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規格外農産物が【高収益クラフトジン】に昇華 「幻の茶豆」で実現する【生産者所得向上】と【サステナブル農業戦略】

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新潟県弥彦村で「幻の枝豆」と呼ばれる茶豆。その規格外品(約40%)を廃棄物から高付加価値商品へと転換させたアップサイクル事業が注目を集めている。生産者の所得向上に直結するこの取り組みは、日本の農業が抱える構造的な課題に対し、地域発のサステナブルなビジネスモデルを提示する。

 

廃棄率40%の「幻の茶豆」をクラフトジンへ昇華

YAHIKO Avenir合同会社とヤヒコロジー株式会社は、スターマーク株式会社の「県ジンプロジェクト」への参加を通じ、新潟県弥彦村産の規格外「茶豆」をボタニカルに使用したクラフトジン『新潟県ジン』を開発し、2025年12月9日より一般販売を開始した。

この茶豆は、新潟県内でも作付面積が特に広く、深い旨味と香りが評価されるブランド品種である。しかし、収穫される茶豆の約40%が、サイズや形状の不揃いを理由に市場に出せない規格外品となるのが現状であった。味や品質には一切問題がないにもかかわらず廃棄されるこの「もったいない」資源を有効活用するため、「YAHIKO UPCYCLING」事業が立ち上げられた。

本商品の開発・製造費用の一部はクラウドファンディングで目標額の約130%を達成し、販売に至った。製造は、アジア最大級の酒類品評会で特別賞を受賞した実績を持つ株式会社越後薬草が担い、その高度な蒸留・ブレンド技術により、茶豆特有のふくよかな香ばしさや甘みが、クラフトジンの複雑な風味として表現されている。

【高収益化】規格外品を「デザイン」で価値転換:他社との決定的な違い

YAHIKO Avenir合同会社の取り組みが、一般的なリサイクル活動や地域貢献と一線を画す点は、廃棄される資源を「デザイン」の力で高単価な高付加価値商品へと転換させ、収益構造に組み込んだ点にある。

従来の農産物の規格外品処理は、低価値な飼料や肥料へのダウンサイクルに留まるか、または廃棄コストとして計上されることが多かった。しかし、「新潟県ジン」プロジェクトは、本来廃棄されるはずであった茶豆をクラフトジンという高価格帯の嗜好品のボタニカルとして活用することで、規格外品の価値を最大化させた。

この事業モデルは、廃棄削減という環境価値と、新たな収益源創出という経済価値を両立させている。特に、創出された収益が、弥彦村が長年抱えてきた「生産者所得の向上」という地域課題に直接的に寄与する点こそが、単なる環境PRではなく、持続可能な農業経済を目指す戦略的な事業であることを示している。

背景にある【サステナブル農業】の哲学:「もったいない」を資源化せよ

 

「YAHIKO UPCYCLING」の根底には、豊かな自然環境下で発生する「もったいない」を、地域経済を牽引する資源へと転換させるという明確な哲学がある。

同事業は、味は変わらないのに見た目だけで市場に出せない規格外品の存在を、食料廃棄問題や、生産者の意欲低下につながる構造的な課題であると認識した。そして、これをコストではなく、規格外品を単に利用するのではなく、保存性や活用の幅を広げる高付加価値製品に生まれ変わらせる「アップサイクル」の手法を採用した。

同社は、今回の枝豆での成功を、今後、他の農産物にも広げていく計画を示しており、これは弥彦村全体の農業資源を活用したサステナブルな経済循環を構築しようという長期的なビジョンに基づいている。最高の農産物を育む地域性を守りながら、その持続可能性を高めようとする、地域愛と経営哲学が融合した取り組みと言える。

この事例から学ぶ【越境イノベーション】と【地域創生】の接点

YAHIKO Avenir合同会社の事例は、現代ビジネスにおいて、サステナビリティがコストではなく成長戦略そのものとなり得ることを強く示唆している。

この取り組みは、農業という一次産業の課題を、酒造りという二次産業への「越境イノベーション」を通じて解決した好例である。規格外品というネガティブな要素を、高度な加工技術とマーケティング(県ジンプロジェクト)により「高付加価値素材」として再定義した。

これにより、「環境負荷の低減」という社会価値、「生産者所得の向上」という地域価値、そして「希少なクラフトジンの提供」という消費者価値の全てが満たされる「三方良し」が実現した。これは、企業が自社の抱える課題や地域の未利用資源の中にこそ、次の時代の収益源が潜んでいることを示唆しており、特に地方創生やサステナブル経営を志向する企業にとって、学ぶべき点が多い。

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ライター:

サステナブル情報を紹介するWEBメディアcokiの編集部です。主にニュースや解説記事などを担当するチームです。

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