
秋田キャッスルホテルは、耕作放棄地を再生して誕生した北秋田市初の「あきた野ワイナリー」のワイン提供を開始した。地域の物語を宿す一杯を、ホテル最上階のバーから国内外の旅行者へ届け、秋田の新たな魅力発信につなげる狙いだ。
秋田初ワイナリーの挑戦 耕作放棄地再生から生まれたシャルドネ
PR TIMESによると、あきた野ワイナリーは2018年、耕作放棄地となっていた元リンゴ園を活用し、ブドウ栽培に転換した。全国的に増加する耕作放棄地は、地域経済と景観維持の双方に課題を生む存在だ。そこに新たな価値を見いだすことは、持続可能な農業のモデルとして大きな意義を持つ。
同ワイナリーは、秋田の寒冷な気候では難しいとされてきたヨーロッパ系品種に挑戦し、赤・白計9品種を栽培。森吉山の斜面で育まれたシャルドネは、凛とした酸に奥行きが加わり、北秋田ならではのテロワールを体現するワインとして注目度を高めている。
秋田キャッスルホテルが「Hello Akita Project」で地域連携強化
ホテルは2025年9月に「Hello Akita Project」を立ち上げ、地域資源を活かした商品・体験の発信に力を入れてきた。クラフトジンや白神樹液のカクテルなどに続く新たな取り組みとして、北秋田ワイン提供が加わる形だ。
ホテル最上階のバー・ロータスは、国内外の観光客が集う交流拠点。バーテンダーを通じて提供される物語性のある一杯は、観光消費を単なる飲食にとどめず、地域への理解を深めるきっかけとなる。観光再生の観点でも、ホテルが果たす役割は大きい。
観光客が求める「ここだけの特別体験」をワインに託す
旅行者の消費行動は変化している。単なる“名物”ではなく、“背景にあるストーリー”が価値として評価される時代だ。希少性の高い限定提供という設定は、旅先での選好行動とも一致する。
グラスを傾けながら、なぜ秋田でブドウ栽培に挑んだのか、どのように土地を再生したのか──。その物語が語られることで、記憶に残る体験となり、口コミ・SNS発信などの波及効果も期待できる。農業と観光が連動することで、地域に新たな経済循環が生まれる構図だ。
共創による地域創生モデル ホテルが経済循環の起点に
秋田キャッスルホテルは、障害福祉事業所のコーヒー取り扱いや、県産ターキーを活用したクリスマスディナー提供など、多様な主体と連携してきた。今回の北秋田ワインはその延長線上にあり、地域と共に歩む姿勢をさらに明確に示す取り組みとなる。
農業、観光、ホスピタリティ産業が連携すれば、資源が循環し続ける仕組みが整う。ワインを通じて、土地の再生と地域の未来像を重ねる構図が形づくられつつある。



