「パーパスってビジネス用語ではどんな意味?」「どのように経営に取り入れれば良いの?」このような疑問を抱いていませんか。
現在では、パーパス起点の事業活動を行う企業が多く見受けられるようになりました。
実際に、統合報告書やサステナビリティレポートにて、パーパスについて明記する企業は増えています。
そこで今回は、ビジネスとして使用される『パーパス(Purpose)』の概要や策定するメリット・策定方法などについて解説します。
また、記事の最後にパーパスを取り入れた企業例もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
ビジネスにおける『パーパス』とは?
パーパスは、ビジネス用語としては『企業の存在意義』の意味で使用されます。現代において求められる企業の存在意義とは、社会・環境・人類をより良い方向へと導くことです。
このパーパスは、企業の事業活動の根幹であると同時に、SDGsに向けた取り組みやESG経営が求められる現代においては、消費者が商品やサービスを選ぶ際の判断基準にもなります。
また、パーパスには関連用語があり、以下のような言葉としても用いられます。
関連語 | 意味 |
パーパス経営 | パーパスを起点に、価値創造プロセスを策定し事業活動を行うこと |
パーパスブランディング | 自社のパーパスを外部へ周知し、自社ブランドや商品・サービスのブランディングにつなげること |
パーパスドリブン | 自社のすべての物事がパーパスを起点として始まっている状態のこと |
パーパスステートメント | パーパスを言語化してまとめた文章。社内外への共有や情報発信をする際に必要 |
パーパスとMVVの違い
また、パーパスと類似する言葉に『MVV』があります。
MVVは、ミッション(Mission)・ビジョン(Vision)・バリュー(Value)の3つの概念を指す言葉です。パーパスを含めたそれぞれの意味を以下の表にまとめましたので、違いを確認してください。
概念 | 意味 |
パーパス(Purpose) | 企業の社会的存在意義。事業活動の起点となる概念 |
ミッション(Mission) | 企業の使命・目的 |
ビジョン(Vision) | ビジョンを実現するために、企業が達成すべきこと |
バリュー(Value) | 企業の価値観。企業の行動指針となるもの |
パーパスが求められるようになった背景
では、なぜ現在の企業経営においてパーパスが求められるようになったのでしょうか。
ここでは、その背景について解説していきます。
背景としては、以下の3通りが挙げられます。
- SDGsやサステナビリティ経営への関心が高まっている
- DXが推進されるようになった
- VUCA時代の到来
一つずつ見ていきましょう。
1.SDGsやサステナビリティ経営への関心が高まっている
SDGsが採択されてからは、企業における社会課題の解決の在り方は、以前とは異なるようになりました。
SDGsが主流となる以前は、社会課題の解決として事業外での社会貢献活動を行う企業が多く見受けられましたが、SDGsが採択されてからは、事業活動を通じて社会課題を解決することが求められるようになりました。
そのため、これまでは利益を追求することが重要視されていた企業の在り方ですが、現在では社会における存在意義も重要視されるようになっています。
また、消費者においても企業のサステナビリティへの興味・関心が強まっており、商品やサービスを選ぶ判断基準として「どのような企業が作った商品なのか」が重要視されることも珍しくありません。
2.DXが推進されるようになった
DXの推進も、パーパスが求められる一つの要因となっています。
DXとは、日本語で『デジタルトランスフォーメーション』と訳され、ITツールを導入した業務変革や業務効率化・社内構造改革などを目指す取り組みのことです。
例えば、請求書の作成をデジタル化することも、DXの一つです。
アパレル業界においては、AIの活用によりオンラインショップ上で試着ができ、店頭に行かなくても自分に合ったサイズを知ることができるなど、店頭とほぼ同等の購入体験を提供することが推進されています。
経済産業省でも「デジタルガバナンス・コード」に沿ったDX推進施策を実施しており、企業のDXレベルを『先進企業(DX銘柄・DXセレクション企業)』『DX認定企業(DX-Readyレベル)』『これからDXに取り組む企業』の3段階に分け、各レベルに合わせて
このDXを推進するためには、企業に適切なITツールを導入することが求められます。
そのため、企業としては、自社の向かうべき方向性を明確に把握しておかなければなりません。
現在では、多種多様なITツールが提供されているため、闇雲に導入するだけでは時間やコストが無駄になるだけでなく、顧客に対して最適なサービスを提供することが難しくなります。
そこで求められるのが、パーパスの設定です。
パーパスを起点に導入するITツールを検討することで、無駄なコストや手間の削減につながり、顧客に対しても最適なサービスを提供できるようになります。
3.VUCA時代の到来
3つ目の背景としては、『VUCA(ブーカ)時代』の到来が挙げられます。
VUCAとは、以下の4つの単語の頭文字を取って作られた言葉です。
- Volatility:変動性
- Uncertainty:不確実性
- Complexity:複雑性
- Ambiguity:曖昧性
このVUCAの状態が続き、既存の価値観やビジネスモデルが通用しない時代のことをVUCA時代と呼びます。
このVUCAへの対応については、経済産業省が公開する「人材競争力強化のための9つの提言(案)」のなかでも大原則の一つとして提言しています。
具体的な内容としては、DX化やデジタルサービスが進展していくなかで、既存事業の陳腐化が加速するとし「経営者が率先してVUCA時代におけるミッション・ビジョンの実現を目指し、組織や企業文化の変革を進めること」を求めています。
そして、パーパス経営においてミッション・ビジョンを策定するためには、パーパスを起点に逆算して考えるバックキャスティングを採用するのがポイントです。
時代の流れが著しくはやい現代において、軸をぶらさず世の中の流れに柔軟に対応できる企業体制を構築することが、企業のサステナビリティ向上につながります。
パーパスを定めることで企業が得られるメリット
では、ここからはパーパスを定めることで企業が得られるメリットについてお伝えします。
メリットとしては、以下のことが挙げられます。
- ステークホルダーからの評価アップが期待できる
- 従業員とのエンゲージメントが深まりモチベーションアップにつながる
- 社内からのイノベーションを生まれやすくなる
一つずつ解説していきます。
1.ステークホルダーからの評価アップが期待できる
1つ目のメリットは、ステークホルダーからの評価アップが期待できることです。
パーパスを示すことで、投資家や消費者・従業員といったステークホルダーに、自社が目指す方向性を認知させることができ、事業活動やビジネスモデルだけでは伝わりにくい企業の本質的な部分を伝えられます。
その結果、企業が目指す社会的な存在意義に共感を得られれば、ステークホルダーからの評価が高まることが期待できます。
2.従業員とのエンゲージメントが深まりモチベーションアップにつながる
従業員が自社のパーパスを認知することで、従業員一人一人が自身の仕事が社会に与える影響を把握できるようになります。
さらに、企業の存在意義に対して従業員から共感を得られれば、従業員の仕事に対するモチベーションが高まることが期待できます。
社外に対するアピールだけでなく、従業員とのエンゲージメントを深めることもパーパスを策定するメリットの一つです。
3.社内からのイノベーションを生まれやすくなる
パーパスを社内で共有することで、会社と社員の方向性を一致させることが可能です。方向性が一致することで、従業員のアイディアや取り組みが企業の求める内容と整合性が取れるようになります。
企業と従業員が同じ方向を向いて進むことで、新たな商品・サービスの開発や新規事業の立ち上げ、既存の商品・サービスの改善、社内の組織改革など、社内からのイノベーションが創出されることも期待できます。
パーパスを策定し実行に移すための4つのステップ
では、ここでは実際にパーパスを策定する方法について解説します。
パーパスを策定する手順としては、以下の通りです。
- 自社と社会状況のリサーチ
- 必要な要素の統合と言語化
- パーパスを行動指針(バリュー)まで落とし込む
- 外部への情報発信と社内への浸透に取り組む
1項目ずつ見ていきましょう。
1.自社と社会状況のリサーチ
まずは、自社のパーパスを策定するためのリサーチから始めましょう。
リサーチでは、顧客や社員などステークホルダーへの各種調査、自社周辺の環境や自社の事業活動と関わりの深い社会課題に関するデータを収集し、自社のパーパスに求められる要素を抽出していきます。
2.必要な要素の統合と言語化
リサーチが完了し、自社のパーパス要素を抽出できたら、実際に言語化していきましょう。
ちなみに、パーパスを言語化したものを『パーパスステートメント』と呼びます。
言語化する上では、シンプルで分かりやすい言葉に置き換えるのがポイントです。
「自社が社会に対してどうあるべきか」「どんな社会的価値を提供できるのか」の問いに簡潔に答え、社内外問わず誰が見ても理解しやすい言葉を選びましょう。
特に、専門用語や日常的に聞き慣れない言葉は、できる限り使用しないことをおすすめします。
後でもご紹介しますが、パーパスを公表している企業の例を見てみると、どの企業も分かりやすい言葉で表現していることが分かります。
3.パーパスを行動指針(バリュー)まで落とし込む
パーパスが言語化できたら実際に業務として取り組めるよう、パーパスを起点としてミッションとビジョンを決めていきましょう
ポイントとしてはバックキャスティングの思考で、パーパスから逆算してミッション▶︎ビジョン▶︎行動指針(バリュー)の順で考えていくと、軸がブレずに落とし込みやすくなります。
4.外部への情報発信と社内への浸透に取り組む
パーパスを具体的に取り組めるレベルまで落とし込めたら、次は自社のパーパスを社内外に情報発信していきます。
自社のパーパスを社外へアピールすることで、商品やサービスの価値向上、自社ブランドの認知拡大が期待できます。
このようなパーパスを活用して自社のブランディングを行うことを『パーパスブランディング』と呼びます。
パーパスブランディングでは、従来のブランディングと違い収益の拡大よりも、ステークホルダーや顧客の共感を得ることが目的です。
そのため、ターゲティングを行い、特定のターゲットに向けて情報発信していくというよりは、自社のパーパスに共感する人たちを増やしていくことを意識すると良いでしょう。
では、社内へはどのように浸透させて行けば良いのでしょうか。
社内への認知向上を目指す場合は、
- 社内報を発行
- ワークショップの実施
- 社員一人一人との1on1面談
などの方法があります。
自社の規模や体制に合った方法で行うのがおすすめです。
パーパスを設定している企業例
では最後に、企業のパーパスの事例をご紹介します。
以下の表にまとめていますので、どのようなパーパスを設定しているのか参考にしてみてください。
企業名 | パーパス |
ネスレ日本株式会社 | 食の持つ力で、現在そしてこれからの世代すべての人々の生活の質を高めていきます |
UCC上島珈琲 | より良い世界のために、コーヒーの力を解き放つ |
三菱UFJ銀行 | 世界が進むチカラになる |
東京海上ホールディングス | お客様や地域社会の“いざ”をお守りすること |
ユニリーバ・ジャパン | サステナブルな暮らしを”あたりまえ”にする |
上記のパーパス例のように、どの企業も専門用語などは一切使わず、分かりやすくシンプルな文章でまとめています。このような形で、自社のパーパスについても言語化してみてください。
まとめ
この記事では、パーパスの概要やメリット、策定方法などについて解説しました。
パーパスを設定し、パーパス起点で具体的な行動に落とし込んでいくと、軸がブレない企業体制を整えることにつながります。
これからパーパスを策定していきたいと考えている方にとって、この記事が少しでも参考になれば幸いです。