
リニアな消費から環境を再生する「リジェネラティブ」へ。辰野株式会社が大阪・昭和町で完了させた住戸リノベーションは、単なる美装化ではなく、都市居住と地球環境の新たな共生関係を提示している。
都市ストックを「資源」に変える。昭和町エクセルハイツの挑戦
辰野株式会社(大阪市中央区)は、1994年竣工の分譲マンション「昭和町エクセルハイツ」において、環境再生型・循環型素材を全面的に採用したフルリノベーションを完了させた。2025年12月末に竣工したこのプロジェクトは、オフィスビル「ReTerra Shin-Osaka」に続く、レジデンス版のリジェネラティブ拠点と位置付けられている。スクラップ・アンド・ビルドが常態化してきた日本の住宅市場において、築31年の既存ストックを「壊すべき負債」ではなく「再生すべき資産」と捉え直し、現代の環境基準に適合させる試みは、持続可能な都市経営の観点からも極めて今日的な意義を持つ。
竹フローリングや「塗るデニム」が実現する、高機能な循環型住空間
本プロジェクトの特筆すべき点は、採用された素材の「出自」と「その後」までを設計に組み込んでいる点にある。成長が早くCO2吸収率の高い竹フローリングや、輸送コストを抑えた国産無垢材の採用は、自然由来の調湿・蓄熱機能を住空間にもたらしている。また、デニム端材をアップサイクルした「塗るデニム」や卵殻を活用した「エッグペイント」は、廃棄物削減と同時に、化学物質の吸着や脱臭といった住宅性能の向上に寄与する。余剰在庫となったアウトレットタイルを洗面所に活用するなど、本来捨てられるはずだったものにデザインという新たな命を吹き込む、文字通りのリジェネラティブ(再生)が実践されている。
「住むこと」が環境貢献になる。辰野株式会社が掲げるサステナビリティ哲学
この取り組みの背後には、住人を「環境保護の傍観者」にさせないという同社の確固たる哲学がある。その象徴が、標準設備として導入された生ごみ減量乾燥機だ。「ゴミを減らすだけでなく、乾燥させたゴミを堆肥として土に還す。こうした日常の小さな循環に、住む人が自然と参加できる仕組みを整えたかった」と同社の担当者は語る。住空間にある素材や設備が、いかに地球とつながっているか。入居者の生活そのものが環境負荷を低減し、むしろ環境を豊かにしていく「能動的な居住」の実現を目指している。
不動産価値の新基準。サステナブルなリノベーションが変える住宅市場
今回の事例から学べるのは、不動産価値の定義が「新しさ」から「循環の深さ」へと移行し始めているという事実だ。これまで、古いマンションの再生はデザインの刷新や設備更新に主眼が置かれてきた。しかし、辰野株式会社が示したのは、建物の延命に加えて、素材のライフサイクルを統合的に管理する「環境価値の付加」である。これは、空き家問題や老朽化マンションの増加に悩む地方自治体や、ESG投資を加速させるデベロッパーにとっても、一つの最適解となるはずだ。一室の小さな変革が、都市全体の循環を加速させる。昭和町から始まったこの実験的な住空間は、日本のリノベーション市場に「再生」という新たなスタンダードを突きつけている。



