
東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが、2025年3月期決算で過去最高の売上高を記録した。2035年度の「売上高1兆円」を見据えた大型投資と成長戦略に注目が集まっている。
過去最高売上を更新、ディズニーシー新エリアが牽引
オリエンタルランドは4月28日、2025年3月期の連結決算を発表した。売上高は前期比9.8%増の6,793億円、純利益は同3.3%増の1,241億円と、いずれも過去最高を更新した。牽引役となったのは、昨年6月に開業した東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」である。
「まるで物語の中に迷い込んだかのよう」と話題を呼ぶ同エリアは、訪れる者に新たな驚きと感動を与えており、リピーターの増加も著しい。加えて、有料の優先入場券や変動価格制の高価格帯チケットの導入が功を奏し、客単価の上昇にも寄与した。
長期ビジョン、2035年に売上高1兆円超へ
同日発表された中長期経営戦略では、2035年度までに売上高を1兆円以上へと引き上げる目標が掲げられた。鍵を握るのは、新規事業であるクルーズ船ビジネスと、既存テーマパークの刷新による魅力強化である。
「世界中のどこにもない感動と驚きを提供する」と語ったのは、高橋渉社長。オンライン記者会見では、2028年度に日本での就航を予定しているディズニークルーズの将来的な2隻目就航にまで言及した。
新たなホテルの建設、パーク内外での滞在型レジャー強化
オリエンタルランドは、ディズニーリゾート内での宿泊施設の増設を計画しており、新たに6つ目のディズニーホテルが開設される予定である。これにより、宿泊需要の創出とパーク体験の一体化を狙うとともに、訪れるゲストがより充実した滞在を楽しめる環境を提供する。
また、東京ディズニーランドでは、老朽化に伴う「スペースマウンテン」エリアの全面刷新が進行中で、2027年のリニューアルオープンに向けた大規模工事が行われている。周辺エリアの再整備も含まれており、ホテル建設などの将来的な可能性にも注目が集まっている。
ファンタジースプリングスやスペースマウンテンの刷新、今後開業するホテルなど、パーク内外での「滞在型レジャー」の提案が強化され、訪日外国人観光客の取り込みにも期待がかかる。
株主への“夢の贈り物” 65周年記念で特別優待実施
企業成長の果実を株主にも還元する姿勢も打ち出された。創立65周年を記念し、9月30日時点で100株以上を保有する株主に対して、既存の株主優待制度に加えて「1デーパスポート」1枚を追加贈呈する。これは東京ディズニーランドまたはディズニーシーのどちらかで利用できるもので、2026年8月末まで有効とされる。
また、4月28日時点でオリエンタルランドの株価は3,145円。現在のPER(株価収益率)は約38倍で、東証プライム全体の平均を上回る水準となっており、市場では成長性を織り込んだプレミアムが付いていると見る向きもある。特別優待制度や多角化戦略が注目される中で、中長期的な成長性に期待する声も根強い。特に、ディズニークルーズやホテル事業の展開が成功すれば、株価にポジティブな影響を与える可能性が高いだろう。
SNSでも話題、「夢と現実の共存」に賛否の声
X(旧Twitter)やInstagramでは、「再開発のスケールがすごい」「また行きたくなった」といった称賛の声がある一方、「値段が高くて庶民には厳しい」「もう夢の国じゃない」と価格政策を巡る批判も見られる。
ファンの間でも期待と不安が入り混じる中、パークの価値をいかに高め、かつ誰もが楽しめる空間として維持できるかが、今後の成否を分けるだろう。
収益モデルの多角化、成長持続への挑戦とビジネスパーソンが注目すべき視点とは
高橋社長は、ディズニークルーズ事業について「通年稼働となる2029年度には黒字化を見込み、数年後にはテーマパーク事業を上回る収益性を目指す」と明言。ホテル事業においても、既存の6施設に加えた新規施設の開発を検討するなど、収益源の多角化に向けた動きが進む。
また、変動価格制チケットの構成比や価格幅の見直し、訪日外国人向けのプロモーション展開など、外的環境に対応した柔軟な戦略が重要性を増している。
テーマパークを中核としながらも、周辺領域への投資を積極化するオリエンタルランドの戦略は、既存事業に依存しない成長モデルとして注目に値する。今後の動向を踏まえ、自社の中長期ビジョンと照らし合わせることで、企業の持続的成長に資するヒントが得られる可能性がある。
特にクルーズ船やホテル事業への参入は、BtoCビジネスを展開する他業種にも応用可能な顧客体験設計やブランド戦略の示唆に富んでいる。