
新千歳空港の駐車場が、この秋、とてつもない変化を迎える。車で空港に向かう人なら誰もが直面したことがある「満車」の文字。そのストレスを解消するため、空港は一つの“劇薬”を投与した。それが、最大3倍を超える駐車料金の値上げだ。突然の発表に、利用者からは悲鳴に近い声が上がっている。この料金改定は、私たちの旅のスタイルをどう変えるのか。そして、空港の混雑は本当に解消されるのだろうか。今、知っておくべき空港の未来と、賢く利用するための道筋を追った。
新千歳空港、慢性的な満車状態の現実
北海道の空の玄関口、新千歳空港は、近年、過去最高の旅客数を記録し、その賑わいは留まるところを知らない。しかし、その一方で、空港の駐車場は深刻な問題を抱えていた。
平日も、ターミナルに直結するA・B駐車場はびっしりと車で埋まり、立体駐車場の一階には「満車」の文字が掲げられるという。この慢性的な混雑は、航空機を利用する人々の利便性を著しく損なうだけでなく、空港周辺の交通渋滞の一因ともなっていた。空港の駐車場の収容台数は現在、約5,500台分だが、混雑時にはこの台数では到底賄いきれない状況が続いていたのだ。
空港駐車場の混雑の背景には、料金設定が公共交通機関と比較して安価だったことが挙げられる。特に、24時間ごとの最大料金1,200円という設定は、札幌からJRや空港バスを利用する往復料金よりも割安であったため、飛行機を利用する数日間、車を駐車場に停めっぱなしにする利用者が多かった。ピーク時には、このような24時間利用者が全体の3割を占めているという。
駐車料金は最大3倍に!利用者に迫られる新たな選択
こうした状況を改善するため、北海道エアポートは料金の大幅な引き上げを決断した。2025年10月10日より、すべての駐車場の料金が改定され、特にA・B駐車場とC駐車場は、従来の料金から大きく引き上げられる。
新料金体系は以下の通りだ。
A・B駐車場(ターミナル直結)
- 1時間から2時間までの料金:300円から1,000円に値上げ(約3.3倍)
- 24時間ごとの最大料金:1,200円から3,500円に値上げ(約2.9倍)
- 土日祝日など、特に混雑する「多客期」の料金:さらに1,000円上乗せされ、最大4,500円に
C駐車場(無料シャトルバス運行)
- 24時間ごとの料金:500円から2,500円に値上げ(5倍)
- 多客期の料金:3,000円に値上げ(6倍)
料金改定の狙いは公共交通機関の利用や送迎による短時間の利用へのシフト。この駐車料金の改定により混雑緩和を進めていくようだ。
しかし、この大幅な値上げは、利用者にとって大きな負担となる。利用者からすれば、”空港直営の駐車場ではない選択肢”を探すことも検討にいれることだろう。
多くの利用者にとって、これまでの料金設定が自家用車での利用を後押ししていたのは明らかだろう。今回の値上げは、そうした利用者の行動を根本から変えざるを得ない。
料金改定だけではない!賢く利用するための3つの選択肢
今回の料金改定は、単なる値上げで終わる話ではない。北海道エアポートは、利用者の利便性を確保しつつ、駐車場の混雑を解消するための新たな対策も同時に発表している。私たちは、この変化を理解し、賢く対応することで、今後の旅をより快適にすることができる。
1. 新設されるD駐車場を有効活用する
料金改定と同時に、新たな臨時駐車場であるD駐車場の整備計画も明らかになった。D駐車場は、ターミナルから約1.5km離れた場所に位置し、広さは最大3,000台まで拡張可能だという。まず、年内に1,000台分のスペースを確保し、12月末から混雑時にのみ開放される予定だ。そして、最も注目すべきは、その料金だ。D駐車場の料金は当面の間無料となることが発表されている。ターミナルまでの無料シャトルバスも運行される予定で、これは利用者にとって大きな朗報となるだろう。
ただし、注意が必要なのは、このD駐車場は「臨時」であり、混雑時のみの開放となる点。また、具体的な運用方法については現在検討中とのことだが、長時間の利用を想定しているわけではないと考えられる。それでも、送迎などで短時間利用する際には、料金を気にせず利用できる新たな選択肢となりそうだ。
2. 空港内の施設利用で駐車料金を割引・無料にする
北海道エアポートは、空港内の施設利用を促進することで、駐車場の混雑緩和を図る。空港内の店舗で3,000円以上の買い物をしたり、温泉や映画館などを利用したりすると、駐車料金が無料や割引になるサービスが拡充される。これは、単純に駐車料金を値上げするだけでなく、空港内の消費を促し、利用者にとってのメリットも生み出すWin-Winの関係を築こうという狙いがある。旅行の行き帰りに、空港内の施設で時間を過ごすことで、賢く駐車料金を節約できる。
3. 民間駐車場や公共交通機関の活用を再検討する
今回の値上げによって、新千歳空港の直営駐車場は、公共交通機関や周辺の民間駐車場と比較して、決して安価な選択肢ではなくなった。特に、数日間車を停める長期利用者は、空港直営ではない民間駐車場の利用を検討する価値がある。空港周辺には、空港まで送迎してくれる民間駐車場が多数存在し、料金も比較的安価な場合が多い。今回の値上げを機に、これらの民間駐車場の利用者が増加する可能性は高いだろう。
また、JR快速エアポートや空港連絡バスといった公共交通機関へのシフトも現実的な選択肢となる。これまでは自家用車の方が安価だったかもしれないが、料金改定後は、公共交通機関を利用する方が経済的になるケースも増える。
一方で、懸念されるのは、公共交通機関への利用者が増えることで、そちらの混雑が激しくなる可能性だ。今回の値上げが、結果的に公共交通機関の混雑をさらに悪化させることになれば、本末転倒となりかねない。この点は、今後の利用者の動向を見守る必要があるだろう。
まとめ:新千歳空港の未来と私たちの選択
今回の新千歳空港の駐車料金改定は、慢性的な混雑という長年の課題を解決するための重要な一歩である。料金引き上げという“痛み”を伴う一方で、新たな駐車場の整備や割引サービスの拡充といった“利便性”も同時に提供しようとしている。新千歳空港は、今後の利用状況を見ながら、立体駐車場の整備も計画しているという。これは、根本的な収容台数不足を解消するための長期的な計画であり、空港全体の機能向上を目指す姿勢がうかがえる。
この大転換期において、私たちは、ただ料金が上がったと嘆くのではなく、新たな選択肢を賢く見極める必要があるだろう。