発言を録音して送った」「警察が正式に動く前に証言を集めるのは難しいと説明した」と主張する。
また、「A子さんに誤解を与えたのは自分の落ち度」としながらも、結果的にすべての関係を断った。
つまり、守るべき相手を切り捨て、加害者と同じ側に立ったのである。
A子さんにとって、最も信頼していた“味方”が裏切りに回ることほど残酷なことはない。
そして勝村にとっても、この選択が自らの俳優人生を深く傷つけるものになった。
人間関係の崩壊は、善悪の区別ではなく、“恐れ”と“保身”の連鎖が生んだ結果だった。
誰も正義ではない──“全員悪い”事件の本質
この事件に「被害者と加害者」という単純な線引きは存在しない。
勝村は家庭を裏切り、後輩を呼んだ場で女性を危険にさらし、最後は沈黙した。
A子さんは既婚者との関係に踏み込み、危うい環境に身を置いた。
後輩俳優Xは言語道断の行為を行い、謝罪もないまま沈黙している。
どの行動も“人としての一線”を越えている。
そして、それぞれの“悪意なき悪行”が絡み合い、誰も救われない構図を生み出した。
不倫、上下関係、沈黙――。芸能界に根強く残る“緩さ”と“隠蔽”の文化が、この事件を成立させた温床でもある。
結局のところ、この出来事は一人の俳優のスキャンダルではなく、日本のエンタメ業界が抱える倫理の空洞を映し出している。
残された課題と業界の責任
警察の捜査は進行中で、Xは近日中に事情聴取を受ける見通しだ。
しかし、問題は捜査だけに留まらない。
倫理観を失ったまま築かれる人間関係、上下関係による沈黙、そして芸能界に蔓延する“身内意識”。
誰もがその甘さの中で罪を共有している。
不倫、わいせつ、裏切り――。
それぞれが少しずつ間違い、結果として全員が悪人となった。
この事件は、単なるスキャンダルではなく、「誰もが正義ではない」現代社会の縮図である。



