
静岡ブルーレヴズが展開するアップサイクルプロジェクトは単なる環境貢献にとどまらない シーズンを終えたユニフォームに新たな価値を付与し希少性の高い商品として提供することでファンとの継続的な絆を深め地域に根差した循環型ビジネスの新たなモデルを提示している。
地域密着型SDGs戦略 静岡ブルーレヴズのアップサイクル事例
静岡ブルーレヴズはラグビーNTTジャパンラグビー リーグワンに所属するプロチームである。同チームは社会課題解決に貢献するための独自プロジェクト「SCRUM Action」の一環としてバリュエンスジャパン株式会社が運営する「HATTRICK」と共同でアップサイクルプロジェクトを立ち上げ2024-25シーズンの2ndユニフォームを素材とした「アップサイクルスクエアショルダーバッグ」を数量限定で販売する。 この取り組みは役割を終えたユニフォームを廃棄するのではなく新たな価値を持つ商品へと生まれ変わらせることで廃棄物削減に貢献し地域社会環境へとつながる「新たな循環」を生み出すことを目的としている。商品は背番号や側面デザインといったジャージの特徴を活かし耐久性に優れた実用的なデザインに仕上げられている。価格は12,000円税込と設定され第2節の試合会場で限定販売される予定だ。
高収益と持続可能性の両立 他社と差別化する高付加価値化戦略
このプロジェクトの独自性は希少性と持続可能性を両立させている点にある。一般的なスポーツチームのSDGs関連グッズは売上の一部を寄付するチャリティ形式や再生素材を汎用的なデザインで少量使用するケースが多い。しかし静岡ブルーレヴズのケースは「選手支給ジャージ」というもともと高い価値を持つアイテムを素材としそれを職人の手による丁寧な加工で「世界に一つだけのバッグ」へと昇華させている。 これによりファンにとっては「選手が実際に着用していたもの」という物語性が付加され単なるグッズではなく「コレクションアイテム」としての価値が高まる。高付加価値12,000円で販売することで環境負荷の低減と同時に新たな収益源の確保にも繋がっている。これは単に環境に配慮するコストとしてではなくブランド価値向上と収益化を図る投資としてサステナビリティを取り込んでいる点で他社の取り組みと一線を画す。
モノの命を繋ぐ哲学 チームが目指すエンゲージメント強化と環境貢献
プロジェクトの背景にはチームが掲げる「SCRUM Action」の哲学すなわち「ラグビーの精神を基盤とした社会貢献」があると考えられる。ラグビーのスクラムが多様なポジションの選手が一体となって力を合わせるようにこのプロジェクトもチームファンアップサイクル事業者が一体となり環境問題という社会課題に挑む姿勢を示している。 また「シーズン終了とともに役割を終えるユニフォームに新たな価値を加える」という行為はモノを大切にし命を循環させるという日本的な美意識に通じるものがある。これは単なる流行としてのSDGsではなく事業活動に深く根差した価値観として持続可能な取り組みを追求している証左と言える。この哲学がファンにとっては単なる消費ではなく「推しチームと共に社会を良くする」という主体的な行動へと変える力となっている。
経営層向け ユニフォームを資産に変える 循環型ビジネスモデルの成功法則
静岡ブルーレヴズのアップサイクルプロジェクトは全ての企業にとって示唆に富んでいる。特に学べる点は二つある。一つ目は廃棄物の資産化である。シーズンを終えたユニフォームという「廃棄予備軍」をファンにとっては手に入れたい「希少価値の高い資産」へと転換させた点だ。これは自社の事業活動で生じる副産物やデッドストックをクリエイティビティと物語性を付加することで高付加価値な主力商品へと変える「リバースイノベーション」の好例である。そして二つ目は感情的価値による持続可能性の実現である。環境配慮という論理的価値だけでなく「選手との繋がり」「チームへの愛着」という感情的価値を最大限に利用している。ビジネスパーソンにとって持続可能な取り組みを持続させる鍵は顧客の感情に訴えかけ「買いたい応援したい」という強い動機づけを生み出すことにある。サステナビリティを単なる義務ではなく顧客エンゲージメントを高める最強のマーケティングツールとして活用する視点を提供している。



