
スターバックスコーヒージャパン株式会社は24日から、全国の店舗において順次、紙ストローの提供を終了し、バイオマスプラスチック製ストローへ切り替える方針を発表した。新たなストローは植物由来の原料を用いたもので、環境への配慮と利便性の両立を図る。導入の背景には、素材のリサイクル適性や製造時の二酸化炭素(CO₂)排出量の低減といった観点もある。
紙ストローの課題と利用者の声
スターバックスでは2020年以降、使い捨てプラスチック削減の一環として紙ストローを導入してきたが、利用者からは「長時間使うとふやける」「ドリンクの味が変わる」といった声が寄せられていた。加えて、紙ストローの分別が難しく、リサイクル工程で異物と判断されることも多いという実態があった。
新たに導入されるストローは、植物油を主成分とするバイオマスプラスチック製で、従来の紙ストローと比較して約半分の重さに抑えられている。製造過程で排出されるCO₂の量も少なく、カーボンフットプリントの観点からも優位性があるという。スターバックスは今後、この素材のリサイクルの可能性についても、自治体や関連業者と連携して検討を進めるとしている。
来店客からは「唇にくっつかずメイクが落ちない」「長時間持ち歩いてもへたらない」など、機能性を評価する声もあがった。
紙ストロー導入は環境改善に寄与したのか
紙ストローは、2018年頃から世界的に拡大した「脱プラスチック」運動の象徴として導入が進んだ。スターバックスやマクドナルドなど大手外食チェーンが相次いで切り替えを表明した背景には、プラスチックごみによる海洋汚染への社会的な関心の高まりがあった。
こうした動きは、企業の環境意識の表明として一定の啓発効果を果たしたが、実際の環境改善効果には限界もある。国連環境計画(UNEP)によれば、ストローがプラスチックごみに占める割合は全体の1%未満とされており、紙ストロー導入による実質的な削減効果は象徴的な域にとどまる。
また、紙ストローは製造過程で大量の水とエネルギーを消費することがあり、耐久性の低さやリサイクルの困難さといった課題も指摘されてきた。今回のバイオマスプラスチック製ストローへの移行は、こうした反省を踏まえ、素材選定の段階から環境負荷を抑える「リデザイン」への一歩ともいえる。
二酸化炭素が及ぼす環境への影響とは
地球温暖化の主因とされるCO₂は、温室効果ガスとして地球の大気中に蓄積されることで、気温の上昇を引き起こす。これにより、海面上昇、異常気象、干ばつ、洪水、生態系の破壊といった深刻な環境問題が世界各地で発生している。特に近年では、氷河の融解やサンゴ礁の白化、農業への打撃といった影響が顕著となっている。
さらに、CO₂の一部は海洋に吸収されて海水を酸性化させるが、これが貝類やサンゴ、甲殻類の成長に悪影響を及ぼすことも明らかになってきた。スターバックスが今回採用したバイオマスプラスチック製ストローは、こうした問題に対し、製造時点からCO₂排出を抑えることで間接的な貢献を果たそうとする取り組みである。
他社の取り組みと社会的背景
ストローをめぐる環境対応は外食業界全体に広がっている。日本マクドナルド株式会社は一部店舗で紙ストローの提供を取りやめ、代わりにフタに飲み口がついた容器を試験導入。日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社では、ストローを不要とする専用フタの導入を進めている。
これらの動きの背景には、2022年に施行された「プラスチック資源循環促進法」の影響もある。同法では、事業者に対しプラスチック製品の設計段階からの環境配慮や、使用済み製品の回収・再資源化などを求めており、企業はこれに応じた独自の取り組みを強化している。
スターバックスは、今後も容器・包材の再利用やリサイクルに関する取り組みを加速させる方針であり、2050年までに「リソースポジティブ企業(資源を使う以上に地球環境に貢献する企業)」を目指す長期戦略を掲げている。