
イベントが終わればゴミになる。そんな「建築の使い捨て」という業界の不都合な真実を、老舗のTSP太陽が真っ向から否定しにかかっている。 同社がGREEN×EXPO 2027に向けて放つのは、なんと「ほぼ100%再利用可能」な、常識破りの木造モジュールユニットだ 。
現場に現れた「木の異形」
横浜で着々と進む万博の準備。その一角に、これまでのイベント施設とは一線を画す、木の温もりに満ちた建物が姿を現し始めた 。 イベント制作のプロ集団、TSP太陽が独自に生み出した「木造モジュールユニット(仮称)」である 。
すでに全9棟のうち5棟が着工しており、会期中には博覧会の顔となる協会施設や、来場者が憩うカフェ、公式ショップとして多くの人々を迎え入れることになるだろう 。公開されたパースからも、洗練された木の質感が周囲の緑と調和する、次世代の公共空間の姿がうかがえる 。
壊すために造るという「逆転の美学」

この建物の本当のすごさは、見た目ではなく「去り際」にある。
通常、華やかな舞台の裏側で、イベント施設は解体されると同時にその役目を終え、瓦礫の山へと変わる運命だ。
しかし、この木造ユニットは違う。内装を除けば、ほぼ100%の部材をそのまま別の場所で再利用できるよう、あらかじめ「解体すること」を前提に設計されているのだ 。 規格化された部材を組み合わせることで、環境負荷を抑え、施工コストや工期までも短縮してみせる 。いわば、一つの場所にとどまらない「旅する建築」である。
イベント屋が抱いた「静かな怒り」
なぜ、彼らはここまで再利用にこだわるのか。 そこには、2023年頃から同社が抱き続けてきた「短期で壊されるイベント施設こそ、循環型であるべきだ」という強い信念がある 。
単なるエコを越え、設計から撤去、再利用までの流れをデザインすることで、資源を無駄にしない「GREENサーキュラー建築」の概念を具現化した 。 それは、ものづくり集団としてのプライドがにじむ、極めて戦略的で熱い選択といえる 。
老舗が示す「これからの勝ち方」
設立70周年を迎えた同社が、自らこれまでの「当たり前」を否定しにかかる姿は、どこか痛快ですらある 。 サステナブルをお題目で終わらせず、自社の技術力で「自然と社会が持続するための最適解」へと昇華させてみせた 。
自社の強みをどう社会に翻訳し、未来を編み直すか。
2027年、横浜に並ぶ9棟の木造ユニットは、建築、そしてイベント業界の新しい夜明けを告げるシンボルになるはずだ。



