歳出削減を拒み、負担増で再分配 たかまつなな氏の年金改革支持が炎上
厚生労働省の社会保障審議会年金部会委員を務めるタレントのたかまつなな氏が、2027年9月施行予定の厚生年金保険料引き上げ案を支持する意見をSNSで発信し、激しい批判にさらされている。
同氏の発言が「現役世代や子育て世代の負担を軽視している」と受け取られ、多くの反発を招いた一方で、議論を促進した功績を評価する声も聞かれる。
炎上の発端:厚労省が進める年金改革案
炎上のきっかけは、たかまつ氏が1月18日に「私は厚生労働省の年金部会の委員を務めています」と投稿し、年収798万円以上の高所得会社員を対象とした厚生年金保険料の上限引き上げ案に賛成の意を表明したことだった。この改革案は、保険料収入を増やして年金財政の安定を図るとともに、所得再分配機能を強化することを目的としている。関連法案は3月以降に国会へ提出される見通しだ。
たかまつ氏は投稿の中で、「負担が増えるのは全体の1割以下の高所得者層に限定されている」と説明し、「増加した保険料は将来の年金受給額の増加に直結するため、長期的に見れば老後の生活にプラスとなる」と主張した。さらに、「高齢化が進む中で社会全体として再分配を進め、負担可能な層から広く取ることが必要だ」との見解を示した。
しかし、この発言は「現役世代や子育て世代に負担を押し付けるものだ」との批判を呼び、SNS上で多くの反発を招いた。
「若者代表」への期待と失望の声
SNSでは、たかまつ氏の立場や発言に対して、「独身で子育て経験がない彼女が現役世代や子育て世代の代表として意見を述べるのは不適切だ」とする声が多く挙がった。「経験がないからこそ、子育ての大変さや生活費の重みが理解できていない」との指摘や、「これ以上の負担増は子育て世代を疲弊させ、文化的な生活を奪う」といった意見も相次いだ。
さらに、「若者の代表として審議会に参加してほしかったが、気づけば既存の高齢者優遇政策を擁護する立場に回っている」という失望が広がっている。「ミイラ取りがミイラになった」という批判も見られ、社会起業家として、これまで若者の立場を代弁してくれる存在として人気のあったたかまつ氏の変節を残念がる声が多かった。
あるユーザーは、「年金制度の負担増を容認するのであれば、医療費削減や他の歳出削減策を同時に進めるべきだ。歳出はそのままで負担だけを増やし、子育て世代や中間層を圧迫するような政策では、未来が見えない」と厳しく指摘した。また、「政府が子育て政策で負担増を穴埋めすると言っても、現行の支援策は不十分で、所得制限や無駄が多い」と、制度の実効性を疑問視する声も多い。
「再分配が必要」たかまつ氏の主張とその応答
たかまつ氏は批判に対し、「私自身、独身で子育て経験がないため、リアリティに欠ける部分があることは自覚している」と謝罪しつつ、「審議会にもっと若者や子育て世代の声を反映させるべきだと訴えている」と説明した。さらに、「負担が増える分を政府が子育て政策や教育無償化といった形で穴埋めし、現役世代や子育て世代を支えるべきだ」と述べ、再分配の意義を改めて強調した。
また、「年金制度はセーフティネットとして社会全体を支えるものであり、社会保障費の増加を避けるために負担可能な層が多く負担することは避けられない」との立場を示し、「個人の損得ではなく、社会全体の利益を考えた議論を進めるべきだ」と呼びかけた。
一方で、「私の発信が不十分だと感じる方は、厚生労働省に意見を届け、次回の審議会で多様な声が反映されるよう提案してほしい」と述べた。
もちろん、たかまつ氏を擁護する声もある。「閉鎖的になりがちな審議会の議論をSNSに持ち込むことで、国民的な議論を喚起した点は評価されるべきだ」といった意見や、「情報の透明性を高め、社会全体での議論を促進したことは重要」とする声も挙がっている。
議論の必要性と今後の展望
厚生年金保険料の引き上げ案を含む年金改革関連法案は、3月以降に国会で審議される予定だが、現役世代や子育て世代への負担増への懸念は根強い。たかまつ氏の発言は、年金制度改革の必要性を広く知らしめる契機となった一方で、負担増をどうバランスよく配分し、未来の世代を支える仕組みを構築するかが改めて問われることになった。議論の行方が注目される。