
「ついで」の回収が、持続可能な社会を支えるインフラに変わる。独自の物流網を活かし、飲食店と共に廃食用油を航空燃料へと変えるカクヤスの取り組みは、効率性と社会貢献を両立させた循環型モデルの好例と言える。
カクヤスの廃食用油回収が累計300トンを突破、飲食店向け新サービスが始動
酒類販売大手、株式会社カクヤスが展開する廃食用油回収サービスが、大きな節目を迎えた。2024年6月の開始からわずか1年強で、累計回収量は300トンを突破し、協力店舗数は1400軒を超えている。同社は2025年10月より、飲食店向け受注サイト「カクヤスナビオンライン」での回収依頼受付を開始した。これにより、日々の商品発注と同じ動線で油の回収を依頼できる体制を整えている。単なる回収業を超え、デジタルプラットフォームを通じた利便性の向上が、さらなる規模拡大を牽引している。
自社配送網を活用した「ついで回収」が実現する低コストと環境負荷軽減の独自性
カクヤスの取り組みが他社と一線を画すのは、配送と回収の完全同期にある。通常、廃食用油の回収には専用の車両を出す必要があるが、同社は商品を届ける自社の配送車が、帰路の空いたスペースを活用して回収を行う。この仕組みには2つの決定的な優位性がある。1つは、新たな回収車両を走らせないため、回収に伴う追加の温室効果ガス排出が実質的に発生しない点。もう1つは、酒を運んでくる馴染みの配送スタッフに手渡すだけという日常の延長線上にある気軽さが、飲食店の心理的ハードルを劇的に下げている点だ。
負担を価値に変える「飲食店×SDGs」の哲学とSAF再資源化への伴走支援
背景にあるのは、飲食店にとってのSDGsを負担ではなく価値に変えようとする同社の哲学である。同社担当者は、飲食店の方々にとって環境対応の重要性は理解していても、日々の業務に追われる中で新たな手間を増やすことは容易ではないと指摘する。だからこそ、同社は回収依頼のデジタル化だけでなく、店内に掲示できるポスターやステッカー、具体的な実践方法を記した冊子の配布も並行して行う。「揚げたら、飛ばそう」というキャッチコピーを冠したポスターは、飲食店が排出するゴミを航空燃料という未来の資源に変えるストーリーを可視化するものだ。これは、飲食店が顧客に対して環境に配慮した店であることをアピールできる付加価値の提供に他ならない。
既存アセットの再定義から学ぶ、持続可能なビジネスを定着させる教訓
カクヤスの事例は、新たなビジネスモデルを構築する際に、巨額の投資や新技術だけが正解ではないことを示唆している。配送網という本業のインフラを静脈物流へと転用し、顧客のオペレーションを一切乱さずに社会貢献を組み込んだ点は特筆に値する。自社の持つアセットを多角的に見つめ直し、顧客が抱える「やりたいが、面倒だ」という潜在的な摩擦を解消する。それこそが、持続可能なビジネスを社会に定着させるための、最も確実な道筋であると言えるだろう。



