フジ・メディア・ホールディングスは2025年3月期の業績予想を大幅に下方修正。
広告収入減少が主因で、フジテレビは赤字転落見通しだ。
広告収入減少を背景に業績予想を下方修正
フジ・メディア・ホールディングス(以下、フジ・メディアHD)は1月30日、2025年3月期の連結業績予想を大幅に下方修正したことを発表した。広告収入の減少が主因で、売上高は従来予想の5983億円から5482億円へ、純利益は290億円から98億円へとそれぞれ引き下げられた。純利益の減少幅はおよそ66%に及び、前期比では約74%減の見通しである。フジテレビ単体の最終損益は赤字に転落する予想となっており、1997年の持株会社化以降、初の赤字見通しとなる。
フジ・メディアHDの経営を支えるフジテレビの広告収入が大幅に減少したことが、今回の業績予想の下方修正を直接的に引き起こした。広告収入はすでに従来計画から233億円下振れしており、広告主の動向や市場の回復が今後の業績回復の鍵を握る。
業績悪化の原因はフジテレビの一連の報道
今回の業績悪化の主因として挙げられるのが、フジテレビの一連の報道を巡る問題である。元タレント中居正広氏と女性とのトラブルをめぐる報道に端を発し、フジテレビの対応に対する批判が高まったことで、広告主が相次いでCM出稿を控える状況に陥った。広告主の多くは公共広告(ACジャパン)のCMに差し替える対応を取ったため、フジテレビの広告収入は大幅に減少した。
さらに、2月以降も広告出稿のキャンセルが続く見通しで、広告収入の回復には時間がかかると見られている。フジテレビは広告主との信頼関係を維持するため、差し替えやキャンセル分の広告料を請求しない方針を決定。この決定が収益減少を加速させる結果となったが、同時に早期の広告出稿再開を促す狙いもある。
問題を受け、フジテレビでは1月に記者会見を開き、27日には社長と会長が辞任する事態となった。さらに、親会社であるフジ・メディアHDは取締役会の下に「経営刷新小委員会」を設置し、経営体制の見直しを進めるとしている。
広告主との信頼関係維持へ、広告料請求を見送り
フジ・メディアHDは、広告主との長期的な信頼関係の維持を優先する姿勢を示している。今回の業績悪化の一因となった広告出稿のキャンセルや公共広告(ACジャパン)への差し替えに対し、フジテレビは料金を請求しない方針を明確にした。これは、広告主の信頼を損なわないための措置であり、早期の広告出稿再開を目指した戦略でもある。
この決定により、フジテレビの広告収入は1252億円まで減少する見通しで、従来の計画から233億円の下振れとなった。ネットタイム、ローカルタイム、スポット広告のすべてのセグメントで収入が削減される結果となっている。特にスポット広告では120億円以上の減少が見込まれ、広告収益全体に大きな影響を及ぼしている。
フジテレビの清水賢治社長は、広告収入の急激な減少について「極めて深刻に受け止めている」と語り、広告収益を回復させるために迅速な対応を進める意向を表明した。一方で、企業全体としては「業績の落ち込みにも耐えられる経営基盤がある」として、社員や関係者に向けて冷静な対応を呼びかけている。
経営刷新に向けた取り組みと今後の見通し
フジ・メディアHDは、今回の業績悪化を受けて経営体制の見直しに着手している。取締役会のもとに設置された「経営刷新小委員会」では、社外取締役を中心に調査や提言を行う仕組みを構築し、透明性の高い経営の実現を目指す。また、現場での改革を推進するため、第三者委員会による調査結果を待たずに取り組みを進める方針が示されている。
しかし、フジ・メディアHDとフジテレビが直面している課題は、今回の広告収入減少に限らない。視聴者の「テレビ離れ」が進む中で、広告収入への依存度の高いビジネスモデルが揺らいでいる。近年、インターネットや動画配信サービス(OTT)の普及により、視聴者のメディア利用が多様化しており、テレビ業界全体が広告市場での競争激化に直面している。
フジテレビ単体では、広告収入が全体収益の約7割を占めており、この依存度の高さが業績に大きな影響を与えている。これに対し、フジ・メディアHDでは、不動産事業やデジタルコンテンツ事業の強化を進め、多角化戦略を模索している。今後は、収益構造の転換と新たな収益基盤の確立が急務となるだろう。
清水社長は、「誠実な行動を積み重ね、信頼を取り戻すことが重要」と述べており、社員に向けて改革への協力を呼びかけた。テレビ業界の激しい競争環境の中で、フジ・メディアHDが持続可能な成長を実現できるかどうかは、既存の経営モデルをどれだけ迅速に転換できるかにかかっている。
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