
「特別な備え」という心理的障壁を、京都の伝統知や洗練されたデザインで解消する。ビオスタイルの試みは、日常の美意識の延長線上に防災を位置づけることで、持続可能な危機管理のあり方を鋭く示唆している。
震災31年、備蓄を「非日常」から「日常」へ。1月17日より京都で開催
京都市の複合型商業施設「GOOD NATURE STATION」を運営する株式会社ビオスタイルは、阪神・淡路大震災から31年を迎える2026年1月17日より、企画展「サステナブルパッキング2026」を開催する。
本展は、単なる防災用品の陳列ではない。インテリアに馴染む洗練されたグッズの提案や、多用途な風呂敷パッキング術を通じ、「非日常の備えを日常に取り込む」ライフスタイルを提示するものだ。会期初日には、次世代へ「まもる力」を継承する親子向けワークショップも予定されている。
「風呂敷」が最強の防災具に。モノを増やさないサステナブルな引き算の提案
他社の防災展と一線を画すのは、その「引き算」の哲学である。多くの企業が「足し算」の備蓄を推奨するなか、同社は一枚の布——風呂敷が持つ多用途性に光を当てた。
京都の老舗メーカー「むす美」との連携により提案される撥水風呂敷は、災害時にはバッグ、防寒具、あるいは応急処置の道具へと姿を変える。「一つの道具に複数の役割を持たせることは、資源を無駄にしないサステナブルな精神に通じる」と、同社は説く。機能性と伝統美を両立させたこのアプローチは、モノが溢れる現代の備蓄に対する、極めて独創的なアンチテーゼといえる。
我慢しないSDGs。美食と防災を両立する「ビオスタイル」の循環型思考
この取り組みの背景には、京阪グループが推進する「BIOSTYLE PROJECT」の哲学がある。「規制や我慢から生まれる活動ではなく、人にも地球にもいいものを楽しく、無理なく取り入れる」という考え方だ。
山下剛史社長が掲げる「信じられるものだけを、美味しく、楽しく」という指針は、展示エリア「防災×食」にも色濃く反映されている。日常の食卓を彩るエシカルな加工食品をそのまま「ローリングストック(回転備蓄)」に組み込む提案は、消費者の心理的ハードルを下げ、結果として持続可能な防災体制を構築する。
社会課題をライフスタイル化する。企業の「心地よい選択肢」提示の重要性
今回の展示から学ぶべきは、「課題解決を特別なイベントにしない」という戦略的視点だ。
多くの企業において、SDGsや防災対策は日常業務と乖離した「義務」になりがちである。しかし、ビオスタイルはそれを「暮らしを豊かにするデザイン」や「伝統工芸」と結びつけることで、消費者の自発的な参加を促している。
企業が社会課題に向き合う際、消費者に「正論」を突きつけるのではなく、いかに「心地よい選択肢」として提示できるか。防災という重いテーマを、風呂敷一枚の軽やかさで包み直した同社の試みは、サステナブル経営におけるコミュニケーションの最適解を示している。



