
環境にやさしい製品が人々の健康と美につながる。 この一見、理想論とも取れる信念を地で行く企業が和歌山にある。米ぬかの高度有効利用を掲げる築野食品工業だ。
同社が新たに投入した「国産こめ油紙パック1200g」は、単なるラインナップの拡充ではない。 それはキッチンという日常の場から、プラスチック削減と世界の飢餓救済、さらには日本の食糧安全保障にまでリーチしようとする、極めて野心的な一石である。
エコと利便性を両立。国産こめ油「大容量紙パック」投入の狙い
2026年2月2日、食卓に新たな選択肢が加わる。築野食品工業が発売する「国産こめ油紙パック1200g」である。 先行した600gサイズの好評を受け、市場の「大容量でもエコでありたい」という切実な声に応えた形だ。
本製品は単なる新容量の追加に留まらない。 従来のプラスチック容器に比べ、廃棄時の容積削減やプラスチック使用量の抑制に大きく寄与する。
さらに特筆すべきは、国連WFPの「レッドカップキャンペーン」に参画している点だ。 売上の一部が学校給食支援へと繋がるこの仕組みは、消費者が便利さを手にする裏側で社会課題の解決が静かに進行するという、現代のプロダクトが備えるべき誠実さを体現している。
「米ぬか」を100%使い切る独自技術。他社と一線を画すアップサイクル戦略
同社がこれほどまでに多層的な価値を提供できる源泉は、食用油メーカーの枠に収まらない技術の深さにある。 一般的に精米の副産物である米ぬかは、家畜の飼料や肥料として安価に処理されるのが常識であった。
しかし、築野食品工業は違う。 米ぬかに秘められた成分を徹底的に研究し、食品、化学、医療、化粧品といった多分野へ、高付加価値な資源として供給する高度な抽出技術を保持している。
いわば米ぬかの骨の髄までを使い切るゼロエミッション経営である。 他社が油を絞ることに終始するなかで、同社は資源を創造するという次元で戦っており、この圧倒的な独自性こそが競合を寄せ付けない最大の武器となっている。
食料自給率2%への挑戦。地域資源を守る「つの食品」の哲学
この執念とも言える取り組みの根底には、ある種の危機感が横たわっている。 日本の食用油自給率は、わずか2%に過ぎない。 この驚くべき数字の最後の砦となっているのが、国内資源である米ぬかを原料とするこめ油である。
国内の米ぬかを大切にすることは、日本の食の未来を守ることと同義であるという同社の主張には重みがある。 代表取締役社長の築野富美氏が描くのは、生産者、消費者、そして地球の三者が等しく恩恵を受ける循環の図式だ。
未利用資源に光を当て、付加価値を付けて市場へ戻す。 その利益が再び生産者や技術開発へと還流される一貫した哲学があるからこそ、同社の製品には単なる工業製品を超えた意志が宿っている。
ビジネスパーソンが築野食品工業から学べる「本質的なSDGs」の実装
築野食品工業の事例は、現代のビジネスパーソンに本質的なSDGsとは何かを問いかけている。 まず学ぶべきは、見過ごされてきた副産物を独自のテクノロジーで戦略的資源へと再定義する力である。
また、高尚な理想を押し付けるのではなく、使いやすい、ゴミが減るといった実利のなかに社会貢献を埋め込む導線設計も極めて示唆に富む。 何より、食料自給率向上というマクロな課題を、一本の油というミクロなプロダクトで解決しようとする構想力が、成熟した市場において強力なブランド競争優位性になり得ることを同社は証明している。
環境に良いという言葉が空虚に響く現代において、地に足の着いた技術と哲学の融合こそが、ビジネスを社会変革の装置へと昇華させるのである。



