
福岡市で0歳の女児と30代男性が新たにはしかに感染し、不特定多数の人と接触した可能性があると発表された。はしかは感染力が極めて強く、免疫を持たない人が感染するとほぼ確実に発症する。東京都内では今年の感染者数がすでに昨年の約3倍に達しており、全国的な拡大が懸念されている。はしかとはどのような病気で、今私たちは何に注意すべきなのか。
福岡で0歳児と30代男性が感染確認
福岡市は8月21日、0歳の女児と30代の男性が相次いではしか(麻疹)に感染したと発表した。2人に面識はなく、同じ建物内で空気感染した可能性が高いという。
市によると、30代男性は18日に発熱や発疹の症状が現れ、医療機関で診断を受けて感染が確認された。海外渡航歴はなく、ワクチン接種歴も不明だ。一方、0歳の女児は19日に発熱や鼻水の症状が出て、同様に感染が確認された。乳児であるため予防接種の対象外であり、免疫を持っていなかったという。
福岡市は2人が利用した交通機関や店舗を公表。不特定多数との接触があった可能性があるとして、市民に注意を呼びかけている。
東京都内でも急増 すでに昨年の3倍
一方、東京都では20代男性の感染が新たに確認された。男性は今月9日にタイから帰国後、発熱や鼻水、発疹の症状が出て医療機関を受診。検査の結果、はしかと診断された。これにより、都内の今年の感染者数は29人となり、すでに昨年1年間の約3倍に達している。都は「お盆や夏休みで人の移動が増える時期にあたり、さらなる拡大の恐れがある」として警戒を強めている。
はしかとは何か
感染力は極めて強い
はしか(麻疹)は、麻疹ウイルスによって引き起こされる感染症だ。感染力が非常に強く、免疫を持たない人が感染するとほぼ100%発症するとされる。
感染経路は主に3つ。空気中に浮遊するウイルスを吸い込む「空気感染」、咳やくしゃみの飛沫による「飛沫感染」、ウイルスが付着した物に触れることで起こる「接触感染」だ。特に空気感染の影響は大きく、同じ室内にいただけで感染する可能性がある。
主な症状
感染から10〜12日ほどの潜伏期を経て、まずは風邪に似た症状が現れる。
- 発熱(38℃前後)
- 咳、鼻水、くしゃみ
- 目やに、結膜の充血
- 口の中に白い斑点(コプリック斑)
その後、一度熱が下がった後に再び高熱(39〜40℃)が出て、赤い発疹が全身に広がるのが特徴だ。合併症として肺炎や脳炎を引き起こすことがあり、重症化すると死亡することもある。患者1,000人に1人が亡くなるとされるほど危険な病気である。
手洗いやマスクだけでは防げない
インフルエンザや新型コロナウイルスと同様に、手洗いやマスクは一定の予防効果を持つ。しかし、はしかに関してはそれだけでは十分ではない。空気感染のリスクが極めて高いため、閉鎖空間での感染を完全に防ぐことは難しい。唯一有効な対策はワクチン接種だ。麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)を2回接種することで、99%以上の人が免疫を獲得できるとされている。
なぜ今はしかが増えているのか
海外からの持ち込み
東京都で確認されたケースのように、海外旅行や留学などで感染して帰国し、国内で広がるケースがある。東南アジアやアフリカの一部地域では、いまだに流行が続いており、渡航時の注意が必要だ。
予防接種率の揺らぎ
一方で、国内の予防接種率が100%に達していないことも拡大要因の一つだ。2回の接種を受けていない成人は少なくなく、特に20〜40代の一部に免疫が不十分な層が存在する。
感染したかもしれないと思ったら
はしかは潜伏期間が10〜12日と長いため、感染の有無がすぐには分からない。その間に多くの人と接触してしまう可能性がある。
もし発熱や発疹などの症状が出た場合には、必ず事前に医療機関へ電話連絡する、受診時にはマスクを着用する、公共交通機関の利用は控えるなどといった対応が必要となる。
早めに受診することはもちろんだが、拡散を防ぐために他者との接触をできる限り避けることが重要となる。