
東京都に本社を置く企業のうち、「SDGs(持続可能な開発目標)に積極的」と答えた割合が51.8%となり、前年から3.6ポイント減少したことが、帝国データバンクが8月13日に発表した2025年調査で分かった。
2019年の国連採択以降、企業への浸透は年々進んでいたが、初めて減少に転じた。背景には、取り組み方法の不明確さや時間的・資金的余裕の不足など、中小企業を中心とする課題が浮かび上がっている。
実践企業は過去最高も、「意欲あり」が減少
調査では「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業は29.5%と過去最高を更新した。一方、「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」企業は22.3%と4.4ポイント減り、全体の積極層は縮小した。
「理念は共感できるが、売り上げや消費者行動への効果を実感できない」「生活に余裕がなく、将来不安もあるため優先できない」などの声が飲食・製造・卸売など複数業種から寄せられた。
規模別では大企業71.1%、小規模は34.9%
企業規模別にみると、大企業の71.1%がSDGsに積極的と回答し、中小企業は46.2%、小規模企業に限ると34.9%にとどまった。業界別では製造業が65.7%で最も高く、小売(55.7%)、運輸・通信(52.4%)が続く。
注力分野は「働きがいも経済成長も」が首位
現在力を入れているSDGs目標は「働きがいも経済成長も」(目標8)が34.1%で最多。次いで「気候変動に具体的な対策を」(24.5%)、「つくる責任つかう責任」(22.4%)、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(21.7%)となった。
今後取り組みたい項目も同様に「働きがいも経済成長も」が11.1%で首位。「パートナーシップで目標を達成しよう」(6.9%)、「気候変動に具体的な対策を」(6.1%)が続いた。
7割が効果実感 非財務価値の向上が顕著
SDGsに取り組む企業の71.6%が効果を実感。具体的には「企業イメージの向上」(38.3%)、「従業員のモチベーション向上」(34.1%)、「採用活動へのプラス効果」(18.6%)など、非財務面での価値向上が目立った。一方で、「売り上げの増加」(14.0%)や「取引拡大」(13.3%)など財務面での効果も確認され、社会貢献と企業成長の両立可能性が示された。
課題と展望
調査担当者は、物価高や地政学的リスク、米国など一部先進国の消極姿勢がSDGs熱の冷え込み要因になり得ると指摘する。一方で、環境・人権・多様性への意識は高まり続けており、特に中小企業に対しては国や自治体による具体的な事例共有や補助金制度の拡充など後押しが必要とされる。
- 調査期間:2025年6月17日~6月30日(インターネット調査)
- 調査対象:東京都に本社を置く4,246社、有効回答企業数は1,933社(回答率45.5%)
レポート本文はこちら