
大阪・関西万博の盛り上がりが最高潮に達する一方で、ネット上では公式グッズやチケット販売を装った偽サイトが急増している。黒や桜色の“会場限定ミャクミャク”が割引価格で並ぶ一見お得な表示の裏には、商品が届かない、個人情報を盗まれるといった深刻なリスクが潜んでいる。会場で熱狂が広がる一方、ネットの世界では何が起きているのか。
万博会場の熱狂と裏側の影
閉幕まで残り1カ月を切った大阪・関西万博は、累計来場者数がすでに2000万人を突破し、会場は連日多くの人で賑わっている。9月22日の朝、東ゲート前には早くから来場者の列ができ、東京駅では「ミャクミャク」と老舗駅弁店がコラボした「ひっぱりだこ飯」を求めて夜明け前から100人以上が並んだ。販売開始からわずか7分で完売するなど、万博の熱気は最高潮に達している。
しかし、その盛り上がりに比例するように、ネットの世界では思わぬ問題が広がっていた。
セール価格に潜む偽サイトの罠
人気キャラクター「ミャクミャク」のぬいぐるみが、定価3万9000円のところを2万3400円に値下げ。そんな魅力的な表示が並ぶサイトが登場している。一見すると本物に見えるが、実際には商品が届かないばかりか、住所やクレジットカード番号を抜き取られる危険がある。
さらに「黒ミャクミャク」や「桜色のミャクミャク」といった会場限定のはずの商品まで堂々と出品され、値引きされている。熱気にあおられ、欲しい気持ちを突かれると、つい購入ボタンを押してしまいそうになるが、それこそが罠だ。
セキュリティ会社トレンドマイクロの調査によれば、9月18日までのわずか2週間で、ミャクミャクを使った偽サイトが344件も確認された。デザインは本物と見分けがつかないほど精巧で、検索結果の上位に紛れ込むことさえある。
偽物を見抜くための視点
偽サイトは年々巧妙さを増しているが、違和感に気づくことで見抜ける場合もある。まず注目すべきはURLだ。大阪・関西万博の公式サイトは「expo2025.or.jp」、公式オンラインストアは「expo2025shop.jp」である。わずかに異なる文字列が含まれていれば、それは偽物の可能性が高い。
また、大幅な値引き表示にも注意が必要だ。人気が高まる時期に、正規品が値下げされる理由はほとんどない。不自然なレビューが並んでいる場合も多い。食器に「とてもおいしかった」と書かれているなど、商品と関係のない感想は典型的な例だ。さらに、支払い方法が銀行振込や仮想通貨に限られている場合も危険のサインだと考えてよい。
万一入力してしまったら
万博協会は公式ホームページで「偽サイトにアクセスしたり、個人情報を入力しないように」と警告を出している。それでも万一、カード番号やパスワードを入力してしまった場合は、ただちにカード会社に連絡し利用停止や再発行を依頼すべきだ。同時に、同じパスワードを使い回しているサービスがあれば全て変更する必要がある。
被害が疑われる場合には、フィッシング対策協議会や警察への通報も有効だ。全国共通の「#9110」や、フィッシング対策協議会の通報フォームを活用すれば、被害拡大を防ぐことにつながる。
本物を手にするために
正規の万博グッズを安全に手に入れる方法はシンプルだ。公式オンラインストアか、会場内のオフィシャルストアを利用するしかない。限定品の多くは現地でしか入手できないため、どうしても欲しい場合には早めに来場予約を取るしかない。
偽サイト被害を防ぐために
大阪・関西万博の華やかな盛り上がりの裏で、偽サイトが暗躍している。黒ミャクミャクや桜色の限定品をうたう“セール価格”に心を動かされた瞬間、個人情報は狙われているかもしれない。正規のURLをブックマークし、少しでも違和感を覚えたら利用を避けること。安全に万博を楽しむためには、一人ひとりの慎重な行動と情報リテラシーが欠かせない。