
「洗濯には洗剤が必要」という既成概念をテクノロジーが打ち破る。独自のアルカリイオン電解水により、環境負荷と運用コストを劇的に削減するwash-plusの試みが、宿泊業界の標準を塗り替えつつある。
ホテル向けランドリー「wash+ Comfort」が累積節水量を可視化
株式会社wash-plusが展開する宿泊施設向けランドリー「wash+ Comfort」が、新たな一手を打った。自社のサービスサイトにおいて、システムが蓄積した「累積節水量」のリアルタイム公開を開始したのだ。
2025年12月に発表されたこの取り組みは、単なる数値の提示にとどまらない。節約された水量を「1日あたりの飲用水」や「米作りに必要な水量」へと換算し、インフォグラフィックを用いて直感的に提示している。特筆すべきは、これらのデータが全機器に標準搭載された独自のIoTシステムから吸い上げられた「生きた数字」である点だ。導入ホテルは、自施設のランドリー稼働がどれほど具体的に環境保全に寄与しているかを、宿泊客やステークホルダーへ明確に示すことが可能となった。
節水率70%を可能にする「洗剤を使わない洗濯」とIoTの融合
従来のホテルランドリー市場において、節水や環境配慮はあくまで機器の性能に依存する受動的なものだった。しかし、wash-plusのモデルは根本から異なる。
同社の最大の特徴は、特許技術「wash+ Technology」による、洗剤を一切使用しない洗濯プロセスにある。これにより、従来の縦型洗濯機と比較して最大約70%という驚異的な節水を実現した。洗剤を使わないため、すすぎ工程を大幅に短縮できるからだ。
さらに、競合他社にない強みが完全なデータ化である。国内で唯一、コインランドリーの稼働状況をIoTで一元管理する同社は、売上のオンライン管理やキャッシュレス決済、多言語対応といった「DXによる省人化」と、「節水・排水汚染ゼロ」という「サステナビリティ」を同一線上で解決している。人手不足に悩むホテル業界にとって、管理コストを下げながらSDGsへの貢献度を定量化できるこの仕組みは、極めて合理的な選択肢となっている。
水資源保全とアレルゲンフリーを追求する「wash+」の経営哲学
この革新的なサービスの背景には、代表の高梨健太郎氏が掲げる「地球環境と人の健康に対する誠実さ」という哲学がある。
「アレルゲンフリーな洗濯を、すべての人へ」という想いは、洗剤に含まれる合成化学物質や香料による健康被害への深い洞察から生まれた。同社が使用する「wash+ Water」は、無色・無臭のアルカリイオン電解水であり、汚れを落とした後は中和されて水に戻る性質を持つ。
「環境に良いから我慢するのではなく、便利で経済的だから選ばれる。その結果として地球が守られるのが理想の形です」と同社関係者が語るように、エコロジーとエコノミーの高度な両立こそが、同社の経営の中核を成している。IT賞やグリーン購入大賞など、数々の権威ある賞を受賞している事実は、その哲学が社会的な妥当性を得ている証左と言えるだろう。
宿泊業界のSDGs推進における「環境貢献の見える化」の重要性
wash-plusの事例から学ぶべきは、SDGsを単なる標語で終わらせないための実装力である。
多くの企業が環境活動をアピールする中で、同社はIoT技術を駆使し、節水という抽象的な貢献を1人あたりの飲用水という具体的な価値へ変換した。これは消費者の共感を呼ぶだけでなく、BtoBビジネスにおいて導入企業側の報告コストを下げるという実利的なソリューションになっている。
また、洗剤を使わないという、業界の前提を疑う「引き算の発想」が、結果として節水、排水改善、そして運営コストの削減という多面的な利益を生んでいる点も示唆に富む。真のイノベーションとは、足し算の機能追加ではなく、既存の負の要素を取り除くことから生まれる。そのことを、浦安から発信されるこの小さな洗濯機は静かに物語っている。



