日本財団と日本ライフセービング協会、水辺教育プログラムを展開 6月18日から江戸川区で全13回

6月18日より、東京都江戸川区にある「カヌー・スラロームセンター」にて、水難事故防止を目的とした実践型教育プログラム「カヌスラで海そなえ」がスタートする。主催は公益財団法人日本ライフセービング協会で、共催に日本財団や日本水難救済会などが名を連ねる。
東京2020五輪の競技会場跡地を活用し、流水施設を用いて“おぼれ”のリアルな体験ができる教育プログラムとして注目されている。
この取り組みは、日本財団が推進する「海と日本プロジェクト」の一環で、自然水域を模した環境下において、海や川での水難に対する判断力と行動力を体得することを狙いとする。小学3年生以上の一般参加者から50歳以上のシニア層、さらには学校教員や指導者まで幅広い層を対象としており、9月11日まで計13回の開催が予定されている。
“体験”こそが命を守る第一歩
本プログラムの特徴は、座学や静水プールでは得難い実践的な学びを、流れる水の中で体験できる点にある。ライフジャケットの着用法、離岸流の対処、サバイバルスイムなど、海でのプログラムに加え、シニア向けには川の流れに応じた“ラッコのポーズ”での浮き方、スローロープを使った救助なども指導される。
さらに、一般対象の回ではラフティング体験も含まれており、楽しみながらも命を守る行動を自然に学べる構成となっている。参加費は一般1,000円(システム手数料180円別途)、教員・指導者は無料で、事前申し込み制。
背景に教育現場の課題 「教員が教えるのは難しい」
2024年に海のそなえプロジェクトが実施した調査では、「水難事故防止は専門家が教えるべき」とする声が多数を占めたほか、教員自身が指導に困難を感じている現状が浮き彫りとなった。加えて、流水施設や教材・教具の不足、ライフジャケットの普及率の低さなど、教育環境の整備も課題として指摘されている。
こうした状況を受けて設計された本プログラムは、教育現場・保護者・専門家が連携し、より実効性の高い命の教育を提供するモデルケースとなることを目指している。参加者のフィードバックをもとに、教材開発や指導カリキュラムの改良も進める方針で、今後は全国展開や学校教育との連携も視野に入れる。
「水を怖がらず、楽しむ力」を育む社会へ
日本財団は、海を介して人と人とがつながる“社会共創”の視点から、この取り組みを「豊かで美しい海を次世代へつなぐ」ためのアクションと位置づける。実施主体となる「海のそなえ」プロジェクトは、日本ライフセービング協会、うみらい環境財団、日本水難救済会の3者によるコンソーシアムで構成されており、科学的根拠に基づいた情報発信と教育活動を通じて、水辺でのリスクマネジメント意識の社会的定着を目指している。
なお、7月23日(水)には報道関係者向けにプログラムの体験機会「メディアデー」が予定されており、世界溺水防止デー(7月25日)に先立って、同プログラムの社会的意義と必要性が一層注目を集めることになりそうだ。