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大阪で中国系企業設立ラッシュ 経営・管理ビザ3000万円要件で「駆け込み移住」拡大か

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あいりん地区、中国

大阪の街で、いま目に見えるほどの変化が起きている。法人登記簿を開けば、そこに並ぶのは中国語由来の社名ばかり。10月中旬から「経営・管理ビザ」の取得要件が大幅に厳格化される前に、駆け込みで会社を立ち上げる中国人が急増しているのだ。AERAの記事によると、制度の本来の狙いはスタートアップ誘致だったはずだが、現場で広がるのは“移住の抜け道”という現実である。

 

あいりん地区のビルで見た「名ばかりの会社」

西成区の「あいりん地区」。日雇い労働者の街として知られた一角に、最近は中国系の法人登記が集中している。あるビルの玄関を押し開けると、狭い廊下にいくつものドア。その前に貼られたプレートには、耳慣れないカタカナや漢字が並ぶ。ドアを叩いても反応はなく、中は薄暗く、人の気配はほとんどない。だが登記簿には「不動産業」「旅行業」「民泊経営」と堂々と記されている。

あいちん地区の歴史に詳しいある識者は「ここは実態のないペーパー会社置き場になっている」とSNSで警告する。かつて簡易宿泊所だった建物が、今や名義だけの企業で埋め尽くされているのだ。

 

ビザ改正を前に「急げ」と煽るSNS

現場の動きと呼応するように、中国のSNS「微博」では「今が日本移住のチャンス」「施行前に申請せよ」といった書き込みが飛び交う。中国のビザブローカーは「資本金500万円で済むのは今だけ」「教育も医療も享受できる」と甘い言葉を並べ、客を集めている。

だがジャーナリストの高口康太氏は「初回の許可は1年更新。次の更新からは新基準が適用される。ブローカーの誘い文句にのれば、むしろ困ることになる」とSNSで指摘している。

 

500万円から3000万円へ 制度改正が呼ぶ激震

出入国在留管理庁が発表した改正は、資本金要件を500万円から3000万円へと引き上げるものだ。6倍という跳ね上がり方に、SNSでは「衝撃」「ショック」といった声が相次いだ。

あいりん地区に詳しい識者も「中国人にとって今回の改正は激震だった」と語る。もっとも、富裕層にとっては3000万円は決して手が届かない金額ではない。微博には「3000万円ならまだ行ける」と前向きな投稿も少なくなく、制度改正が移住を止める決定打になるかは疑わしい。

 

「玉」も「石」も混じるビザ利用者

識者の声を聞いても評価は分かれる。日本総合研究所の石川智久氏は「中国人はすでに87万人、山梨県の人口を超え、日本語を使わずに暮らせる地域すらある。国別上限を検討する時期に来ている」とSNSで語る。一方で経済ジャーナリストの浦上早苗氏は「日本は移民受け入れの歴史が浅く、諸制度が緩いのは事実」と冷静に分析する。

他にも、「経営・管理ビザを利用する人材は玉石混交だ。起業志向の留学生まで締め出すのは日本にとって損失だ」と訴える者も。実際、日本で学び、社会に根を張った外国人留学生が独立を志す場合、これまでの500万円は手の届く範囲だった。3000万円の壁は、彼らにとってあまりに高い。

 

住民トラブルと制度の盲点

大阪に集中する特区民泊は、全国の95%を占める。ごみ出しのルール違反、夜中の騒音、路上での観光客トラブル──現場の住民は日々その対応に追われている。大阪市は新規申請停止を検討しているが、既存施設への監視体制は不十分だ。国はこうした事態を予測できたはずなのに、対応を自治体任せにしてきたのではないか。国策のツケを市民が払っている格好だ。

 

3000万円は高いのか安いのか 国際比較で見える“微妙さ”

国際比較をすれば、日本のハードルの低さが際立つ。シンガポールでは移住ビザに約2億5000万円規模の投資が必要で、米国のEB-5投資ビザは80万ドル(約1億2000万円)が条件だ。

日本の3000万円は、資金力のある中国人にとって依然として「割安」である。松村教授は「移住は止まらない」と断言する。

 

移住政策を曖昧にしたままの日本

大阪での中国系企業設立ラッシュは、経営・管理ビザ制度の盲点を突いたものだ。改正で悪用を防げる可能性はあるが、同時に優秀な人材を排除する危うさも残る。3000万円という「微妙な金額」が移住を抑止できる保証はない。国が移住政策を明示せず、ビザ制度に依存してきたことのツケが、いま大阪で顕在化している。

問われているのは、制度改正だけでなく、移民社会にどう向き合うかという国家としての覚悟だ。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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