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復刻日本酒をクラフトジンへアップサイクル!利尻富士町に学ぶサステナブル地域創生モデル

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復刻日本酒をクラフトジンへアップサイクル!利尻富士町に学ぶサステナブル地域創生モデル
提供:株式会社Souplesse

利尻富士町の廃れた酒蔵の記憶を、アップサイクルで新たな収益源に。株式会社スプレスが仕掛ける、過去の資産と現在の自然資源を結びつける持続可能な地域創生モデルを解説する。

 

利尻富士町の記憶をジンに昇華させるアップサイクル戦略

地域活性化に取り組む株式会社スプレスは、北海道・利尻富士町の「日本酒復刻プロジェクト」で復刻させた日本酒「利尻富士栄泉」をアップサイクルしたクラフトジン『Mt.Rishiri1721Gin』を12月20日に発売する。

本プロジェクトは、昭和48年の酒蔵廃業により島内で薄れつつあった日本酒造りの歴史を次世代につなぐため、スプレス社と利尻富士町が協力して「日本酒復刻プロジェクト」としてかつての銘柄「栄泉」を復刻したのが起点だ。

今回発売されるクラフトジンは、この復刻日本酒をベースとし、利尻山の標高に由来する「1721」を冠する。商品には、利尻富士の雪解け水である名水百選「甘露泉水」に加え、利尻昆布やハマナス、ミヤマビャクシンといった「利尻の海と森」をイメージしたボタニカルが使用された。

札幌・紅桜蒸溜所にて、ボタニカルブレンダーの中村雅人氏が香味設計を担当。「利尻の海風と森の香りを閉じ込めたジン」をコンセプトに、北緯45度を意識した透明感ある飲み口で、利尻の自然が凝縮されたような風味を目指したという。同製品は、ふるさと納税返礼品や町内の一部店舗、飲食店で取り扱われる。

地域資源の時間軸を超えた活用 スプレスのサステナブルな「つなぐ」視点

スプレス社のこの取り組みが持つ独自性は、単なる地域資源の活用に留まらない、時間軸を超えたアップサイクルにある。一般的なクラフトジンが「現在の地域固有のボタニカル」に焦点を当てるのに対し、本製品は、「過去の酒蔵文化の記憶」という無形の地域資産と、「現在の自然資源(日本酒、名水、ボタニカル)」を有機的に結合させた点に特徴がある。

復刻日本酒「利尻富士栄泉」を、時間を経た旨みを持つ原料としてジンに再構築するというプロセスは、廃れてしまいかねない歴史を「廃棄物」ではなく「付加価値の源泉」として捉え直す視点だ。これは、伝統や記憶を現代の消費トレンド(クラフトジン)に乗せて「地域の新しい稼ぐ力」へと変換する、極めて戦略的な地域活性化のモデルと言える。

さらに、原料に復刻日本酒を用いることは、単一のプロダクトが終了した後もその価値を継続的に活用する、高度な資源循環の実現であり、地域の記憶を循環させるサステナビリティの形を示している。

ローカルナレッジを市場価値 「美味しいこと」を追求する実利的な哲学

 

スプレス社の取り組みの背景には、「地域にある価値を掘り起こし、また掛け合わせることで、北海道の新しい価値を生み出す」という明確な哲学がある。これは、資源や歴史が「あるがまま」の状態で価値を持つと考えるのではなく、「編集」と「接続」の力によって新たな価値を創出するという考え方である。

同社は、ふるさと納税中間事業を主軸とし、地域と都市部の市場を結びつけてきた。このジンプロジェクトにおいては、利尻富士町という「地域」が持つ酒蔵の記憶や名水を「地域外」のプロフェッショナルであるボタニカルブレンダーや蒸留所と「接続」させている。

香味設計を担当した中村雅人氏は、「ジンをボタニカルで作ろうとすると、どうしても『地元のものだけで作らなければ』というこだわりに走りがちですが、いちばん大切なのは”おいしいこと”です。おいしくなければ、もう一度飲みたいとは思っていただけません」と述べた。この発言は、地域資源を活用する際も、品質と市場性を疎かにしない「市場価値の創造」に対する強い意識を表している。地域の記憶や自然を、単なるエピソードで終わらせず、飲用体験という具体的な価値として昇華させる実利的な姿勢が、同社の哲学を支えている。

地域活性化の新たな方程式 記憶を稼ぐ力に変える「クリエイティブ・コネクション」

スプレス社のクラフトジンへの挑戦は、特に地域経済に携わるビジネスパーソンにとって、サステナビリティと地域活性化の新しい方向性を示す。

学べる教訓は、「無形の資産と有形の資源を掛け合わせ、市場性のあるプロダクトとして再定義する」という手法である。地域に埋もれた過去の記憶や文化(酒造りの歴史、島の伝説など)は、形のないがゆえに活用が難しい。しかし、同社のようにそれを「復刻日本酒」という有形資産に変え、さらに「アップサイクル」というサステナブルな文脈で現代のトレンド商品に組み込むことで、資産は永続的な価値を持つ。

地域活性化は、単なる特産品の販売促進ではなく、地域の歴史、文化、自然といった「ローカルナレッジ」を、現代市場が求める「アップサイクル」「クラフト」「サステナビリティ」といった普遍的な価値観と結合させる「クリエイティブ・コネクション」の作業である。スプレス社の事例は、地域の記憶を未来につなぐための、最も洗練された経済的なアプローチと言えよう。

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ライター:

サステナブル情報を紹介するWEBメディアcokiの編集部です。主にニュースや解説記事などを担当するチームです。

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