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サンリオ「クロミ」著作権訴訟 スタジオコメットが提訴、気になる主張と過去の類似事例を紹介

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クロミとマイメロディ
クロミとマイメロディ(サンリオエンターテイメントPRTIMESより)

サンリオの人気キャラクター「クロミ」を巡り、アニメ制作会社のスタジオコメット(東京都練馬区、代表取締役:茂垣弘道)が著作権などの侵害を主張し、サンリオを提訴していたことが明らかになった。

サンリオは2月26日、公式サイトを通じて声明を発表し、訴訟が現在も係属中であることを認めた上で、「今後も司法の場で当社の立場を明確に伝えて参ります」との姿勢を示した。

 

スタジオコメットの主張

スタジオコメット側は、クロミの誕生経緯について「2005年に放送されたテレビアニメ『おねがいマイメロディ』の制作過程で、当社に所属するアニメーターがデザインしたキャラクターであり、著作権は当社にある」と主張している。茂垣氏によれば、「クロミのデザインは、当時アニメの制作現場で考案されたものであり、スタジオコメットの著作物に該当する」としている。

同社はまた、サンリオがクロミのグッズ展開を進める際に「著作・発売元 株式会社サンリオ」と表記し、スタジオコメットの名が記載されていない点についても問題視している。さらに、2023年に出版された書籍『クロミのヒミツ』において、クロミの生みの親がサンリオのデザイナーである山口裕子氏とされていることに対し、「当社の関与が一切記されていないことは不当である」との立場を示している。

 

サンリオの見解

これに対しサンリオは、「クロミの著作権は関連する契約により明確に当社に帰属しており、著作者人格権についても適切に処理されている」と反論。「長年にわたりキャラクター等の知的財産権の取り扱いについて適切に対応してきた」とし、スタジオコメット側の主張を受け入れることはできないとの立場を明確にしている。

サンリオによると、アニメ『おねがいマイメロディ』は、ウィーヴという企業が企画を立ち上げ、サンリオの承諾を得て制作された。スタジオコメットはそのアニメ制作を担当したに過ぎず、「クロミが生まれた背景には、あくまでサンリオが所有するマイメロディの世界観が存在していた」との見解を示している。

著作権問題の争点

今回の訴訟の核心は、「クロミ」というキャラクターが、サンリオのマイメロディの世界観の一部として生まれたものなのか、あるいはスタジオコメットの独自創作物として成立するのかという点にある。特に、著作権が財産権としてサンリオに譲渡されていたとしても、著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)がどのように取り扱われていたかが争点になりそうだ。

また、アニメ制作において「制作会社は著作者人格権を行使しない」という契約条項が存在していたのかどうかも、訴訟の行方を左右するとみられる。契約内容によっては、仮にクロミのデザインをスタジオコメット側が考案したとしても、著作権はサンリオに帰属する可能性がある。

 

過去の類似事例との比較

日本国内では、キャラクターの著作権を巡る争いは過去にも起こっている。例えば、国民的キャラクターである「アンパンマン」は、原作者であるやなせたかし氏が創作したが、出版社との契約によって著作権の取り扱いが決まっていた。メディア展開時に制作会社や関連企業の関与がどこまで認められるかが争点となったが、結果として出版社側が著作権を管理することが確定し、アニメ制作会社や関連企業には独自の権利は認められなかった。

また、「ドラえもん」の場合も、原作者である藤子・F・不二雄氏の遺族と出版社の間でキャラクターの使用権を巡る争いが生じたが、最終的には出版社が権利を保持しつつ、遺族側の著作者人格権を尊重する形で合意が形成された。

一方、海外ではディズニーが管理する「くまのプーさん」の著作権問題で、原作者の遺族が権利を主張し訴訟が発生。最終的にはディズニーが主要なキャラクター展開を継続できる形で決着し、一部の権利が遺族に認められた。さらに、スーパーマンの権利争いでは、原作者の遺族がDCコミックスに対し著作権の一部回復を求めたが、最終的にDCコミックスが完全な権利を保持する形で和解が成立した。

これらの事例と比較すると、今回のクロミ訴訟も、アニメ制作会社の権利とキャラクターIPを所有する企業の間で発生する典型的な著作権紛争の一例といえる。

 

今後の展開

クロミは、2024年のサンリオキャラクター人気投票で3位にランクインし、同社の主力キャラクターの一つとなっている。クロミ誕生20周年を迎える今年、サンリオは大規模なキャンペーンを展開しており、ブランド戦略においても重要な存在となっている。

裁判の行方は、サンリオのみならず、キャラクタービジネス全体にも影響を与える可能性がある。過去の類似事例と同様、今回の訴訟も長期化する可能性がある。

サンリオとスタジオコメットの主張は平行線をたどっており、今後の裁判の進展に注目が集まる。

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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