
「良い服は、一世代で終わらない」という信念。プチバトージャパンが展開する「#プチバトン」は、単なる衣類回収の枠を超え、愛着や物語を次代へ継承する文化醸成の装置として、今、新たな教育的価値を創出し始めている。
衣類循環の現場を「学びの場」へ変える挑戦
現在、東急・相鉄沿線の駅舎が、子どもたちの「サステナブルな発想」を解き放つキャンバスへと変わっている。プチバトーが参画する「サステナ KIDS AWARD」だ。彼らが小学生に突きつけたミッションは、単なるブランド広報ではない。
「服を長く大切に着る。その先にある未来を描いてほしい」という、切実かつ希望に満ちた問いかけである。驚くべきは、同社が2022年から積み上げてきた実績だ。
プログラム開始から約3年で、回収されたアイテムは1万2,000点を超え、そのうち8,450点以上が再び店頭に並び、新たな主人のもとへ旅立っていった。単なるリサイクルという言葉では片付けられない、凄まじい熱量がそこにはある。
「中古品」を「ヴィンテージ」へ昇華させる、したたかな差別化戦略
なぜ、プチバトーの服はこれほどまでに「回る」のか。他社が繊維に戻してリサイクルするという、いわば服の死を前提とした仕組みに走る中、彼らは徹底して服の生を延ばすことにこだわった。
その鍵は、ブランドが定義するバトンという概念にある。彼らが売っているのは、単なる古着ではない。前の持ち主が大切に着ていたという記憶と、それを受け継ぐ誇りである。
吉祥寺店などの常設コーナーで再販される服たちは、もはや中古品ではなく、価値が証明された準新作のような扱いを受ける。効率性だけを追えば、シュレッダーにかける方が楽かもしれない。
しかし、彼らはあえて手間をかけ、一着一着を誰かの手に届ける道を選んだ。この情緒の商流こそが、他社には真似できない最大の防壁となっている。
「洗うほどに愛せる」という狂気的なまでの品質への自信
高品質こそが、最強のサステナビリティである。プチバトーの行動を支えるのは、1893年の創業以来、一貫して変わらないこの傲慢とも取れる自信だ。
多くのファストファッションが1シーズン着られればいいという消費構造の上に成り立つ中、プチバトーは型崩れしない、肌触りが変わらないという、物理的な耐久性を極限まで追求してきた。
つまり、彼らにとってサステナビリティは、流行に乗って始めた新事業ではなく、130年以上守り続けてきた当たり前の延長線上に過ぎない。今回のアワードで子どもたちに服を大切にと説く背景には、自分たちが作った服への、絶対的な信頼が透けて見える。
ビジネスパーソンが盗むべき「物語」による価値創造の極意
プチバトーの事例が我々に示すのは、サステナビリティとは技術の問題である以上に、文化の問題であるということだ。耐久性という機能的な価値を、二次流通市場での資産価値へと変換し、さらには子どもたちへの教育を通じて、10年後の良質なファンを育てる。
これは究極の先行投資と言えるだろう。機能を売る時代は終わり、これからはなぜそれを手放さないのかという動機をデザインした企業が勝つ。服を捨てるのがもったいないのではなく、カッコ悪いと思われる文化を創ること。
プチバトーが紡ぐバトンは、冷え切ったアパレル市場に、温かな、しかし極めて冷徹な次世代の勝ち筋を提示している。



