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日機装、水圧検査未実施問題で特別調査報告書を公表 1970年代から続いた“慣習”に終止符

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日機装、水圧県債未実施問題の報告書を開示

精密機器大手の日機装株式会社(東証プライム:6376)は8月1日、一部ポンプ製品において社内規定に反して水圧検査が未実施であった問題に関し、第三者による特別調査委員会の報告書を受領したと発表した。調査報告書は、検査未実施が1970年代から継続していた事実を明らかにするとともに、社内の品質保証体制や内部統制の脆弱性を厳しく指摘。

再発防止策として、ガバナンス体制や検査工程の抜本的な見直しを求めている。

 

問題となった製品は社会インフラや化学プラント向けの重要部品

今回の問題の対象となったのは、同社が製造する「ノンシールポンプ(キャンドモータポンプ)」および「ミルフローポンプ(往復動ポンプ)」の一部である。これらのポンプは、化学工場・半導体製造装置・原子力関連設備などの産業インフラで用いられ、液体やガスを密閉環境下で安全かつ正確に移送するための精密機器だ。

特にノンシールポンプは、モーターとポンプが一体化された構造で密閉性が高く、有害物質や高圧液体を扱う用途で採用される。ミルフローポンプは、繰り返し動作によって流体を定量的に送り出す装置で、高精度が求められる医薬・食品・水処理などでも使用される。いずれも、設計通りに圧力に耐えるかを確認する「水圧検査」は、安全性と性能確保の観点で極めて重要なプロセスである。

 

半世紀にわたる検査逸脱の実態

問題の発端は、2024年10月に同社インダストリアル事業本部の製造現場で発覚したノンシールポンプおよびミルフローポンプに対する水圧検査の未実施。調査の結果、遅くとも1970年代から一部製品に対し検査が行われず、そのまま顧客に出荷されていたことが明らかとなった。しかも、検査を実施したと虚偽記載した試験成績表が顧客に提出されていた。

当該検査は、社内では「耐圧検査」として全数実施が義務付けられていたが、製造現場の裁量により、必要と判断された一部の製品だけに限定して行われていた。製造部門内のチェックシートには実施・未実施の区別が明確に記載されず、品質管理部門も全数の持ち込みを促さないまま、結果として検査未実施が常態化していた。

 

ミルフローポンプでは是正遅れ

特筆すべきは、ノンシールポンプについては2021年3月に是正措置が講じられた一方、ミルフローポンプでは是正が実施されず、2024年10月の発覚まで検査未実施が継続していたことだ。これは、同じ工場内で製造されていたにもかかわらず、生産ラインや担当者が完全に分断されていたために、部門横断的な是正措置が取られなかったことが要因とされている。

 

「実施した体で」記録を印字 システムにも構造的問題

さらに、品質管理部門が使用していたAS400という基幹システムには、検査の実施有無を問わず記録を自動で印字できるプログラムが組み込まれており、検査が行われていない製品についても、耐圧検査記録が顧客に提出されていた。2020年には内部から改善要望も上がったが、是正は見送られていた。

会計・安全面への影響は「軽微」

報告書によれば、これらの検査未実施が原因とみられる製品の不具合報告は極めて少なく、ノンシールポンプで2件、ミルフローポンプではゼロだった。また、検査費用を別途請求していたケースに限定して影響額を試算したところ、合計で1,756万円程度とされている。

なお、違法性については、高圧ガス保安法の対象となる製品には検査が実施されていたため、法令違反には該当しないとされた。

 

ガバナンス不全と属人化の問題

報告書では、検査未実施の原因として、「品質への過信」「ルール遵守意識の欠如」「属人化」「工程記録の不徹底」「レポーティングラインの機能不全」など複合的な構造問題が挙げられた。業務が長年にわたって個人任せで運用されていたこと、検査工程の可視化がされていなかったこと、経営層への報告がなされなかったことなど、組織全体の統制力の欠如が指摘されている。

 

再発防止に向けた提言

調査委員会は、次のような再発防止策を提言している。

  • 品質保証意識の改革と研修の徹底
  • 工程記録・検査エビデンスの保存
  • 品質保証部門と製造部門の責任明確化
  • 部門横断的な監視体制と人材のローテーション
  • 通報制度の実効性強化

同社は「調査結果を真摯に受け止め、再発防止に全力で取り組む」としており、具体的な再発防止策は改めて開示する方針だという。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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