
NHK連続テレビ小説『ばけばけ』で、主演・高石あかりの婿役を演じる俳優・寛一郎が大きな注目を集めている。
視聴者の間では「松野家がホラーに見える」「婿さんが可哀相すぎる」といった声が相次ぎ、朝ドラとしては異例の“家庭ホラー”現象に。
前回話題となった「理不尽すぎる家族関係」から数話、いま銀二郎が置かれた境遇に共感とざわめきが広がっている。
視聴者が震えた「松野家の闇」 優しさの裏に潜む恐怖
朝の光が差し込む松野家の居間。
笑い声が響くその風景は、かつて「貧しくも温かな家族」として多くの視聴者に愛されていた。
だが、そこに新たに婿入りした一人の青年を境に、空気が変わった。
NHK連続テレビ小説『ばけばけ』で主演・高石あかりの相手役を務めるのは、俳優・寛一郎。
彼が演じる銀二郎は、武士の家に生まれながら、厳格な父に反発し、松野家に婿入りした青年だ。
だがそこは、貧困と家父長制の影が色濃く残る“閉ざされた家”。
一見、優しく見える家族の言葉の奥に、鈍く冷たい刃が潜んでいた。
「馬車馬殿」と揶揄され、給料のほとんどを借金返済にあてがわれる銀二郎。
それでも笑って働き続ける彼の姿に、SNSでは
「ばけばけ、ホラーに思えてきた」
「婿さん、可哀相すぎる」
「あの家族、外から見ると恐ろしい」
といった声が噴出した。
コメディタッチの明るい演出の裏に、視聴者は“違和感”を感じ取っている。
まるで、温かい家庭の皮を被った“異界”を覗いてしまったような、そんなざらりとした不安が、毎朝のテレビの前を覆い始めた。
“異物”としての銀二郎 朝ドラが描く「家の外側」からの視点
『ばけばけ』が異彩を放つのは、銀二郎という“外から来た人間”の視点を通じて、家族という小宇宙を見せる構成だ。
松野家の内部で長く培われてきた価値観は、外から来た婿にとっては理不尽の連続でしかない。
しかし誰もが悪人ではない。そこにこそ、この物語の怖さと深さがある。
《ばけばけはホラーだったんだと気づいた。誰も悪くないのに怖い》
《松野家は内から見れば温かいけど、外から見ると閉鎖的な家そのもの》
SNSに流れる言葉たちは、まるで視聴者自身が銀二郎と同じ“異物”の立場になってドラマを見つめている証でもある。
理不尽な愛情、息苦しい絆。
そこに映るのは、現代の家庭にも通じるリアルな構造だ。
現実でも試練 “とばっちり”の中で見せた俳優の底力
そんな銀二郎を演じる寛一郎も、ドラマの外で試練を経験していた。
共演予定だった俳優・清水尋也被告の逮捕により、撮影スケジュールが大幅に変更されたのだ。
再撮が必要となり、他の仕事との調整に奔走。
まさに「予定調和の崩壊」という現実の“ばけばけ”が、制作現場を直撃した。
それでも彼は黙々と現場に立ち、再撮に応じたという。
一つひとつの台詞に重みを宿す彼の姿勢に、関係者は「精神力がすごい」と語る。
ドラマの中でも外でも、“理不尽な状況に耐える男”を演じているのだ。
名優の血を超えて 寛一郎という俳優の“沈黙の演技”
俳優・佐藤浩市の息子、祖父は三國連太郎。
名優の血筋を持つ寛一郎だが、決して“家の看板”に頼らない。
デビュー作『ナミヤ雑貨店の奇蹟』以来、常に「自分の足で立つ」ことを貫いてきた。
『ばけばけ』で見せる銀二郎の演技は、派手さのない“沈黙の芝居”。
目の奥で感情を押し殺すような静かな演技に、視聴者は彼の成長を感じ取っている。
《佐藤浩市さんの若い頃を見ているよう》
《無言の表情に説得力がある》
そんな声が寄せられるのも、納得だ。
物語が進むにつれ、銀二郎はおそらく松野家を去ることになる。
だが、寛一郎という俳優は、この作品を通して確かに“役者としての家”を築き始めている。