
ロイター通信とAP通信は8月26日、イスラエルに対し、ガザ南部ハーンユニスにあるナセル病院への攻撃について全面的な説明を求めた。攻撃では両社と契約していたフリーランスのジャーナリストら5人が死亡し、国際社会から非難が高まっている。両社はイスラエルの調査約束を「透明性に欠ける」と指摘し、独立した検証を強く求めた。
ジャーナリスト5人が死亡
死亡したのは、AP通信のフリー記者マリアム・ダッガ氏、ロイター通信の寄稿者モアズ・アブ・タハ氏、カメラマンのフサム・アル・マスリ氏らで、他の記者も重傷を負った。彼らはガザ紛争下で数少ない現地発の証言を伝え続けてきたが、病院取材中に犠牲となった。
両社は声明で「国際法で保護される病院への攻撃で独立したジャーナリストが殺害されたことに強い憤りを覚える」と訴えた。
独立調査を求める声
ロイターとAPは、ベンヤミン・ネタニヤフ首相やカッツ国防相に宛てた書簡で「イスラエルは説明責任を果たしていない」とし、過去の調査でも真相が明らかにされなかった事例を引き合いに出した。声明は「イスラエルがライブ配信や証言を意図的に標的とした可能性がある」と言及し、報道の自由を脅かす深刻な問題だと警鐘を鳴らした。
繰り返される犠牲
ジャーナリスト保護委員会によると、2023年10月7日以降、ガザ紛争で殺害されたジャーナリストと報道関係者は少なくとも197人に上る。このうち189人がパレスチナ人であり、複数の事例では「標的型攻撃」が確認されている。国際社会では、紛争報道を担う記者が相次いで犠牲となっている現状への懸念が高まっている。
イスラエル側の反応
イスラエル軍は「ジャーナリストそのものを狙った事実はない」と主張している。しかしロイターとAPは「病院攻撃の後、救助活動中に二度目の攻撃が加えられた」と指摘し、国際法上の義務が果たされたのか疑問視した。外国人記者協会も同日、イスラエル軍と首相官邸に「即時の説明」を求め、「ジャーナリストを標的にする忌まわしい行為を止めるべきだ」と声明を出した。
報道の自由を守れるか
今回の攻撃は、イスラエルが外国人特派員のガザ入りを2年近く禁止してきた経緯とも重なり、独立報道の封じ込めと受け止められている。APとロイターは「独立系ジャーナリストに安全かつ妨害のない取材を保障せよ」と強調し、国際社会に広く支援を呼びかけた。声明の最後には「これは転換点となるはずだ。国際社会はジャーナリストを守るために行動してほしい」と記された。
イスラエル当局は現時点でこの要請に応じていない。国際社会の圧力が高まる中、透明な説明と報道の自由をめぐる対応が問われている。