
化粧品の廃棄に罪悪感を抱く消費者の心理を、資源循環の「当事者」へと変える。モーンガータとルミネの協業は、回収効率の壁をユーザー体験によって突破する、新たなサーキュラーエコノミーの最適解を提示した。
ルミネ13店舗へ拡大。2万個超の不要コスメを回収・再資源化する共同プロジェクト
株式会社モーンガータは、株式会社ルミネとの協業を深化させ、不要コスメの回収・分別スキームを本格稼働させる。2025年7月に実施した先行施策では、6店舗で約2万個(約445kg)のコスメを回収。この成果を受け、2026年1月からは「ルミネ・ニュウマン エシカーニバル」において、実施店舗を13店舗へと倍増させる。特筆すべきは、単なる「回収拠点」の拡大にとどまらず、容器と中身を効率的に分離し、資源としての純度を高める新たな運用スキームを構築した点にある。回収されたコスメは、同社の特許技術によって絵の具や建材、雑貨などの多用途な色材へとアップサイクルされ、再びルミネの館内装飾やノベルティとして還元される仕組みだ。
独自技術と「分別ワークショップ」の融合。物流コストを抑える逆転の発想
従来の資源回収における最大の障壁は、回収後の「分別コスト」であった。特にカラーコスメは、容器から中身を掻き出し、さらに色ごとに分類する作業に膨大な時間と人手を要する。モーンガータはこの課題に対し、消費者が自ら分別を行う「コスメの中身かき出しワークショップ」を仕組み化した。他社が回収の「自動化」や「簡略化」を模索する中で、同社はあえて「消費者の手間」をイベント化した点が極めて独自性が高い。参加者は自身の持参したコスメを自らの手で分解する。このプロセスが、運営側のコストを劇的に削減すると同時に、消費者にとっては大切な品を最後まで見届けるエンターテインメントへと昇華されている。
消費者の「ギルトフリー」を創出。使い切れない罪悪感を解消する循環の哲学
この取り組みの背景には、消費者が抱える「使い切れなかった申し訳なさ」という負の感情への深い洞察がある。同社の調査では、8割以上のユーザーが廃棄に罪悪感を抱いていることが判明している。単に捨てる場所を提供するのではなく、分別のプロセスを公開し、参加型にすることの意義について、体験者からは「大切なコスメを自ら掻き出すような行為はしたことがないため、楽しみながら体験できました」との声が上がった。自ら手を動かすという体験が、単なる廃棄を「自己内省」と「資源への還元」へと変え、消費者の心理的ハードルを下げる「ギルトフリー」な環境を創出している。
企業のサステナビリティ担当者が学ぶべき、技術と行動変容を促すデザイン
モーンガータの事例から学べるのは、サステナビリティにおける「効率」と「感情」の統合である。多くの企業が直面する、回収コストが見合わないという「静脈物流」の課題に対し、彼らは消費者の心理的ニーズをフックに、分別作業というコストを「価値ある体験」へと変換させた。また、回収した素材を単なるリサイクルに回すのではなく、自社の特許技術によって工業材料や衣類プリントなど広範な用途へ昇華させ、LCAの観点からトレーサビリティを確保している点も重要だ。技術的な裏付けと、消費者の行動変容を促すデザイン。この両輪が揃って初めて、資源循環は持続可能な「事業」として成立することを同社は証明している。



