
地域課題である獣害対策を、高付加価値なスキンケアへと昇華させる。佐賀県の忠兼総本社が開発した日本初の「イノシシ油100%」クリームは、単なる自然派化粧品の枠を超え、資源循環の新たな形を提示している。
東京ギフトショーで初公開。「BOTANYU CREAM」が提示する動物性油脂の新常識
佐賀県佐賀市に拠点を置く動物油脂の専門メーカー、有限会社忠兼総本社は、2026年2月に開催される「第101回東京インターナショナル・ギフト・ショー春2026」において、日本初となるイノシシ油100%のスキンケアクリーム「BOTANYU CREAM」を公開する。同社は30年以上にわたり馬油やシカ脂などの動物油脂を扱ってきたスペシャリストである。今回発表される新製品は、佐賀県内で捕獲されたイノシシを原料として活用しており、自社工場での一貫した搾油・加工技術により、添加物を一切含まない純度100%の製品化を実現した。
馬油を超える浸透力と保湿性。イノシシ油(ぼたん油)が敏感肌に選ばれる理由
「BOTANYU CREAM」の最大の特徴は、既存のスキンケアオイルを凌駕する肌なじみの良さにある。一般的に広く知られる馬油以上に、イノシシ油は人間の皮脂組成に近いとされる。浸透性が高く、動物性油脂特有のベタつきを抑えたテクスチャーは、乾燥肌や敏感肌に悩む現代人のニーズに合致するものである。他社との決定的な違いはその出自と純度にあり、多くのスキンケア製品が輸入原料や植物性オイルに依存する中、同社は地域課題である獣害の産物を主原料に据えた。害獣として処理されるはずだった命を、その特性を最も活かせる美容という高付加価値ドメインへと転換させた点に同社の独自性が光る。
搾油技術30年の結論。「命を使い切る」サステナブルなものづくりの哲学
この取り組みの背景には、代表の百田忠兼氏が抱く命を無駄にしないという確固たる哲学がある。同社は単に油を抽出するだけでなく、イノシシ革製品やペット用ケア用品の展開も行っている。百田氏は、地域の厄介者とされているイノシシを価値ある資源に変えたいと考えており、素材の良さを引き出すには余計なものを混ぜないことが一番であると語る。30年間、動物油脂と向き合い続けてきたからこそ到達した100%という極めてシンプルな処方は、素材に対する絶対的な自信と、自然の恵みを余すことなく活用しようとする誠実な姿勢の表れといえる。
地方創生とESG投資のヒント。忠兼総本社の事例から学ぶ資源循環ビジネス
忠兼総本社の事例は、現代のビジネスパーソンにサステナビリティの本質を問いかけている。負の資産である獣害を正の資産へ転換する視点は、社会的コストを高品質なプロダクトの原料として再定義する優れた構想力を示している。また、汎用的な成分に頼らず、30年の搾油技術という自社の強みを一点突破で製品に投影したことは、専業技術の深掘りによる差別化の好例といえるだろう。さらに、消費者がなぜその製品を使うべきかという問いに対し、地域貢献と機能性の両面から明確なストーリーを提示している点も重要である。エシカル消費が定着しつつある今、確かな技術に裏打ちされた必然性のある物語こそが市場を動かす原動力となる。佐賀から発信されるこの小さなクリームは、日本の地域資源活用の、一つの完成形を示しているのではないだろうか。



