
日常の利便性と有事への備えをいかに両立させるか。備蓄の死角となっていた管理コストとスペースの課題に対し、宅配水大手のクリクラは、軽量ボトルの長期保存対応という合理的な一石を投じた。
「水の備蓄」の新常識。クリクラ5.8Lボトルが5年長期保存に対応
株式会社ナックが展開する宅配水ブランド「クリクラ」は、軽量ボトル「クリクラボトル 5.8リットル」の仕様を改良し、未開封時の保存期間を従来の日常利用から5年間の長期保存へと大幅に延長した。
これまで宅配水は、消費しながら買い足す「ローリングストック」の代表格であったが、今回の改良により、備蓄庫に置いたままにできる「長期保存水」としての役割も兼ね備えることとなった。11.6リットルを1箱に収めるコンパクトな設計は、都市部の限られた住空間やオフィスの備蓄スペースにおいても、導入のハードルを大きく下げている。
なぜ「宅配水の長期保存」が他社と違うのか。廃棄を出さない独自性
一般的な長期保存水との決定的な違いは、賞味期限が迫った際の出口戦略にある。市販のペットボトル備蓄は、期限が切れる際に入れ替え作業が発生し、大量の水を消費しきれず廃棄に繋がるケースも少なくない。
対して本製品は、期限が近づけばそのままウォーターサーバーにセットし、日常の飲料水として消費できる。さらに、重い水を店舗で購入し運搬する手間もなく、専門スタッフが玄関先まで届ける。つまり、備蓄の開始から消費、そして更新までのサイクルが、既存の生活インフラの中で完結している点が極めて独創的だ。
「管理の面倒」を解消する哲学。ナックが目指す社会の安全網
この取り組みの背景には、創業以来「暮らしのお役立ち」を掲げるナックの、生活者に寄り添う哲学がある。同社が実施した調査では、備蓄が進まない理由の首位が「保管スペースの不足」と「管理の煩わしさ」であった。
クリクラビジネスカンパニーの代表を務める川上裕也氏は、ブランドの根幹に「安心・安全」を据えてきた。今回の5年保存対応は単なる製品改良ではない。顧客が抱く「面倒」という心理的障壁を仕組みで取り除き、意識せずとも防災が日常生活に組み込まれる状態を作る。そこには、社会課題を事業の力で解決しようとする同社の強い意志が反映されている。
ナックに学ぶ、無理のない「サステナブルな防災ビジネス」の設計
ナックの事例が示唆するのは、サステナビリティや防災といった社会的責任を、いかにユーザーの利便性と合致させるかという視点だ。5.8リットルという軽さや省スペースといった身体的・物理的な使い勝手を追求することが、結果として社会全体の備蓄率の向上に寄与する。
また、既存の配送ネットワークと製品特性を活かし、保存期間という時間軸の価値を付加した点も注目に値する。企業が社会の安全網を担う際、必要なのは啓蒙だけでなく、日々の暮らしに自然と溶け込む仕組みのデザインであることを、同社の取り組みは証明している。



