
SNS上で、女性活動家平野雨龍(ひらの・うりゅう)氏を巡る論争が、収束の気配を見せていない。日本国内で参院選に立候補し、23万票を獲得した注目の人物でありながら、その発言や行動をめぐり「本当に日本の政治家を目指す資格があるのか」という根本的な疑問が広がっている。
詳報を一度お伝えしているが、8月4日に暇空茜氏が、平野氏の過去の投稿を調べながら、「平野雨龍香港人確定!」とSNSでツイートするなど、論争の中心は、「Instagram投稿の二重性」や「政治的忠誠心の所在」といった問題に移っていった。
さらに一部の論者がX上で次々と旧発言を発掘することで、火種はくすぶり続けている。
香港と心を重ねる理由 虐待と喪失体験が背景に
平野氏は千葉県出身の日本人で、本名は荻野鈴子氏とされる。だが彼女は過去、自身のブログに「虐待育ちで帰れる故郷がない私にとって、香港は故郷」と記している。家庭内での苦しい過去が彼女をして「香港」という他者の自由闘争に心を寄せさせた構図が見えてくる。
その共感は単なる政治的な関与ではなく、むしろ精神的帰属先としての香港に向けられているとも受け取れる。だが、その思いがあまりに強いため、彼女の政治的行動が「日本国民との距離感」を生んでしまっているのもまた事実である。
発端はInstagram投稿の「言語差」 異なるメッセージの衝撃
もっとも大きな波紋を呼んだのは、彼女のInstagramに投稿された2つの言語によるメッセージだった。
- 日本語投稿:「新宿で演説します🥳」
- 広東語投稿:「これからは選挙に向けて日本人向けの投稿に切り替えますが、私の心は常に香港のためにあります😤」
見た目は同じ投稿でも、伝える内容がまったく違うという指摘が相次ぎ、「日本では愛国者の顔をしつつ、本心は香港のために動いているのでは」と不信感が広がった。
この「二重投稿疑惑」がネットで拡散されたことで、平野氏への疑念は一気に高まった。
「私は香港のために立ち上がっている」 過去投稿に残された本音
さらに拡散されたのが、2022年にX(旧Twitter)で発信されたとされる以下の内容だ。
「いまは右翼も左翼も沖縄も安倍も何も関係ない。全ては香港の為に、自分の思想関係なく立ち上がってる」
この発言に対し、「香港を守ることにすべてを捧げる」とする姿勢に共感する声がある一方、「日本の政治に出ようとしている人間の言葉とは思えない」「思想ではなく“香港のためか否か”が行動基準なら、日本国民の代表になれるのか」といった批判も相次いでいる。
暇空茜氏も動画で批判「投稿だけでスパイ呼ばわりされてもおかしくない」
この騒動に火を注いだのが、保守系インフルエンサーとして知られる暇空茜氏のSNSの投稿や動画の数々。
彼は動画内で、Instagram投稿の原文を丁寧に読み上げたうえで、「これ、日本語と広東語で“顔”が違いすぎる。演説に来てくださいという日本語と、“私の心は常に香港と共にあります”という広東語。これだけで“政治的なスパイ”と呼ばれても仕方ないレベル」と断じた。
また、平野氏が自身の政治活動について「逃亡中の香港人には無理でも、私にはわずかな可能性がある」と語った投稿について、「“他国で”という表現からして、自身が日本人でなく香港人であると読み取れてしまう」と指摘。「あの文脈は完全に主語が香港人の視点になっている」と批判した。
政治活動の原動力は“故郷なき者”としての共鳴か
こうした政治姿勢の背景にあるのが、彼女自身の過去である。平野氏は自身のブログでこう記している。
「虐待育ちで帰れる故郷が無い私にとっては、香港が故郷なのです」
日本で居場所を持てなかった過去と、香港の自由が脅かされていく現実が重なり、「香港こそ私の守るべき場所」との思いを強めたとされる。この「パーソナルな動機」こそが、彼女の政治姿勢の源泉だという解釈もある。
しかし、私的な共鳴が公共の政治領域に持ち込まれることで、「帰属意識」や「日本国民との連帯」に齟齬をきたしているというのが、批判派の主張である。
支持者の声:「中国共産党に最も厳しい女性の一人」
もちろん、平野氏を擁護する声もある。
代表的なのが、彼女が選挙で得た23万票という支持の大きさだ。中国共産党の脅威を訴える姿勢は、「台湾や日本の自由主義にとって有益」「ここまで一貫して反中を貫く人物は他にいない」と評価されている。
3日に投稿された以下のメッセージも、注目を集めた。
「香港を守る事は日本を守る事です」「台湾が陥落すれば、次は日本です」「中国共産党は滅びる気配が無く、米国も国連も抑止力として機能していません」
この投稿には「よくぞ言ってくれた」「この人しかいない」という声もある。彼女の訴える「香港=日本の防波堤」という論点に賛同する人々は少なくない。
平野氏は沈黙 SNSでの発信は減少傾向に
一方で、論争がヒートアップする中、本人のアカウントは4日はリツイート以外の投稿を控えている。こうした沈黙が、「都合の悪い話には答えないのか」という批判を呼ぶ一方、「下手に騒ぎに乗らない冷静さ」と評価する声もある。
平野氏をめぐる論争は、「思想と所属」「感情と論理」が複雑に絡み合う問題だ。
「香港を守ることが日本を守ること」という主張には一定の説得力があるのは確かだが、政治家を目指すのであれば、日本の有権者に対して明確に説明責任を果たす必要があるのではないか。同時に多くの人は反対に「平野氏が日本の政治家になったら香港という中国国内の問題に日本が利用される」という懸念も大きい。
今後、彼女が公の場で語る内容が、こうした「疑念」にどう答えるのかに注目が集まる。
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