
コンビニ大手のミニストップが、一部店舗で「手づくりおにぎり」や弁当、総菜の消費期限を偽装して販売していたことが発覚した。全国の23店舗で確認され、発表を受けて同社は全店で店内調理のおにぎりや弁当、総菜の販売を中止する措置を取った。健康被害の報告は現時点で確認されていないが、日常的に利用する消費者の信頼は大きく揺らいでいる。
発覚の経緯
問題が明らかになったのは、2025年6月下旬。社内調査の中で、一部店舗において二重にラベルが貼られたおにぎりが見つかった。通常、店内で調理した食品には製造直後に消費期限を明記したラベルを貼る必要がある。だが調査の結果、時間を置いてから貼ることで実際よりも消費期限を延長する行為や、一度陳列した商品に新たなラベルを貼り直すといった行為が確認された。
対象となったのは、埼玉、東京、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7都府県にある23店舗。大阪府内だけで11店舗と、関西圏に集中していることも特徴だ。消費期限の延長は2〜3時間程度であったが、食品の安全管理を揺るがす重大な問題である。
偽装の実態
ミニストップが明らかにした偽装行為は二種類に大別できる。
第一に「消費期限ラベルの遅延貼付」。製造から1〜2時間後にラベルを貼ることで、表記上の期限を延ばしていた。
第二に「ラベルの貼り直し」。一度売り場に並べた商品を引き上げ、元のラベルを剥がして新たな消費期限を付け直すという行為である。
こうした不正は店舗スタッフによる判断で行われた可能性が高い。背景には、売れ残りを減らしたいという経営上の思惑や、食品廃棄を減らす意識があったのではないかとの見方もある。しかし、いかなる事情があっても「消費者を欺く行為」に正当性はない。
影響範囲と対応
今回の不正を受け、ミニストップは全国約1600店舗で店内調理のおにぎり、弁当、総菜の販売を停止した。おにぎりと弁当は8月9日から、総菜は8月18日から中止となっている。なお、工場で製造された商品については問題は確認されておらず、販売が続けられている。
同社は保健所に報告を行い、調査と改善策が完了するまで販売停止措置を継続する方針を示した。「ご不安とご心配をおかけしておりますことをおわび申し上げる」との声明も公表し、原因究明と再発防止に取り組む姿勢を強調している。
健康被害と消費者への影響
現時点で健康被害の報告はない。延長されたのは数時間程度であるため、直ちに深刻なリスクが出たとは考えにくい。しかし、消費者が最も恐れるのは「知らされないリスク」である。ラベルを信じて商品を購入した以上、その信頼を裏切る行為は結果の大小を問わず重大だ。
特に問題なのは「見えない偽装」である点だ。消費者は見た目や包装から判断できず、企業が誠実に管理していると信じるしかない。その信頼を損なった影響は、単におにぎりの販売休止にとどまらず、企業全体への信頼失墜へと広がる。
今後の課題
今回の問題は、消費期限管理という食品業界の根幹にかかわる不正であり、たとえ数時間の延長であっても消費者との信頼関係を揺るがす結果を招いた。今後問われるのは、まず調査結果をどこまで透明性をもって公開できるかという点である。さらに、再発防止策を形式的なものにとどめず、具体的にどのように実行するのかも重要になる。そして、加盟店を含めた現場の実態をどのように改善していくのかも避けて通れない課題だ。消費者が再び安心して商品を手に取れるようになるまでには、時間と誠実な努力が欠かせない。
参照:消費期限の表示誤りについてのお詫びとお知らせ(ミニストップ株式会社)