
深刻化する猛暑に対し、自治体は「公衆衛生」と「環境負荷低減」の二正面作戦を強いられている。水道インフラを再定義し、宮崎市と新たな避難所整備に乗り出したウォータースタンドの「共創型」戦略の本質に迫る。
熱中症対策の新基準:宮崎市と締結した「クーリングシェルター連携協定」
2025年12月、浄水型ウォーターサーバーのレンタル事業を展開するウォータースタンド株式会社は、宮崎県宮崎市と「クーリングシェルターにおける熱中症対策推進事業に関する連携協定」を締結した。
本協定の核心は、市が指定する「指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)」において、誰もが無料で利用できる給水環境を整備することにある。同社が持つ浄水技術と維持管理のノウハウを投入し、市民の水分補給を促すことで熱中症を予防する。同時に、マイボトルの利用を推奨することで、ペットボトルごみの削減を加速させるという、自治体が直面する「住民の安全」と「カーボンニュートラル」の両課題を一挙に解決するスキームである。
物流・在庫コストを排除する「水道直結型」の圧倒的優位性
従来の宅配型ウォーターサーバーとの最大の違いは、水道管から直接給水する「水道直結型」を採用している点にある。これがBtoG(対自治体)およびBtoBビジネスにおいて、他社が模倣しにくい独自の価値を生んでいる。
第一に、配送に伴うCO2排出を完全に排除できる点。第二に、ガロンボトルの保管スペースが不要であり、かつ災害時や猛暑のピーク時でも「水の在庫切れ」が起こらない点だ。既存の公共インフラである水道を「リブランディング」して活用するこのモデルは、コスト効率とBCP(事業継続計画)の観点から、既存のボトル配送ビジネスに対する強力なカウンターパートとなっている。
「ボトルフリー30億本」の達成に向けた公共へのコミットメント
同社が掲げる「使い捨てプラスチックボトル30億本の削減」というミッションは、単なる環境スローガンに留まらない。本多均代表取締役社長が説くのは、飲料水を「買うもの」から「共有するもの」へ、そして「水道水を磨いて使う」という文化の再構築である。
「誰もがアクセスできる安全な水」という公共性を追求する哲学は、利益追求のみならず、地域社会のウェルビーイングに貢献することを目指している。この「三方よし」の精神が、全国の地方公共団体とのパートナーシップを加速させる原動力となっており、その活動は「サステナアワード」や「彩の国埼玉環境大賞」など、数多くの外部評価によっても裏付けられている。
社会課題解決を事業成長に繋げる「SDGs実装力」の要諦
ウォータースタンドの事例から、現代のビジネスパーソンが学ぶべき点は多い。
一つは、自社のプロダクトを「単なる製品」ではなく「社会課題への適応策」として定義し直したことだ。熱中症という「気候変動への適応」と、脱プラという「気候変動の緩和」を一つの事業で解決するビジネスモデルは、社会的な大義と収益性を高いレベルで両立させている。
また、官民連携においては、単なる機器の設置に留まらない。運用や市民への啓発といったソフト面でのコミットメントが信頼を生む。同社のように「地域の持続可能性」を共に担うパートナーとしてのポジションを築くことこそが、長期的な市場競争力を生む鍵となるだろう。



