
プラスチック資源循環促進法の施行を経て、外食産業のカトラリー対策は「削減」から「価値転換」の局面を迎えている。ソフトクリームの国内王者・日世が投じる「Eスプーン」は、既存の可食容器技術をカトラリーへと昇華させ、利便性と環境負荷低減を高い次元で両立させた。
プラスチックを「食す」という選択。日世が放つEスプーンの市場投入
ソフトクリームの総合メーカーとして知られる日世は、2026年3月5日、コーンカップ素材を用いた食べられるスプーン「Eスプーン」を発売する。これは、従来プラスチック製が主流であった使い捨てカトラリーを「菓子」として再定義する試みである。ソフトクリームやプリンなどのスイーツはもとより、コロッケなどの中食・惣菜まで対応可能な強度を備えているのが特徴だ。地球にやさしく、食べられ、エコであるという三つの理念を軸に、同社は廃棄物そのものを消滅させるという、食品メーカーならではの脱プラスチックの形を市場に提示した。
W形状がもたらす構造革命。代替素材の弱点を克服する独自技術
他社の代替素材製品と一線を画すのは、道具としての物理的信頼性と、菓子としての口当たりの良さを両立させた点にある。一般的に流通している紙製や木製のスプーンは、特有の風味やざらつきが食品の味を損なうという課題を抱えていた。日世は、長年培ったコーンカップ製造技術を応用し、小麦繊維を配合した独自の原料組成により折れにくい設計を実現した。さらに、持ち手の断面をW字型に成形することで、密度の高い食品をすくっても折れない構造上の強靭さを確保している。成形技術の限界に挑み、道具としての機能を完遂した後に美味しく完食できるという、極めて合理的な二面性を実現したのである。
パイオニアの矜持。美味しさと扱いやすさを両立させる現場主義の哲学
開発の背景には、食品である以上は美味しくなければならないという同社の確固たる信念がある。1951年に日本へソフトクリーム文化を紹介して以来、日世は常に食べる喜びを追求してきた。脱プラスチックを加速させるには、単なる環境配慮だけではなく、現場での扱いやすさが不可欠であるとの判断から、すくいやすいシンプルな形状が採用された。環境対応という名目のもとに消費者に我慢を強いるのではなく、スプーンまで食べられるという新たな付加価値を付与する。サステナビリティを義務ではなく、食の楽しみを拡張するエンターテインメントへと昇華させる姿勢に、老舗メーカーとしての矜持が伺える。
既存技術の再定義。日世の挑戦から学ぶサステナブル経営の要諦
日世の取り組みは、成熟した技術を持つ企業がどのようにSDGs時代のイノベーションを勝ち取るべきか、その示唆に富んでいる。コーンは器であるという既成概念を脱ぎ捨て、それをカトラリーという道具へと再定義した発想の転換こそが、新たな市場創造の鍵となった。法規制への対応を単なるコストや守りの投資と捉えるのではなく、自社の強みを活かして顧客体験を向上させる攻めの武器に変えること。環境負荷の低減をビジネスの成長エンジンへと変換する日世の姿勢は、持続可能な社会における企業生存のモデルケースとなるだろう。



